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機動戦士Zガンダム -星を継ぐ者- 感想

 丁度昨日の日曜日ですね、タイトルの通りZガンダム劇場版を見てきました。なんというか、見るまでにこの場所が田舎なだけに色々な波乱がありました。
 まず4人で見に行ったのですが、10時半からの放映を見に行って見ると、満席で見られないと言う事態に。仕方なく、14時50分からの席の予約をしたのですが、ツレの1人がバイトの都合でその時間は見られないと言うことに。

 そして、そこは大学生。大人な対応です。
 袖の下からちらつかせた○○でもって、我々3人だけで見ることを了承させ、然る後に路地裏で(以下略)











 まぁ、そんな感じに波乱続きでありました。

 そして当の映画の方の感想なのですが、ストーリー内容的には95分三部作という中でかなり頑張っていたのではいでしょうか。
 TV版とは全然違う展開に結構新鮮味がありました。ですが、旧作画を使いまわしすると言うのはどうか、と。アレで全て新作画なら文句は何もなかった訳です。

 Zガンダムに出てくるキャラで私が一番好きなキャラは、年と声があってない人NO.1に輝くかもしれないハマーン様。しかし、今回の第1部には全く出てきません。仕方ないので、Zで2番目に好きなパプティマス様で我慢することにしました。
 全体的に出番は少ないのですが、相変わらず存在感は抜群でした。
 彼のセリフに一つ印象深かったものがあります、それが少しネタバレになるのですが、とある名前があるキャラが死んだ時に言ったセリフ――言葉が走った!?――です。
 このセリフが何とも彼らしいではないでしょうか?

 そして忘れちゃいけないのが、ロボットアクションですね。全体的に新作画の部分は凄かったのですが、特に後半の攻防はかなり格好の良いものでした。思わずDVDをノリで買ってしまいそうな程に。

 最後に全体的な感想なのですが、ガンダムが好きな人なら見る価値はあるかと。好きでなかったら見る必要は全くありません。そんな感じの出来です、察してください。



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  1. 2005/05/30(月) 01:38:12|
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アーケード業界の思わぬ業績

 前に少し書きましたが、最近のゲーム業界は今までにない不況を迎えています。この状況を打開すべく、と次世代機を楽しみにしていた訳です。しかし期待を裏切られそうな気が物凄いしてきた今日この頃ですが、皆様どうお過ごしでしょうか?

 ゲーム業界全体というよりむしろコンシューマ業界と言った方がいいのかもしれませんね。コンシューマとは逆に、アーケード業界は今かなりHOTな状況です。
 特に、ネットワーク対応ゲームが猛威を振るってますね。麻雀格闘倶楽部・クイズマジックアカデミー・アヴァロンの鍵、最近では三国志大戦でしょうか? かなりの業績と思われます。
 こんな感じに、ネットワーク対応ゲームをプッシュしましたが、私がやってるネットワーク対応ゲーム、実はBeatmania II DXだけだったりします。元々、私はオンラインゲームは好きではないもので…

 まぁ、その音楽ゲームも中々に好調です。特にギタフリ、ドラマニやポップン辺りの人気が色んな世代に出てきてますね。私の好きなビーマニが不調なのがアレですが。
 もう少しビーマニをプッシュしてもいい気もしますが、少し見た目がアレなのが受けない点なのでしょうか。私はつい最近まで、メタルバンドでドラムを担当していた経験もあり、こう感じるのですが、ギタフリやドラマニも私から言わせればとてもアレですね。
 だからと言ってビーマニがいいとはとても思えませんが。

 そして、マイナーながらも中々に業績を伸ばしてきているのはシューティングですね。
 最近好調な虫姫さまを筆頭に中々に健闘しているようです。私も中々に楽しませてプレイさせてもらってます。
 ツレに全国TOPレベルのシューターがいるせいで、私もシューティング好きになってしまいましたが、私はもともとアーケードでは格闘ゲームONLYの人でした。

 そして、当の格闘ゲームはと言うと――恐ろしいくらいに不況ですね。アーケード業界ではダントツに。確かにプレイ人口が一番多いことは確かなのですが、最近出てくる格闘ゲームが皆不作続き。しまいには元は同人ゲームであるMelty Bloodなるものが出てくる始末。

 上記のように、格闘ゲームの未来はないものとされています。だが、しかし。今度出る新作に新たな光を感じています。
 それは「北斗の拳」です。これにはやられました。
 空前のリバイバルブーム――少し時期は過ぎたような感はありますが――に乗って、最後にやってきた刺客。そう、それが北斗の拳。
 ぜひとも、アホのように作りこんで神ゲーにしてもらいたいものです。

 まぁ、ここまで中々意味のつながらない駄文を書きましたが、最後に何が言いたいのかというと、ゲーム業界もまだまだ捨てたものじゃないな、ということです。

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  1. 2005/05/29(日) 00:58:04|
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Blue Moon 第9話

 朝の日差しが降り注ぐ。そよぐ風は俺に秋を感じさせた。心地よさが半分、寒さが半分。そんな秋の風を体に浴びながら、俺は昨日の事を少し思い出してみた。

 おごってやる、と言った時の月村の驚いた顔。そして、その後の笑顔。
 曲を選んでいる時、くすんだボタンに触れている綺麗な指。
 次々と降って来る矢印に合わせてステップを踏む華麗な足。

 そこまで考えたところで俺は一つ溜息をついた。前々から気づいてはいたが、改めて考えるとどうしようもない程に綺麗だ。
 今度こそ俺は自分の気持ちに確信を持った。俺は月村に恋をしているようだ。そう思うだけで少し胸が締め付けられるようだった。
 ――らしくないな俺よ、もっと毅然としていろ。

 曲がり角を左に曲がると、丁度小学生と思われる男子がこちらに走ってきているところだった。俺はその子とぶつからないように端に寄ってあげた。それに気づかず、その男子は俺の横を通り過ぎて行った。

 思えば何時からであっただろうか。初めて出会った時であったろうか。初めて話した時? それとも、あの花見での席であったか。
 今はもう考えてもわからぬ事か。無駄なことを何時までも考えている――確かに、俺は少し変わったのかもしれないな。

 そんな些末な事を考えている内に、校門にたどり着いた。
 さぁ、せめて顔だけは毅然としていよう。当人はともかく赤星や安田にばれぬようにな。










Blue Moon 第9話










 教室に入ると何時もより騒がしい声に迎えられた。
 何事か、と辺りを見渡すと、俺が来たことに気が付いたらしく、教室の隅の方に居た赤星と目が合った。すると赤星は近くに居た女子に一言声をかけると、こちらの方に向かってきた。


「いいのか、赤星。あの女子と話していたみたいだったが」

「あぁ、ただの世間話だったからな」


 爽やかな笑顔で、本当にこの男らしい台詞を吐いた。会うたびに思うがコイツを好いている女子たちに同情を覚える。
 まぁ、そんなところもコイツのいいところであるのだが。


「で、だ。いつもより騒がしいようだが、何かあったのか?」

「あぁ、もうすぐ文化祭だろ? そろそろやる事決めとかないけないって皆話し合ってたんだよ」


 赤星の言葉で初めて文化祭と言うモノを思い出した。まぁ、アレだ。何をやるにしても、俺が役に立てるのは裏方だけだ。何時もの通り裏方に回ることにしよう。目立つことは性分ではないし、不得意だからな。


「それでだな、高町。このままだと中々いい案が出てきそうにないんだ。う~ん、みんなやりたい事バラバラだからな。それで一応、お前にも意見聞いておこうと思ってな。どうだ、高町。何かないか? 何でもいいんだ」


 赤星は指を折りながらそう言った。どうやら今まで出た案を一つ一つ暗唱していたようだ。今みた限りでは少なくとも5つ以上の案が出ているみたいであるが、実際はもっと多いのかもしれない。
 さて、どうしたものか。赤星の頼みに少し思案してみる――しかし、発散するばかりで中々考えがまとまらない。
 それならばすでに出ている案を聞けば、少しは参考になるのではないか。そう思った俺は赤星に聞いてみることにした。


