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橙と青、そして黒

 月のない夜。
 女はその夜空をもう十分以上見つめ続けている。
 口に咥えている煙草は細長く、その形がこの当たりで売られていないものと言う事を教えてくれていた。
 煙草の煙が激しくうねる。女はその風に気づいていないのか、表情の無い顔で夜空をじっと見つめ続けていた。


「我ながら、らしくない――私も随分と頭が悪くなったものだ」


 女は少し低い声でそう言うと、口にしていた煙草を足元に捨て、それを踏み消した。
 そして、胸ポケットに挟んでいた眼鏡をかけた。


「さてと、誰もいない我が家へ帰るとしましょう」


 すると突然人が変わったかのように口調も仕草も変化させた。
 女はそういうと、ゆっくりと歩き出した。手には少し重そうなバッグを持っていて、城を基調とした服は彼女にとても似合っていた。
 二十代半ばといったその容姿はとても美しく、耳につけている橙色のピアスがそれを際立たせていた。

 彼女の名前は蒼崎橙子。
 近代を生き、長い歴史の中で、二人とない、とまで言われた最高位の魔術師だった。










 彼女が我が家へ着いた頃には既に東の空はうっすらと明かりが見えていた。
 そして、その我が家と呼ばれたモノは、およそ人の住むべき場所ではなかった。
 それは建設途中のビルで、所々では骨組みがむき出しになっていた。

 彼女の帰った時間には人の気配どころか、何か別の生き物の気配すら感じられなかった。ただ、早朝という理由だけではない。ここはそういう場所なのだ。
 何か強い目的が無ければこの場所に来ることさえ叶わない。無論、半壊したビルに何らかの目的があって訪れてくるような酔狂な輩もいるはずもなかった。
 それは自然にそうなった訳ではなく、それが人為的な何かの影響を受けている事は明白であり、それが彼女の仕業だと言う事は言わずともわかる事であろう。

 これで理解できたと思うが、この話は蒼崎橙子が主役だ。
 半永久的に生きる存在となれた彼女にはもはや人と言う形容は相応しくないのだろうが、そんな彼女にも人と言う心は存在する。
 これはそういうお話だ。










橙と青、そして黒











「―――ん」


 目を開けると、その世界は何時もどおりの形をしていた。ただ一つ違う点を挙げるならば、何時もよりもそれが紅く染まっている事であろう。


 ――なるほど


 どうやら私は少し寝坊をしてしまったらしい。
 その事実に少し腹立たしいモノを感じたが、起きたばかりで苛立つ気力もない私はその些末な思考を停止することにした。

 寝る前に枕元に置いてあった――正確には無精しただけなのだが――煙草と愛用のジッポを手探りで探した。無事それを掴み取ると、起きて最初の煙草を吸うことにした。
 体の中に紫煙を送らない事には、今日一日何も始まらない。
 私には、まるでそれが血液のようなものだ、と思わずにはいられなかった。

 私にとってとても心地良い音色――それはまるで原初の産声のような――を奏でると、細長い煙草に日をつけた。
 ゆっくりとそれを吸い、じっくりと体中に充満していくのを確かめてから、ゆっくりとそれを吐き出した。
 そうして私の脳はゆっくりと回り始める。
 この瞬間が今まで生きた中で、最高の刻なのだ。











 脳が使い物になるようになるまで、たっぷり煙草一本分の時間を消費した。
 私はそうなった所でようやく体を起こした。
 身体はもう少し眠らせろ、といっているが、私としてはこれ以上時間を無駄に浪費するつもりはなかった。
 魔術師といっても時間は有限である。無論それが私であろうとも例外ではなく、この世界に生きている以上、それは変えようのない真理――いや、枷なのだ。

 さて、今日の予定は――そうか、最近続いた殺人事件の依頼があったか。
 あまり美味しい話とは言えなかったが、状況が状況なだけに、断ることはできなかったのだ。


 ――私とあろう者が、情けない。


 だからと言って、今のやり方を変えるつもりは無かった。
 金は貯めるべきモノではなく、使うべきモノ。貯めすぎればそれだけ自我を崩壊させてしまう。だから、ある時には一気に使うべきなのだ。

 短くなった煙草を灰皿でもみ消す。そして、机の上に置いてあった眼鏡をかける。


 ――あまり気の乗らない依頼だけれど、頑張りましょう。


 わたしはそう思うと、出かける為に身支度を整えることする。
 今から出かけると帰りは朝方になりそうだけれど、それは仕方ないことね。









 予想通り、帰りは朝方だった。


 ――これも予想通りだったけれど。ホントにつまらない依頼よね。


 朝焼けが目にしみる。眠気のせいか、うまく頭が回っていないようだった。


 ――あぁ、愛しの我が家へご到着。


 背を伸ばしながら自分の工房に足を踏み入れた所だった。
 体内に何か異物が入り込んだ感覚があった。


 ――侵入者!? いや、既に逃げられた後か?


