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もう大丈夫だから

「何も見えないな」


 私は甲板で前を見ていた。しかし、何も見えなかった。
 夜の海は暗く、私にこの上無い寂しさを与えてくれていた。
 数時間前の出来事を思い出す。
 トルナ運河を進んでいた私たちは渦に飲み込まれ、運河を荒らしていた巨大なモンスターに襲われた。何とか撃退した私たちは渦から抜け出すことができた。だがそれは私の親友――シルドラのおかげだった。あいつは私たちを助けるために身をていして守ってくれたのだ。そしてあいつは渦の中に姿を消した。
 思い出すだけで目頭が熱くなるのを感じる。


 ――シルドラ……私を一人にしないでよ。


 幼い頃から一緒に育った親友が命を捨ててまで私たちを守ってくれた。私たちはずっと一緒だ、と言ってやりたかった。お前は俺が守ってやる、と言ってやりたかった。だがそれも叶わない……もう、叶わないのだ。

 木でできた手すりに拳を打ち付ける。自らの拳を痛めようが関係なかった。
 月が雲の間から顔を出した。海は月の光に照らされ、薄暗く綺麗な水面が私の目に届いた。


 ――このまま飛び降りて……


 シルドラの後を追うのもいいかもしれない。美しいその誘惑に引かれ、私は身を乗り出した。すると、胸元から私の一番古い持ち物が顔を出した。それは月明かりに照らされ、きらりと光った。それと同時に妹の心配そうな顔が頭に浮かんだ。
 再び視線を水面に移すと、そこは恐ろしい口を広げているだけだった。私は彼女に感謝をしなければいけないのかもしれない。そう思えたのは先ほどの私から考えると奇跡に等しい感情の変化だった。

 甲板に誰か上がってくる音が聞こえる。その音は私が何時も聞く部下だちの足音にそっくりだった。


 ――レナじゃない……バッツ、いやガラフか?


 その気配は甲板まで上がり、私の方へと近づいてきた。私は後ろを見ようとはせず、視線は胸元へと向けられていた。
 やがてその気配は私の背後で止まった。しかしその気配は何も話そうとはしなかった。少し気持ちの悪い感じを受ける。
 私は気づかれないようにため息をつくと、背後の男に話しかけた。


「俺に何か用でもあるのか?」

「いや……眠れなくて」


 背後の男はそう答えた。
 不器用なその声色に私は少し興味を覚えた。この男はどう答えるのだろうか。それが少し楽しみで、私は後ろを振り返り、少し意地悪な質問を投げかけることにした。


「バッツ。俺を慰めてくれるのか?」

「ん……まぁ、前向きに考えようぜ。絶対生きてるって」


 素直に真っ直ぐな意見で答えてくれた。その素直な意見に少し揺れたが、それを気取られないように私はそれを口にすることにした。


「傷心で胸が潰れそうになった俺を慰めてくれるお前。空を見上げると月明かりと満天の星空がそこに――まさに満点だ。次は抱きしめてキス。そしてベッドインか?」

「お、お前冗談でもそんな事言うなって。想像してしまったじゃないか!」

「――ははは……悪いな」


 本当に慌てた様子のバッツ。それを本当におかしそうな姿で笑う私。私から見れば、それはとても皮肉な光景で、そんな事をしてる自分に苛立ちを覚える。
 しかし彼ら……特にレナには知られたくなかった。できる限り彼らには隠し通そうと思う。私は海賊の頭。そんなものは似合わないからだ。

 目の前の男を見ると、彼は本当に心配そうな目で私を見ていた。それは私にとって未知の経験だ。今まで仲間は沢山いたが、こんな男は一度も会った事がなかった。それは単に私が今までめぐり合わなかっただけなのか、それとも――


 ――だが、いいヤツだ。


 私は彼に興味を覚えた。それはまだ小さな輝きだが、彼なら大きくしてくれるという雰囲気がある。それは私にとって不幸な結果になるだろう。だが私はそんな自分の考えを押し殺した。


「そうだ。お前、レナに惚れてるだろ?」

「え、え?」

「図星か? それじゃあ仕方ないね」


 先ほどよりずっと慌てた様子のバッツ。私の一生は自分を偽ることでできているようだ。それはこれからも変わらないだろう。それも私の望んだ事だけど。


「いや、俺はな……その」

「誤魔化すな。レナと会話してる時のお前の顔を見ればすぐわかる」


 バッツはがっくりとうつむいた。これではどちらが元々落ち込んでいたのかわからないだろう。無論、私がそう仕向けたのだが。


「惚れてるかどうかはともかく、気になってるのは確かだ――これでいいか?」


 顔をあげると、彼はそう言った。先ほどまでの顔と違って真面目な顔をしていた。嘘はついていないと思う。そうまで言われると私としても応援しなくてはならない。この男になら任せられるかもしれない。