「そうだな、定番どころだけど、喫茶店、劇。それと今更だとは思うんだが、お化け屋敷だな。えっと後は、カラオケと――あぁ、居酒屋って意見もあったが、これは却下だな。とりあえずこんな所だな」


 赤星は少し苦笑しながらそう言った。そして俺から目を離し、教室の前の方に目を送った。


「おっと、そろそろ時間だな。じゃあ、高町。また後で聞かせてくれ」


 そして赤星は席に戻っていった。何とも慌しいことだ。
 まぁ、俺も何時までもこんな所に突っ立っている訳にもいかない。俺もそろそろ席に着こう。肩に背負った鞄を改めて背負い直す。そして自分の席に向かおうと視線を送ると、何時の間に来たのか、さっきまで姿の見えなかった月村と安田がいた。何かしゃべっているらしく、安田は前を見ないで体を横にして座っていた。
 少し何とも言えない気持ちになったが、気にせず席に向かうことにした――席に向かうと言う事は、必然的に彼らと顔を合わすという事に繋がるのであるが。

 俺の姿に気づいた二人は、それぞれ彼ららしい挨拶をしてきた。それに会釈で返すと、俺は席に着いた。二人もそれで納得したのか、会話を再開させたようだ。
 鞄を開け、中の物を一つ一つ机の中に入れていく。全てを入れ終わると、俺は鞄を閉めて机の横にかけた。
 二人の会話に参加でもしようとも思ったが、そろそろ授業開始の時間だ。今から割り込むこともないだろう、と思い目を閉じることにした。










 教室の中にチョークの音が鳴り響く。たまに聞こえる紙をめくる音は確かに受験生たちの教室を想像させる。
 そんな中、隣の二人はと言うと――隣に目だけを向けると、安田の顔を伏せた姿と肘をついて顎をのせる月村の姿が目に入った。相変わらずと言う事だ。まぁ、俺も授業など一向に聞いていない為、人の事をいえない立場ではあるのだが。

 ――暇だ。
 そんな不謹慎な事を考えていた俺は、どうやって暇つぶしをしようかと考えることにした。その方がおそらく健全であろう。

 まず最初に思いついたのは、落書きだ。俺は鞄から筆箱を出すと、中から愛用のシャーペンを取リ出した。
 そこで一つ気が付いた。昨日、俺には絵心の欠片も微塵もない、と言うことに。
 それに気づいた俺は落書きで暇をつぶすことを諦めた。

 次に思いついたのは、勉強に参加する事だ。俺は勉強に参加する為、机から教科書とノートを取り出すことにした。すると幾ら探してもノートが見つからない。
 そこで一つ気が付いた。そういえばここ1年ほどノートをとった記憶もなければ、ノートを購入した記憶もなかった。
 ――これは却下だ。

 最後に思いついたのが、先ほど赤星に頼まれた文化祭の出し物についての案だ。これは中々にいい案ではなかろうか。そう自画自賛した俺は真剣に出し物についての案を練ることにした。

 さて、何かいい案はない物か――そう考えてみても、中々簡単に思いつく代物ではなかった。どうやらすでに出ている案の中から検討するしかないようだ。

 まずは喫茶店。これは中々いい案ではなかろうか。あまり表に出るのは好きではないが、これならば何時もより何かの役には立てそうだ。他の俺にとって少し物騒な案よりは余程いいのではないか。決定だな。

 そこまで考えたところで一つ重要な事に気が付いた。
 ――今のでは数分も時間を潰せていないではないか。

 俺は、改めて自分の馬鹿さ加減にほとほとあきれ果てていた。










「高町、いい案考えてくれたか?」


 授業終了と同時に赤星が俺の席にやってきた。用件は言葉の通り先ほどの文化祭の案についてらしい。
 それに対して、先ほどの授業で考えていた事を赤星に伝えることにした。


「一応考えたが、俺の不器用な頭では新しい案を思いつくことはできなかった。しかし、一応意見は用意しておいた。さっきお前が言っていた既に出ている案の中から考えたんだが、喫茶店がいいんじゃないか? それならば、こんな俺でも手伝えることがあるしな」

「なるほど、確かにそうかもしれないな。よし、その意見を委員長に伝えておくよ」


 赤星は俺の返答を聞かず、俺の席から去っていった。
 ――俺なんかの意見でいいんだろうか。


「高町くん、今の何の話? 忍ちゃんの予想では文化祭のことなんだけど」


 何時の間に起きていたのか、月村がそう話しかけてきた。


「あぁ、そうだ。赤星に何かいい案はないか、と頼まれてな」

「でも、高町くんの不器用な頭じゃ、新しい案が思いつかなかったから、既に出てる案から選んだ、と」


 月村が少し口の端を吊り上げながらそう言った。何とも意地の悪い言い方であったが、その程度の事は気にならなかった。


「あぁ、そんなとこだ」

「ふーん、大変だねっと」


 俺の言葉にそう答えた月村は、椅子に持たれていた体を起こすとそのまま立ち上がった。


「どこへ行くんだ? 月村」

「高町くん。女の子にそんな事聞いちゃダメだよ」


 月村はそう言うと、そのまま教室を出て行った。
 ―― 一体どういうことだろうか。










 そうこうしている内に昼休みの時間が来た。
 さて、今日は何を食べようか、と考えていると、安田が席を立った。今日食べるモノを決めたのであろうか。
 その事を聞いてみることにした。


「安田。今日は何を食べるんだ?」

「ん? あぁ、今日はパンのつもりやけど」

「そうか、じゃあ俺もパンにしようか」


 そう言うと、安田は少し申し訳なさそうな顔をした。


「それはええねんけど、すまんなぁ。今日はちょっと行くとこあんねん。せやから一緒に飯食われへんけど、ええか?」

「あぁ、そうなのか。それは構わんが、どこへ行くつもりなんだ?」

「あぁ、ちょっと晶に用事あってな。何の用事かわからへんけど、呼び出されてん」


 そういうと安田は鞄から財布を取り出した。


「そうか、なら仕方ないな」

「悪いな。ほな、また今度な」


 財布をポケットにねじ込み、そう言うとそのまま出口に向かって走り出した。途中で2,3回ぶつかりそうになっていたが、その度に両手を合わせて謝る仕草をしていた。少し急ぎすぎだろう、とも思ったが、早く行けと言ったのは自分だな、と思いなおした。

 さて、と。俺も飯を調達してくるか――そう思った俺は、財布の中身を確かめ購買に向かうことにした。
 教室を出たところで月村を起こすのを忘れてた事を思い出したが、パンを買ってきてやればよかろう、と思い、そのまま購買に向かうことにした。









 俺は何時も後になってから後悔している。この時もそうだ。月村のことを忘れずに起こしてさえいれば、思い出したところで教室に引き返してさえいれば。
 この後、想像もしていなかった第3の事件――俺の安田への確信を強めた事件――が起こった。それが後に、俺にとって一生の恥になりかねない事件に繋がっていく事になる。

 ――こんなことを自ら語っている辺り、本当は恥ではなかったと思ってたのかもしれないが。いや、思っていたいのかもしれないが。











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  1. 2005/05/27(金) 01:16:14|
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SONYの所業

 次世代ハードの発表もそれぞれ済んで、後は少しずつ情報を開示していくと言う形になりそうです。
 特に今の時期はとても大切な時期でしょう。この時期は各会社共にどの程度の情報を出していくか、を要検討し発言を選んでくでしょう。
 しかし、そんな時期にまたSONYはやってしまった。彼に喋らせてはいけなかった。情報開示に対する検討は必ずしているのでしょうが、彼に喋らせてはその会議も意味がない。
 もうお分かりでしょう、彼とは誰か?