 わたしは眼鏡を取った。
 現在の状況を整理する。だが、うまく頭が回らない為、思考が乗ってこない。


 ――あぁ、これを忘れるなんて私らしくない。


 煙草を取り出し、火をつけた。
 紫煙が私の脳を活性化させる。気だるさも消え、それに合わせるように眠気もどこかに吹き飛んだ。
 そして状況整理をする。その速度は一息で七千回転を突破し、一気に限界値をはじき出した。

 どうやら侵入者は数時間前に逃げたようだ。
 何の目的でここに来たのか。
 入り口付近にあった罠は全て破壊されている。解除ではなく破壊と言う点から、自ずとその侵入者の名前が頭に浮かんだ。
 そんな事をする人物には一人しか心当たりが無かったからだ。
 だが、それが合っているとすると、目的は金だろうか。
 ここにはそんな物は全くないと言うのに。

 中に入ると、先ほどの通り部屋の中は特に荒らされていなかった。
 ではあいつは何の為にここに来たのだろうか。
 そんな事を考えていると、視界の端――机の上にメモ書きのようなものがあることに気がついた。
 私はそれをひったくるようにして手に取り、それを凝視した。
 そこには私の予想通りの名前が記されており、その内容は何とも頭の痛くなるようなモノだった。そしてそれを見ている内に、段々と腹立たしいモノすら感じていた。


「やっほー。ちょいと姉貴の魔眼殺し借りてくわよ。 青子より」


 私はそれを破り捨てた。











 そう。侵入者は私の最悪で最低の愚妹だった。
 あんな奴と血が繋がっていると考えただけで吐き気がする程だ。
 何故そこまで嫌う、と言う質問自体うんざりなのだが、まぁ知らない者の為に一つ小話をしておこう。

 私こと蒼崎橙子は妹である蒼崎青子を嫌っている。
 それを前提とした話だ。










 私たちは魔術師として歴史ある家系、蒼崎家に生まれた。
 今思えば不幸な話なのだが、魔術師として優秀な家系だったのだ。だからこそ、私達の先祖は掘り当ててしまった。
 そして、それは俗に言う一子相伝だった。
 ここで話が見えてきたと思うが、私は選ばれなかったのだ。
 魔術師として優秀な私でなく、あのじじいは魔術師として才能のなかった青子を選んだ。
 それは私には耐え難い屈辱だったのだ。










 あれから数年後、未だに青子は借りた物を返しに来ない。
 まぁ、わざわざ殺されに来るような奴はいないだろうがな。

 私は窓の外に視線を送った。
 そこから見える空は青く、麗らかな日差しがこの世界を照らし続けていた。
 私は愛用の煙草を取り出し、それに火をつけた。


 ――これだけが私の生きているただ一つの理由だな。


 そんな時だった。
 数年前と同じように、異物が体内に入ってくる感覚が走った。

 最初は青子が来たのだと思った。だがそれはすぐさま、否と判断する。
 侵入者からは魔力は感じられず、更には何か私に害を為す生き物の気配も感じられなかった。侵入者はただの人間だったのだ。

 そこで一つ疑問が沸く。


 ――何故、人間がこの場所に来ることができる?


 私の結界は未だ健在だ。解除された形跡もないし、破壊された形跡もない。となると自然にこの場所にやってこれたのか?
 それこそ否。
 この場所に来るには何か明確な目的が必要、ここに来れたという事はそういう事である。では、何の為にここに来たのか。それはこのビル自体に用がある訳でなく、つまりは私に――

 そこまで考えたところだった。
 侵入者の気配が、私の部屋のすぐ外から感じられる。
 鈍い音がし、扉が開かれた。


「あのー、ここは蒼崎橙子先生の工房でしょうか?」


 その侵入者は、全身真っ黒な服を着ていて黒ぶちのメガネをかけた少年、いや青年だった。身の丈はおそらく170弱といったところだろうか。
 私にはその青年のかもし出す雰囲気が何か特別な者に感じられた。


「青年、確かに私は蒼崎橙子だが。一体何のようだ?」

「えっとですね。以前先生の作品を見て、こんな人の所で働きたいな、と思ったんですよ。それで、ここで働かせてもらえたらな、と思って来ちゃいました」


 あっけらかんと笑いながら言う青年の姿に、私は少し戸惑いを感じた。
 最初は彼を追い返そうと思った。しかし、彼と話している内に私は忘れていた人の心と言うモノを思い出す事ができた。
 それは私にとって魔術師にとって堕落と言える事なのであろうが、私は別に悪い気はしなかった。それは頭の悪くなった証拠なのだろうな。


「わかったわかった。採用してやる」

「本当ですか!?」

「あぁ。特に仕事もないところだが、それでも良ければ採用してやる」

「はい、ありがとうございます!」


 深々と頭を下げながらそう言う青年が、私に懐かしさを思わせると同時に、私もまた戻れるのではないか、と言う錯覚さえ与えてくれるようだった。
 だが、すぐに私は思いなおした。
 新人ならともかく、私くらいこの世界に踏み込んだ者がどうして戻ることができるのだ、と。


「そうだ青年。まだ名前を聞いてなかったな」

「あ、そうでしたね。僕の名前は黒桐幹也。色の黒と桐の花の桐と書いて、黒桐です」


 そこが私の人生の何度目かわからぬ分岐点だとわかったのは、もう少し後の話だった。











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  1. 2005/07/17(日) 21:51:36|
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霧城昂

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