「だが、レナはタイクーンの王女様だ。俺たちとは住む世界が違うお姫様だ。お前は自分が釣り合いが取れてると思ってるのか?」

「だから惚れてる訳じゃないと言ってるのに……」


 少々しつこく言い過ぎただろうか。少し自分の言動に反省する。あんまりやり過ぎて不信を買ってはいけない。なるべく自然な形でバッツに任せなければならない。なぜなら私では彼女を守ってやることはできないからだ。


「ふ……そうだったな。ま、俺はお前たちの事は応援してるんだぜ」

「そりゃまぁ……俺だって男だ。あんな可愛い女の子と仲良くなれたらそれは嬉しいけどさ」


 私には確証がある。レナはおそらく私と血が繋がっている。レナの外見から判断しておそらく彼女は私の妹に違いない。それはトゥールの村でずっと考えていたことだった。彼女のペンダントは私のものとまったく同じものだ。私はずっとこのペンダントが自分の出生を知る手がかりになると信じていた。それがタイクーンのお姫様と言う結果になるとは思ってもみなかったが。


「だったら男は行動あるのみだ。違うか?」

「ファリス。お前こういう事に慣れてるみたいだな。経験豊富とみたぞ」


 反撃のつもりなのか、バッツは意味ありげな顔をして私にそう返してきた。そもそも彼の質問はピントがずれているし、私は経験豊富な訳でもなかった。
 私は肩をすくめ、それを否定することにした。


「何を言ってる。俺は物心ついた時から海賊だったんだ。あんなとこで素敵な出会いなんてある訳がない」


 そう。周りはむさ苦しい男ばかり。卑屈で媚を売るヤツや、無駄に態度のでかいヤツらもいる。そんなヤツらに囲まれて、どう出会いを求めればいいと言うんだ。


「う……で、でも村の酒場とかに行くことはあるんだろ? その時に酒場の踊り子なんかを口説いたりしてないのか?」


 なるほど、そういうケースもあったようだ。私は彼の反撃に気づかれない程度に眉をひそめた。ここは少し頷いておいた方がいいのだろうか――いや、私らしくないな……それは。


「確かに酒場に行くことはある。でもな、俺は独りで飲むのが好きなんだ。酒の席まであんな下品な奴らの中に混じって騒ぎたくない」

「あぁ……それはわかる気がするな。だってお前だけ浮いてるもんな。こんな事言ったらお前は怒るのかもしれないけど、この間寝顔を見た時……と思ったからさ」


 バッツの声がこもり、一部を聞き取ることができなかった。


「すまん。今聞こえなかったんだが、なんて言った?」


 そう返すと、バッツは見るからに慌てた様子になった。


「いや、その……綺麗だな、と思ったんだよ。こんな事言ってる俺自身おかしいと思ってるんだけど」


 私はそれを聴いた瞬間、頭が真っ白になった。
 それはどういう意味だろう、と思った時、自分の顔が熱くなるのを感じた。見るからに鈍感なはずなのに、変なところで鋭い男だ。私は今が夜中であることに感謝し、悟られないように平然と返すことにした。


「はは、おかしなことを言うヤツだな。そういう言葉は俺なんかに言ってる場合じゃないだろ。レナに言ってやれ」

「い、いや、それは難しいというか、その……」

「仕方ないヤツだな。よし、俺が協力してやろう」


 胸の奥がズキと痛んだ。それに気づかない振りをする――そんなことは私……いや、俺には許されないから……


「だから、気になってるだけだって!」

「あんまり大声出すな。レナに聞かれるぞ?」


 慌てて口を抑えるバッツ。その姿は彼の気持ちの全てを表しているようで、わかりやすい男だという事を教えてくれている。それは私にとって最高で最悪の事実を同時に教えてくれていた。


「少しそこで待ってろ。レナを呼んで来てやる」

「え、いやそれは……うーん」


 まだ何かを悩んでいるバッツに背を向け、私はレナを呼びに船室に向かうことにした。一歩一歩進むたびに私の運命が決まるような気がする。私は彼女を守らなければならない。彼女を幸せにしてやらなくてはならない。それが私にできる償いだと思うから。


 ――何をしてるんだろうな……私は。


 船室への階段に足をかけたところで空を見上げる。私を照らす月の光はとても幻想的で、私に何かを語りかけているようで――


 ――悪いな。俺は頭悪いからな。お前の言葉を聞き取ることができないんだ。


 階段を一段ずつ降りる。足を踏み出す度に鈍い音が聞こえる。


 ――そうか……俺にはまだ親友がいたんだな。


 海から吹いてくる風は私の髪を揺らす。再び別れなくてはならないだろう親友に礼をすると、暗い船室へと私は下りていった。












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  1. 2006/10/29(日) 03:08:30|
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霧城昂

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