 株式会社ソニー・コンピュータ・エンタテインメント社長兼CEOの久夛良木健氏です。



 久夛良木社長はE3での発表に対してこう答えてしまいました。


「PS3はSCEIを設立した時に考えていた目標に、やっとたどり着いた製品です。我々はゲームをやるためにPlayStationを作っているのではなく、コンピュータの素晴らしいパワーをエンタテインメント、つまり娯楽に生かしたいと考えて会社を運営してきました。初代で3Dグラフィックチップを載せ、PS2ではエモーションエンジンを搭載した。PS3はゲームに偏ったアーキテクチャではありません。子供のためのコンピュータではないんです。我々の目標である、エンタテインメントのためのコンピュータと言う意味では、PS3のために1と2があったようなものです。」


 この発言はいささかまずいのではないでしょうか?
 まぁ、この発言を読まれている方が何人いらっしゃるかわかりませんが、視聴者が少なくとも、子どもを対象にしてないと発言するのはどうかと思われます。

 それは何故か?
 私が以前日記でいいましたが、これからのゲーム業界を支えていくに当たって、どうしても考えないといけないのは次世代を担う子どもたちだと思うんです。子どもたち抜きにしてゲームは語れない。そう思います。
 しかし、久夛良木社長は言い切りました。子供のためのコンピュータではない、と。

 と言う事は、PS3で持って何をしたいのでしょうね?
 ゲームではなくエンターテインメントのための娯楽ツール。私はそれをゲームと呼ぶのだと思っていたんですが、どうなんでしょうね?

 そろそろSCEI社員は気づくべきではないんでしょうか。久夛良木社長がいらないと言う事に。
 それとも久夛良木社長がリコールさせない為に声を出していえないような事をやっているのでしょうか?

 どちらにしても、この時期にこのような発言をするのはどうかと思ってしまいます。




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  1. 2005/05/22(日) 05:14:34|
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She led to wide-scale bloodshed -第一部 第1話-

 物語はこの世界最大の国、ザール帝国を舞台に幕を挙げる。

 ザール帝国は帝都を中心に5つの大きな町でできており、商業や軽工業も盛んな国であるが、主な産業と言うとやはり鉄鋼業であろう。
 帝都最大の工業区のあるパンテラの町――帝都ライオットより百数十km北――では、すぐ近くに鉱山がある為、主に武器の生産により経済を発展させている。勿論、住民の苦情もかなり出ており、町長も困り果て、帝都に鎮圧要請を出したのは、つい最近の話だ。

 その他いくつか特徴のある国ではあるが、その中で一番の特徴を挙げるならば、その圧倒的軍事力であろう。
 隣国ウィナー帝国との長きに渡る戦争により、民や国は疲弊を余儀なくされた。それを打開したのが北方のスール王国との戦争に打ち勝った原動力でもある帝国近衛騎士団である。
 帝国最強の近衛騎士団「リング12」がウィナー帝国の数千の兵士相手にたった12人で勝利を修めたのは記憶に新しい。その際、最も際立った活躍をしたのが、リング12団長ロバート=D=シュテッケンと若輩ながら天才的な剣技を披露するブルー=C=ドレイフォードだ。
 この戦争――ルクレツィアの丘の決戦――での活躍により、シュテッケン団長と騎士ドレイフォードは、それぞれザール帝国騎士団最高の栄誉でもある円卓の位を授与された。シュテッケン団長には「ガラハッド」、騎士ドレイフォードには「ラーンスロット」を。
 そして、この戦争によりウィナー帝国との戦争は一時停戦。ザール帝国に一時の平和が訪れたのである。

 そして、この物語はルクレツィアの丘の決戦よりわずか1週間後から始まる。長きに渡るウィナー帝国とスール王国との戦争により軍は疲弊していた。その為、国王は打開策に徴兵制度を採ることにした。多数の反対意見もあったが、それ以外に打開策はないと考え、そのまま押し切り、数百人を新たな軍兵として採用した。
 そして、その中にこの物語の主人公レイ=ミーヤの姿もあった。










She led to wide-scale bloodshed -第一部 第1話-










 ――何でこんな事に、そんな事を考えるのはこれで何回目であろうか。十回を超えた辺りで数えるのを止めたのはおそらく正解だったのだろう。そんなくだらない事を私は馬車に揺られながら考えていた。

 さて、今の状況について少し話しておこう。
 長きに渡る二国との戦いにより世界最大を誇る、さしものザール帝国も軍の疲弊を防ぐことはできなかったようだ。その為、国民から才能のある隠れた人材、および軍の頭数をそろえる為に国は数十年ぶりに徴兵制を採った。
 ここまで言えばわかると思うが、私はそれに選ばれ馬車で王城に連れて行かれている最中であった。何やら私には物凄い才能があるらしく、国王に直接ご拝謁を賜る権利の取得に成功した訳だ。

 ぼんやりと窓から外を見ると、景色がかなりの速さで流れていく。景色が不定期に揺れているのが少し気に食わない。王城への道くらいちゃんと舗装しろ、と言いたい。
 じっと景色を眺めていると、今を一所懸命生きている人たちが目に映った。私も数時間前まではあの人たちと同じだった。現状に諦め、理解し、そして生きていく。私もそんな人たちのお仲間であったはずなのだ。しかし、運命は皮肉なもの。私を放っておいてはくれなかったようだ。
 それから十分程馬車に揺られていると、段々と景色が流れる速さが遅くなってきた。どうやら王城に着いたらしい。その証拠に景色の外は見慣れぬ高い壁が目に映った。
 ――やれやれ、これからどうなる事か。
 そんな事を考えるのが精一杯だった。










 時を同じくして、ここは円卓の間。騎士団の各中隊を率いる長、つまり「リング12」と呼ばれる騎士たちが一同に集まっている。理由は、今回の徴兵制での件だ。


「団長、何故我々が集められたのか。今回の件については話がもう済んでいるではないですか」


 如何にも騎士だ、と言う感じの髭を蓄えた男がそう言った。その言葉に他の騎士たちも、同感だ、と言わんばかりに各々首を縦に振っている。


「如何にも、諸君らに集まってもらったのは他でもない。今回の徴兵制での件であるが。ここで重大な事件が起こった」


 団長と呼ばれた男がゆっくりと答えた。すると、その言葉に騎士たちはざわめき立つ。
 「リング12」が全員集められる程の事件が起こったのだ、並大抵の事件ではないはず、ざわめき立つのも仕方がないと言うモノであろう。
 ざわめき立つ騎士たちを一言で黙らせ、団長はそのまま続けた。


「事件と言っても、国に被害が出た訳ではない。むしろ良い事だ。皆も知っているだろうが、今回の徴兵制により数百人程新たに軍に選出された。その中で一人、天才がいたのだ」


 団長の言葉に少し安堵するモノたち、そして少しざわめくモノたちの正反対の反応が見られた。それもそのはず。天才が現れたと言うことは、「リング12」に入る条件を満たすモノかもしれないということ。それつまりは、自分が外れるかもしれない。そういう事なのだ。
 騎士に有るまじき心配とお思いだろう。だが、騎士も所詮は人なのだ。現在の地位を脅かすヤツが現れるのは好ましくないはず。


「皆、安心しろ。騎士として選ばれた訳ではない」

「団長。それはどういう事ですか?」


 「リング12」の中で一際若い騎士がそう答えた。


「騎士ドレイフォード。それはつまりだな、その者の才能が剣や槍、あるいは斧、弓。これらの才能を持っている訳ではなく。魔術師である、と言うことだ」


 騎士たちは皆納得言ったような顔をしている。しかし、ドレイフォードと呼ばれた騎士だけは少し怪訝そうな顔をしていた。
 それを見とめた団長は少し笑いながら騎士ドレイフォードに問いかけた。


「騎士ドレイフォードよ、何やら疑問が残るようだな? 言ってみろ」

「は、団長殿。確かに才能ある魔術師が現れたのは喜ばしきことでしょう。しかし、何故それだけで我々が呼び出されたのですか? 国一番の宮廷魔術師アンジェラ様と同等の才能を秘めていたとしても、我々が呼び出される理由はないはず? 違いますか?」


 ドレイフォードの鋭い観察眼に団長は少し感心したような顔をすると、その通りだ、と少し椅子にもたれながら答えた。


「確かに、それだけの理由では我々が集まる理由にはならない。騎士ドレイフォードの言う通りだ。つまりは、アンジェラ殿以上の才能があると言う事だ」


 団長の言葉を聴いて、再びざわめき立つ騎士たち。今度は先ほどのように団長は止めなかった。それも当たり前であろう。アンジェラは火術クラスB。それ以上の才能という事は、クラスA以上を保有していることになる。それは正に英雄なれる器があると断定できるのだから。


「団長殿! その者の能力は如何に?」


 ドレイフォードの問いに団長は少し考えるような仕草をした。言って良いものか、そんな表情をしている。しかし団長としてこれは報告しておかねばならない。そんな二つの思いが彼を迷わせているのだろう。
 だが、彼は答えた――水術クラスS――と。










 私の視界には赤い絨毯が写っている。それもそのはず。ここは謁見の間であり、今現在、目の前に皇帝陛下が居られるのだから。


「表をあげよ」


 皇帝陛下のその言葉に、私は顔をゆっくりとあげた。するとそこには、普段遠くから眺めることしか適わない姿がこんな近くで確認することができた。
 その事実に私は少し緊張を覚えた。


「クラスSとの事だが、そのような力を持っていながら、よく名を挙げることをしなかったな」

「は。失礼を承知で申し挙げるならば、私はそのような事に興味が全く沸かなかったのです」


 皇帝陛下のお言葉に、一言一言恐怖を覚えながら私はそう答えた。すると、陛下は私の予想とは違い、顔をおずおずと拝むと、少し笑みを浮かべていた。


「いや、こちらこそ失礼な問いであったな。許せ。私はな、そなたを歓迎しておるのだ」


 陛下の言葉が私には到底信じられぬ言葉であった。
 それもそのはず、私はこの力で様々な虐待にあってきた。その度に手を血で染めてきた私にふさわしい言葉ではなかったからだ。


「ありがたき幸せ――では、私めの処遇は如何に?」

「そうだ、それを決める為に呼び出したのであったな。ふむ、そなたには水の宮廷魔術師として働いてもらいたいのだが、どうだ?」


 陛下の言葉は私には少し眩しすぎた。そのような立派な地位が私に似合うはずもない。そのようなことを考えたが、この場で断る勇気も私には無かった。ならばこそ、陛下の言葉に準じようと。


「わかりました、今日から私は水の宮廷魔術師として名乗りましょう。しかし、本当に私めでよろしいのですね?」


 ――私は何を言っているのか。これでは、先ほどと全く違う態度ではないか。
 そんな失礼に対しても陛下は全く気にせず。そなたでなければならないのだ、とおっしゃった。



 この瞬間、帝国に新たな宮廷魔術師が誕生した。レイ=ミーヤという、一風変わった名を持つ女であった。
 この女が後に帝国に様々な幸運と様々な不幸をもたらすのだが、それはまだ先のお話。今は彼女の言葉に準じ、私にこのような機会を与えてくれたことに感謝しよう。
 それは語り部として幸運なことなのだから。







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  1. 2005/05/21(土) 17:18:23|
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She led to wide-scale bloodshed. -プロローグ-

 あたりは薄暗く、細長く見える空にはうっすらと月が見えている。その空からゆっくりと舞い降りていく雪。それは地面に降りるとそのまま消えていく。
 あたりの家からは明かりが漏れている。かすかに聞こえる話し声からは、幸せな家族を想像させるのは容易であろう。

 それらとは全く無縁の一生、いや半生を送った女がいる。彼女は今、壁を背に横たわるように倒れている。左手で押さえた脇腹からは、おびただしい量の血が溢れている。かすかに動く胸を見る限り、まだ生きてはいるようだ。

 女は考える――何故こんなことになってしまったのか。もしかすれば、あの家族のように幸せな生活を送るという未来も私に用意されていたはずだ、と。

 女は考える――何故こんなにも痛いのであろうか。この痛みは過去一度足りとも味わったことのない程の苦痛だ。何故このような目にあわねばならぬのか。

 ――それは幾ら考えても出ない答えであろう。

 伏せていた顔がゆっくりと上がっていく。その顔にはすでに死相が見えていた。だが、それは病的なまでに、ただただ美しかった。絹のような金色の髪に、あまりに整いすぎた顔。それは誰もが恐怖を感じずにはいられぬ程であった。
 だからこそ、この運命は正しいものであったのだろう。

 彼女に絡め取られた鎖が、まるで意思を持っているかのようにゆっくりと解けて行く。その様はまるで、次の担い手を探しているかのようであった。
 全ての鎖が解けた。すると彼女の姿がゆっくりと消えていく。まるで世界が彼女の存在を否定しているかのように。

 辺りはもう日が落ち、暗闇が支配していた。そんな中、誰にも身取られず消えていく彼女を、私は少し哀れに感じた。

 女は初めからそうであったのではない。この世界の救世主になどなれる器でもない。ただ彼女は真摯であった。
 それが例え血塗られた存在であっても。










 そして物語は紡ぎ出される。選ばれし者は全部で4人。





 一人は、神に嫌われ、血の雨を降らせる孤高の女

 一人は、この世界に覇を狙う気高き男

 一人は、ただただその日を生き、町から町へと旅する陽気な男

 一人は、神と呼ばれる運命に生まれた卑屈な男





 この4人が織り成す物語は、4人が協力し、強大な敵に打ち勝つ話でもない、ただただ時が流れ、彼らがどう生きていくかを記録した物語。
 流れ行く時は儚く、時として強大な障害にもなり得る存在だ。

 前座は終わりだ。
 物語の幕がゆっくりと上がっていく。
 隙間から見える光は段々と大きくなっていき、やがて眩いばかりの光となり、4人の姿を包みこんでいく。

 さぁ、いよいよだ。長い長い劇の始まりだ。







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  1. 2005/05/19(木) 03:11:33|
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PS3の仕様および、これからのゲーム業界(後半)

 はてさて、Xbox360、PS3だけでなく、任天堂の次世代ハード「Revolution」も発表されましたね。
 このハードについての主な特徴は、やはりそのコンパクトさでしょうか。DVDトールケースを3枚重ねただけの厚さとトールケースより少し長い程度のボディ。これはかなりの魅力ではないでしょうか。ほんとに見た目はただのDVDドライブにしか見えないんですけどね。小さすぎて壊れ安いという事が心配されますが、その点はおそらくは大丈夫ではないでしょうか。天下の任天堂です。子ども相手の商売はお手の物。見た目よりも意外と頑丈にできているのでしょう。

 しかし、心配されることが一つあります。DVD-videoに対応、そしてFC、SFC等の過去のゲームをダウンロードによりプレイすることが可能、というこれらの仕様についてです。

 何故心配なのか?どれもあって困るものでもなしに、と言った事を思われるかもしれません。それは私もそう思います。あって困るものではないし、ある事によりGCでは勝ち取れなかった世代のシェアを獲得できるかもしれません。

 では何を心配する必要があるのか。それは現在一番シェアを取れている世代、つまり子どもたちを置き去りにしているのではないか。
 任天堂もユーザーフレンドリーとは言え、企業です。シェアを沢山取るという理由を一番の理由に引っさげ、シェアを勝ち取りに行く。こういう事を思っても仕方がありません。
 ですが、敢えて私は任天堂に期待したかった。他の2ハードが凌ぎを削る中、ただただ子どもたちのことを一番に考える任天堂に期待したかったのです。
 そしてその期待は今回の発表で脆くも崩れ去りそうです。あの形状は本当に子どもたちを一番の対象としているのか?
 そんな事を思わずにはいられません。

 あくまでコレは私の意見でしたが、予想としてはどうか。おそらく今のSONYの縮退を理由にシェアを拡大させることに成功するでしょう。もしかすると、DQの参入を勝ち取れるかもしれません。だとすれば勝利は見えたものです。
 そして勝ち取れなかったらどうなるか――それも大丈夫。
 3つのハードの中でおそらく一番安定して売れるハードですから。



 ここまでこう語って来ましたが、任天堂の選択は正しいと私は思ってます。現在、ゲーム業界は段々と縮小化していっています。以前ほどの盛り上がりが、もはや影も形も見えません。
 親が子どもにゲームをさせたくない――そう思う家族も沢山いらっしゃいます。そう考えると、対象を子どもたちに標準を絞っても売れないかもしれない。そう予想することも仕方がないでしょう。

 ゲーム業界の縮小化と書きましたが。これは本当に著しいものです。今ではもう大作シリーズ物でしか安心して勝負ができない業界になってきています。新作は売れない――これが通説になりかけているのも確かです。
 だからこそ、今回の次世代ハードにはかなり注目しています。今回の次世代ハード戦線は企業間の争いだけでなく、ゲーム業界の存続にも関わっている重大なターニングポイントです。
 今回失敗すれば、コンシューマゲーム業界はもう終わりでしょう。そして、ゲームは今までの数あるおもちゃの歴史の中の一つにすぎなかった。
 そんな未来が待っているかもしれません。これだけは自分にとって一番避けたい事ですね。

 そんな中元気なのはアーケードゲームでありますが、これはまた別のお話。またの機会という事にして、この辺りで締めくくらせて頂きます。
 おそらくは、我々が生きている間は無縁の出来事なのでしょうが。

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  1. 2005/05/19(木) 01:40:22|
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PS3の仕様及び、これからのゲーム業界(前半)

 Xbox360から遅れて数日。PS3の仕様も発表されましたね。
 そして各メーカからの参入ソフトも幾つか決定です。魅力あるソフトがある中、一番注目すべきはやはりFFでしょうか。
 個人的にはこれが今日の発表での一番驚いたポイントですね。
 何故かというと、私はこの早い時期にFFの参入ハードの発表はないと思っていました

 FFが発売されると言う決定の元にPS3を売り出していく。
 今日、ゲーム業界がこれほど縮小していますが、未だFFのブランドネームは健在である、と私は考えます。
 そういう意味では、これはSONYにとっては嬉しいことであると思いますが、スクエニにとっては余り上手い戦術ではなかったように感じられます。

 それは何故か。
 一番の問題はSONYの企業としての縮退でしょうか。
 昔からそうでありましたが、SONYは何かと経営が下手でした。過去に例を見るならば、一番の失敗はベータですね。ベータときいて何も思い浮かばない人も珍しくはないかな、と思います。
 つまりは、それほどの失敗なのですから。(笑)
 その他、SONYは色々な分野で競争を繰り返しては負けて続けてきました。勝ったという印象が強いのはウォークマンくらいですね。

 こんなSONYですが、最近になってやっと勝ちましたね。皆さんもご存知の通り、PSですね。PSではライバルSSに勝ちを挙げました。
 この時の勝因はやはりFF7ですね。その他ソフトラインナップもありますが、FF7が一番であったと思います。
 ちなみに私はFF7は嫌いですけどね。(爆)

 その次の勝利はPS2でやってきましたね。これはまぁ、ライバルと言える対抗馬が無かったことも理由ですが、DVD再生機能が一番の売りになったと思います。
 その一番の売りが初期不良であったことも事実ですが。
 そして現在に至ります。

 しかし、ここで問題が一つ生じました。マイクロソフトのゲーム業界参入ですね。例のXboxというヤツです。
 皆さんこのハードはどうでしたか?大抵の人が”外した”、と思っていらっしゃると思います。ですが、事実は全くの逆。マイクロソフトはこれが失敗でなく成功でした。
 ソフトラインナップの面であっても、海外はともかく、日本での販売台数を考えても到底成功したとは言えません。
 それなのに何故成功なのか?
 マイクロソフトの目的は、このXboxでPS2とまでは行かなくても、日本でかなりのシェアを取る。そう言ったものではないからです。

 元々、マイクロソフトはXboxでシェアを取るつもりは全くありませんでした。そりゃ全く売れないよりは売れた方がいい、と言う面もありますが。
 では、何故か?
 それは日本のゲーム業界で知名度を上げる、と言う理由です。そして、知名度をある程度上げた後、協力な売りを用意し、次世代ハードで勝負を挑む。
 これがマイクロソフトの考えたシナリオです。

 そう考えると、なるほど、と思われる方もいらっしゃると思います。
 しかし、思わぬ形で知名度が上がりましたね。例の初期不良の「これは仕様です」発言です。
 これは知名度を上げた上に、評判を落とすと言うやってはならないことをやってしまいました。
 何故そのようなことを言ったのかはわかりませんが、このシナリオはマイクロソフトの予想とは違ったものであったと思います。

 まぁ、ここまでこうして書き綴ってきましたが、結局何が言いたいのかというと。色めがねをかけてニュースを見るな、ということです。
 それが一番難しいんですけどね。


後半へつづく

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  1. 2005/05/18(水) 03:37:04|
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Blue Moon 第8話

 ここで一つ思い出してみよう。
 あの時、確かに俺は周りに注意を払っていなかった。俺が未熟だったのは認めよう。そして月村の勘違いであってくれ、と願う自分がそこにいる。たかがパン一つであろう。それ自体が特に何か危険である訳でもない。

 それとは逆に、最悪なパターンを想定しておけ、と思う自分もいる。この場合の最悪なパターンというのは何だ。家族に危険が及ぶ事か? 否、自分が殺される事だ。それすなはち、美由希ではまるで歯が立たないという事。そして、家族が皆殺しにされるという事につながる可能性もなくはない。

 しかし、その可能性を考えるに不可解な点がある。何故パンを盗まねばならなかったのか、という事だ。唯一、俺の頭で考えられる可能性は、俺に脅威、又は恐怖を与えたかった、という事だ。そう考えると、なるほど辻褄は合っているような気がする。
 だが、その可能性には、やり口が回りくどすぎると言う欠点がある。俺に恐怖を与えたいのであれば、常に俺に対して殺気、何らかの視線を与え続けていればいい。それならば小一時間で済む話だ。俺が察知できなかった程の腕だ。出所を教えずに殺気をぶつけることも可能であろう。
 そこまで考えたところで、俺は一つ大事な事に気がついた。それはつまり……










Blue Moon 第8話










 午後の麗らかな日差しが優しく降り注ぐ。秋には少し暖かさの過ぎる日差しがむしろ心地よい。ゆるやかにそよぐ風もまた、俺にやすらぎを与えてくれる。

 少し顔を上げると、教壇で社会科の教師が独特の口調で教科書を読んでいる。周りを見渡すと、ざっと8割は真面目に授業を聞いているようだ。それもそのはずであろう。我々は受験生なのだから。それでは残り2割は何なのか。それは、聞かぬが仏と言うモノだ。

 少し体を起こし、ポケットから時計を取り出した。授業終了まで、まだ30分近くも残っている。その事実に少し顔をしかめると、俺は目だけを左隣に向けた。予想通り並んで机に伏せている姿を確認できた。二人とも少し笑みを浮かべながら意識は夢の中のようだ。

 さて、残り30分弱どのようにして過ごそうか。そんな事を考えながら、俺はシャーペンを手に取ると、机に落書きをすることにした。無論、何時もはこんなことはしない。ここで俺が目覚めたのは、おそらく世界にとってイレギュラー。ならばそのイレギュラーに少し付き合ってやるのも面白いのではないか。
 横目で月村の顔を眺めながら右手を動かす。その線は事実とは違い、歪んだ曲線に歪んだ顔を描き出した。2割にも満たない内に、俺はそれを消すことにした。やはり慣れぬ事はするものでない。

 そんなつまらない事をやっている内に、授業の方はいよいよ佳境に突入したようだ。段々と、教師の口調が速くなっている。この教師がこんな形で話しているのをはじめて見た。というよりも、この時間に起きている事自体がはじめての出来事だ。たまにはこのような経験をするのも悪くない。そんな事を思わせてくれる瞬間だった。










 少し遠くから聴こえて来る鐘の音。それに遅れて、この教室内でもその音が鳴り響いた。まったく別々の鐘を使っているのか、何時もとは違う事に俺は少し関心を覚えた。

 そして辺りからは、少しざわめく声と鐘の音で体を起こす者で教師の声がほとんどかき消された。それに漏れず、隣の二人もどうやら体を起こしたようだ。気持ちよさそうな声で体を伸ばす姿と、うめくような音を鳴らしながらゆっくりと体を起こす姿が横目に確認できた。二人の対称的な姿が少しおかしく感じられた。
 そしてその視線を今度は赤星に向けてみた。すると、周りでは帰る用意をするもの達が居る中で、ただ一人クソ真面目にノートを取っていた。次の定期試験の前は再びあいつの世話になりそうだ。そんな事を思うと、俺も皆と同じように帰る用意をすることにした。

 机の横にかけてきた鞄をひざの上に乗せ、机の上のものと机の中のものを鞄の中に一つ一つ入れていく。数学の教科書、日本史の教科書、英語の教科書――そういえば、明日も英語があったな。どうせだから置いて帰ろうか。いや、幾らなんでもそこまでみっともない事をする訳にも行かないな。やはり持って帰ろう。今現在、ノートが一冊も入っていない鞄を抱えて、何を今更、とも思うが、それは俺に残された一抹のプライドだ。これを失ってしまっては、俺が俺でなくなってしまう。まぁ、こういう所が人とは違い、つまらぬ部分なのであろうな。



 帰る用意を済ませた所で、先ほどから聞こえていた月村と安田の会話に耳を傾けることにした。


「晶もやるわね」

「せやろ? でも俺はあいつも月村と一緒やと思っててんけどなぁ」

「うん、私もそんな気はしてたんだけど……っと、やっと取れた」


 何を取ろうとしていたのか、少し力んだような声で月村はそう言った。それが少し気になった俺――というよりも、会話の内容に、だが――は二人に視線を向けた。すると、それに安田が気がついた。


「おう、高町。お疲れやな」


 その言葉に俺は会釈で返した。すると月村が、昨日の約束を覚えているか、と聞いてきた。はて、何の事だったか。忘れたことを伝えようと思い、月村に視線を向けると、月村が少しあきれたような顔をしている。


「高町くん。昨日の話だよ。放課後、遊びに行こうって言ったでしょう?」


 顔の通りのあきれた声で月村がそう言った。それを聴いて昨日の約束を思い出すことができた。確かにそのような約束をした覚えがある。なるほど、これは明らかに俺の方が悪いな。俺は素直に謝ることにした。


「すまなかった。侘びと言っては何だが、今日は何でもおごろう。どうだ?」


 俺の言葉を聴いた月村は少し驚いたような顔をしてみせ、こちらが逆に驚いてしまうような笑顔をしてみせ、うん、それで許したげるよ、と返してきた。
 その様子を見た俺は、少し高鳴った胸を無視し、財布の心配をすることにした。取り出して確かめようとも思ったが、それはそれで色々な失態を見せることになる、という男としてのプライドが邪魔をして、それを躊躇わせた。月村の様子を見る限り財布の心配はなさそうだ。空になる、と思って良いだろうから。
 一つある事に気づき、念のため小銭を幾つか取り出しておこう、とポケットに手をやった。そして小銭を取り出そうとしたところで、安田に存在を思い出した。


「お前はどうする? 俺のおごりだが、来るか?」


 どうせだから、と俺は安田を見ながらそう言った。その言葉に少し考えるような仕草をすると、今度はポケットから財布を取り出した。そして、中身を確かめた。札を確かめず小銭だけ確かめているあたり、今日はかなりの金欠なのであろうか。


「せやなぁ。今日はちょっと行かなあかんとこあってのぉ……すまんな」


 両手を顔の前で合わせながらそう言った。まぁ、用事があるのならば仕方がない。それを伝えようとする前に、月村が先に反応した。


「あ、そっか。さっき言ってたよね」

「おう、そういう事や。ほな、ワシはちょっと急がなあかん時間やから、また明日な」


 そう言って鞄を持って立ち上がると、少し走りながら教室を出て行ってしまった。立ち上がった勢いで倒れてしまった椅子を直すことも無く。俺は一つ溜息をつくと、立ち上がり、倒れた安田の椅子を直すことにした。
 椅子を起こして直そうとしていたら、安田の机の中が少し見えた。見た限りかなりの量の本が入っていた。転校してきて1週間も経っていないだろうに。少し安田の教科書の悲哀を感じた気がした。

 そういえば赤星のヤツはどうしたのだろう、と思い赤星の席を見ると、一人の女生徒が赤星と会話をしていた。相変わらずだな、と思い目を離したところで、その女生徒が藤代であったことに気がついた。
 月村に視線を戻し、そろそろ行くか、と話しかけた。すると月村は笑顔で鞄を持って立ち上がった。そのまま俺の手を取り外へ出て行こうとする。正直、これは途轍もなく恥ずかしいので止めてもらいたいのだが。しかし、言っても無駄か。
 その事実に諦め、腕を取って先を急ぐ月村に歩調を合わせることにした。










「で、今日はどうするんだ?」


 何時ものゲームセンターまで来たところでそう月村に問いかけた。すると月村は、俺の腕を取りながら少し考える振りをすると、今日は音ゲーの気分だから、あっち行こ、と返してきた。
 音ゲーと言うと何時ものステップで点数を競うゲームだったか。そんなことを考える間も月村に引っ張られて歩いていく。まぁ、見ればわかるか。

 狭い店内の中を月村はなれた感じで俺を引っ張っていく。途中何度か人とぶつかりそうになったが、慣れてるだけあって直前で回避している。俺の方はと言うと、月村に引っ張られているせいもあって、何回か椅子にぶつかってしまっている。こんな姿は家族には見せられんな。
 何度目かの椅子を回避したところで、月村が大きな機械の前で立ち止まった。見ると、それは予想通りの物であった。すると月村はやっと俺の手を離し、その手で鞄をまさぐっている。おそらくは財布を捜しているのだろう。その姿に俺は少し笑みを浮かべ、教室を出る前に用意していた小銭を取り出し、月村の目の前に差し出した。


「今日は俺のおごりだと言ったろう。これを使え」


 俺の手と俺の顔を少し驚いたような顔で交互に見ている。最終的に俺の顔を見たところで、本当に言いのか、と言った顔をした。そんな顔をされたら断ると言う選択肢は当然出てこぬだろう。そう思うと、何も言わず月村の手を取り、その上に小銭を乗せた。
 すると月村は見るからに喜んだ顔で、ありがとう、と言いゲーム本体の上に足を乗せた。その言葉に、目を伏せることで返すと、近くにあった柱に寄りかかった。

 そして、月村は俺の渡した小銭を入れ、ゲームを開始させた。
 軽快な音楽と共に幾つもの矢印が画面の上から降ってきた。月村はそれに戸惑うこともなく次々にステップを決めていく。何時もながらに上手いものだ。これを見るためなら小銭の一つや二つは苦でもなんでもない。
 流れる曲に華麗なステップを決めていく月村。その姿を俺はじっと眺めている。その姿は美しく、ただただ俺にとって完璧であった。
 そして曲が中盤に差し掛かったところで、俺は目を閉じる事にした。
 月村と出会えたことに感謝をしよう、と。










――あとがき――
第8話までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この1週間忙しくて何時もより少し遅れてしまいましたがいかがでしたでしょうか?
少し皆様のキャラの印象と違う点もあるかもしれませんが、こういう面もあるんじゃない
か、と思って書かせて頂きました。

本当は10話程度で終わらせよう、と事件だけで話を進めるつもりだったのですが、やって
いく内にドンドン話が長くなってしまって、10話程度ではケリが付きそうにありません。
もうしばらく、私の駄文にお付き合い願えたらな、と思う所存です。

では、次は第9話でお会いしましょう。

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  1. 2005/05/18(水) 03:36:39|
  2. とらいあんぐるハートSS|
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Blue Moon 第7話

「そして、ここにある楕円の方程式だが、この点Pの座標を(x, y)とすると――」


 ぼんやりとした頭に催眠術のような言葉が延々と流れ込んでくる。一言一言が俺に眠れといっているかのように。眠気に従い身を委ねてしまうのが一番楽で効率がいい、という事も知っている。現に、今までの学園生活のほとんどの授業で実践してきた俺だ。この持論には絶対的な自信を持っている。だが、今はそうする訳にもいかなかった。


「a 2 { ( x-f ) 2 + y 2 }より、a 2 ( a 2 - f 2 )となる訳だから――」


 それは何故か。答えは簡単な事だ。そうする訳にもいかなくなったからだ。特別担任から何かを言われた訳ではない。担任もその事については諦めているのであろう。

 それはどういう事か。簡単な事だ。単に授業態度の問題だ。仮にも俺は受験生だ。受験生ならば受験生らしくしておかねばならぬだろう。周りの奴らに変に迷惑を与える訳にもいかない。

 本当にそれだけか。至極、最もな質問だ。個人的にはそれは建前――実際はある程度思っている事だが――で、ただ単に授業態度の問題でこれ以上点数を引かれるのが不都合なだけだ。決して、そうはならないと思うんだが、万に一つ授業態度が問題で留年でもしたらどうなるか。答えは簡単だ。周りの奴らにどれ程馬鹿にされるか。俺個人の学歴がどうとか言う事は余り関心が無い。ただ、俺が今まで積み上げてきたそれなりの信頼感と言うものが、それにより瓦解しそうで怖いのだ。

 そして、隣の席に目をやると月村はすでに就寝中のようだ。理系の授業はいつも起きているはずなのだが、今日に限っては完全に眠っている。また徹夜でゲームでもやっていたのだろうか。月村の成績は俺のそれとは比べ物にならない。だからこそ、この時期に平然と眠っていられるのだろう。肝の据わっている奴だ。かく言う俺もこれまでずっと眠ってきた訳であるから、人の事はいえない立場であるのだが。


「b 2 + f 2 = a 2 の関係より、これがこうなって……このように、楕円の方程式が定義されると言う訳だ」


 しかし、これは気を抜けばあっという間に眠ってしまうな。先が思いやられる――そんな事を考えていると、教室の外――おそらくこの気配は階段であろうか――で誰かが走っている気配が感じられた。この気配の張本人の顔が頭に浮かび、少し苦笑した。時計を見ると、針が10時を少し過ぎた辺りを指していた。こんな時間まで美由希の世話をしてくれていたのだろうか。だとすれば、昼飯くらい奢ってやらねばならないな。

 丁度その時、教室の後ろの扉が開かれる気配を感じた。そちらに視線を送ると申し訳程度に開かれた扉から安田の顔が覗いていた。しばらくそのまま視線を送っていると、安田と視線が噛み合った。すると、安田は少し怒ったような顔をした後、まるで子供がしかられた後のような無邪気な笑顔をしてみせた。そして、ゆっくりと扉を開けていく。その行為の末路が読めた俺はせめてもの慈悲と思い、視線を安田から外し窓の外に向けて安田の無事を祈った。この後、安田がどうなったかは言う必要もなかろう。










Blue Moon 第7話










 1時間目の授業が終わり、溜まった疲れを吐き出すように背を伸ばしていると、安田が話しかけてきた。


「高町、今朝はすまんのぉ」


 安田の意外な言葉に思い当たる節もない俺は、何の話だ、と問い返した。すると、安田は少し苦笑しながら頭をかき始めた。


「いや、今朝の妹さんの事や。変な勘違いで迷惑かけてもうたな、ってな」


 あぁ、その事か。大した事でもなかったのに一々謝るとは律儀な奴だ。
 俺も気にしていないから気にするな、そう安田に伝えると先ほどと同じような笑顔を返してきた。
 そして、安田の手元を見るとかちゃりかちゃりと鍵をいじくりまわしている。きっと家の鍵であろう。

 そんな俺の視線を感じ取ったのか、あぁ、これは家の鍵やねん、何や手持ち無沙汰でなぁ、などと俺に鍵を見せながら言っている。それを見ていると、不意に少し前月村が鍵を家に忘れてきた出来事を思い出した。今思えばアレは家に泊まりたい為だけに嘘をついたのだろう。

 そんなつまらない事を思い出していると、赤星が教室に入ってくるのが見えた。トイレに行ってきたようで、ハンカチで手を拭いている。俺の視線に気づくと、ハンカチを後ろのポケットに入れ、机の間をすり抜けてこちらに近づいてくる。


「よう、高町、安田。おはよう」

「おう、おはようさん」

「うむ、おはよう」


 赤星の挨拶に、俺と安田は赤星の方を見て挨拶を返した。そして赤星は腕時計を確認し、俺の席の横に立った。


「どうだ? そろそろ学校に慣れたか?」

「せやなぁ、まだ転校してきて昨日今日やからな。慣れるまでもう少しかかると思うで」

「はは、そりゃそうだ」


 赤星は自分の失敗に少し笑いながらそれを認めた。


「それはそうと、月村はどないしたんや? えらい眠そうやけど」


 というか寝てるか、月村の方に目をやりながら安田がそう言った。その言葉に赤星と俺は目を合わし、少し苦笑した。月村は何時もこんな感じだぞ、そう安田に教えると、その事実にかなり驚いたのか、うそ、まじで、と大声で言った。

 その言葉が大きすぎたのか、月村が少し身をよじらせた。それに気づいた安田は、あ、しまった、と口を手で覆いながら小声で言う。時既に遅く、月村はゆっくりと身を起こした。とても眠そうな顔で目を擦っている。おはよう、と月村に話しかけると欠伸をしながら、おはよう、今何時、と返してきた。そんな月村に苦笑した赤星がその質問に答えた。


「昨日翠屋の帰りに買ったRPGやってたら止まらなくてさ、結局朝までやっちゃったよ」


 予想通りの月村の言葉に、やはり、と心の中で頷くと、意外なことに安田がその話に食いついた。


「え!? 昨日言うたらアレやろ? She lead to wide-scale bloodshedやろ?」

「うん、そうそう。もしかして、安田くんも買ったの?」

「勿論。アレは注目してたからなぁ。スタッフが物凄いしな」

「うんうん、そうだよね!」


 ゲームの話で盛り上がる二人。そんな二人を見た俺と赤星は再び目を合わせ苦笑した。まさか安田がゲームが好きだとは思ってもみなかった。俺がゲームに疎いせいもあるし、俺の周りの同年代の男――と言っても、赤星だけだが――にゲームが好きな奴が今までいなかったせいか、どうにも違和感を感じる。

 そんな事を考えていると、チャイムの音が学校中に鳴り響いた。その音を合図に教室中の人々が自分の席に着き始めた。赤星も例外ではなく、また後でな、と言うと自分の席に戻っていった。残る二人の方を見ると、最初から自分の席に座っていたせいか、未だにゲームの話で盛り上がっている。静かにするように、と言おうとも思ったが、次の教師がくれば自然と黙るだろうと考え、注意しないことにした。

 そして、次の授業の準備でもしようか、と鞄を見ると教科書が一切入ってなかった。机の中に持ってきた教科書を入れた事を思い出し、机を調べて見てもこの時間の教科書は出てこなかった。どこへ行ったのか、それを考えていると、昨日の夜少しでも予習しておこうか、と教科書を鞄から取り出した記憶を思い出した。慣れぬことをするものではないな。
 一気にやる気をなくした俺は、そのまま机に顔を伏せると、先ほどから感じていた眠気に身を委ねることにした。










「高町く~ん。お昼だよ、お昼。ご飯食べないの?」


 聞き覚えのある声が俺を眠りから呼び戻した。今は何時であろうか。俺はどの位眠っていたのだろうか。目を覚まさなければそれもわからない。とりあえず、俺は起きる事にした。

 目を開けると眩しい光に再び目を閉じる。眠りっぱなしでまだ目が慣れていないようだ。ゆっくりと光に馴染ませるように目を開けると、見慣れた顔が最初に飛び込んできた。一瞬誰か思い出せなかったが、どうやら月村のようだ。となると俺を起こしてくれたのも月村だろうか。そんな事を考えながらゆっくり体を起こした。


「やっと起きた、高町くん。お昼どうする? 私たちはパンにするつもりだけど」

「ん……そうだな。俺もそうしよう」

「そか、じゃ売店行こうよ」


 俺の返事に満足した顔をしながら月村は席を立った。財布を取り出し中身を確かめている。何を買おうか思案しているようだ。そこで俺は赤星と安田がいない事に気がつき、そのことを確かめて見ると、二人とも先に売店に行ってるよ、との事だった。時計を見ると昼休みはもう10分過ぎている。急いで行かねば良いパンを買うことができないだろう。その事に気づいた俺は席を立ち、売店へ急ぐことにした。

 教室を出た所で、歩きながら月村が何かを思い出したような顔をした。どうしたんだ、と月村に問うと、さっき晶が来て、レンちゃんや那美もパンらしいから、一緒に食べようって言ってたよ、と財布についているキーホルダーをいじくりながら言った。そんな事なら構わない、と了承した。

 そうこうしている内に売店に到着した。相変わらず人ごみの耐えない場所だ。さて何を買おうか、そんなことを思案している内に月村は既に購入しているようだった。俺も急がないとな、そんな事を思い、人ごみの中に身を投じた。目標地点に到達してみると、どうやらコロッケパンとカレーパンが幾らか売れ残っていたのがわかったので、時間もないしそれにすることにした。俺は財布から小銭を取り出すとコロッケパン2つとカレーパン1つを購入し、邪魔にならないように人ごみを抜けた。後ろを見ると、更に人ごみが増してかなり凄いことになっている。その様子に少し恐怖を覚えたのは気のせいではあるまい。

 月村を探す為に辺りを見回すと、自動販売機でジュースを買っているところのようだった。人の間を縫うようにして月村に近づくと、向こうも俺のことに気がついたようだ。


「高町くんも無事買えたみたいだね」


 月村の言葉に頷き返すと、再び財布から小銭を取り出し俺もジュースを買うことにした。小銭を投入し、どれにしようか選んでいると、突然月村が勝手にボタンを押した。ガコンと言う音と共に落ちてくる缶ジュース。否、コーンポタージュが。月村の手を見ると現にコーンポタージュのボタンを押している。その事実に少し呆然としていると、月村が自動販売機のボタンを押した手で俺の肩を叩いた。


「ほらほら、栄養たっぷりだよ♪」


 笑顔を向けてそう言っている月村。その笑顔が今の俺にはどうしようもない小悪魔に見えた。しばらく呆然とした後、溜息を一つつくと自動販売機からコーンポタージュの缶を取り出した。


「ん……高町くん、ごめんね。怒ってる?」


 何も言わない俺が怒っていると思ったのか、手を顔の前で合わして素直に謝ってくる。そんな姿を見れば怒れるはずもなく、缶を右手からパンの持っている左手と胸ではさむようにして持つと、空いた手で月村の頭に軽く乗せる。


「別に怒っている訳じゃない。だが、これからはやめるように」

「う、うん。ごめんね、高町くん♪」


 笑顔で謝ってくる月村が、まぁ可愛くないと言えば嘘になる。俺も男なのだ、こういう無防備な顔をされると自然と胸が高鳴る。それをごまかすかのように月村に乗せた手をどけ、そのままその手をポケットに入れる。そして、俺は何時も通り無愛想な声でこう言うのだ。


「む、それよりレンや晶たちはどこにいるんだ? 待ち合わせているのだろう」

「あぁ、そうそう。屋上で待ち合わせているから、早く行こ♪」


 月村はポケットに入れたままの俺の手を引っ張った。辺りには沢山人目があるのだが、今はそんなものは全く気にならなかった。自然と再び高鳴る胸。そんな俺に全く気づかず、月村は俺の手を引きながら屋上へと向かっている。胸が高鳴る訳に気づいた俺は少し苦笑し、そして思う。もう少し、せめて屋上に行くまではこのままで。










 屋上に到着すると、辺りには幾つか固まって昼食をとっているグループを確認できた。その中に俺たちのグループを探していると、先に向こうが見つけたらしく赤星が手を挙げて場所を教えてくれた。月村と俺は顔を一度あわせ頷くと、赤星たちのいる場所に向かった。

 見ると、安田、赤星、美由希、神咲さん、レン、晶の順に円を描くように腰かけていた。
 俺と月村は安田と晶の間に腰をかけた。


「高町も月村も、パン買えたか?」

「あぁ、なんとかな」

「せやったらええねんよ。いやな、さっきまでパン買えへんかったどうする? 言うててな。高町だけやったらまだしも、それに付きおうた月村まで買えへんかったら可哀想やろう、てな」


 少しおどけた声で安田がそう言った。確かに納得はするが、何ともいえない気分なのも確かだ。買ってきたコロッケパンを口に入れながらそんな事を考える。


「稔先輩も師匠と同じように授業中寝てたんでしょう?」

「あぁ、せやな。確かにワシも寝とったけどやな、ワシみたいな居眠りのプロとなると、授業が終わったかどうかは体が覚えとんねん。せやから昼休みと同時に、パッと起きれる訳や」


 どうやら既に紹介は済んでいるらしく、安田は皆と打ち解けているようだ。その事実に少し複雑な気分にはなるものの、うれしいことは確かだ。少し、パンがのどにつかえたのでコーンポタージュで流し込む。冷えたコーンポタージュというのは何とも……


「でもあれですよね。安田先輩って何かこう、赤星先輩とは別の意味でカッコいいですね」

「那美さん、もしかして安田先輩に」

「いやいや、ワシも罪つくりやのぉ。こんな可愛い子を落としてまうとはのぉ」

「いやいやいや、そ、そんなんじゃないんですよ。ただ、モテそうだな、と思って。ほ、本当なんですよぉ」


 そんな会話を聞きながら2個目のコロッケパンを口にする。うむ、少し湿っているが悪くない。


「でもアレですなぁ。安田さんの髪の毛って凄い立ってはるじゃないですか。何使てんのかなぁ、って気になりません?」

「あぁ、そうだね。大体想像つくけど、安田くん何使ってるの?」

「あぁ、これはな。ワックス使ってんねん。ハードワックス。これは昔からのポリシーでのぉ」


 安田の一言一言に笑顔を零す月村。その姿に自然と視線が向かう。いやいや、何をしているんだ俺は。そんな事を思いながら最後のカレーパンを口にする。


「安田と月村って何かこう、昔からの友人みたいに凄い仲いいよな」

「ん……そだね。高町くんの時もそうだったけど、何か気が合うんだよね」

「おうって、あかん。ちょっと用事あったの思い出したわ」


 そう言いながらパンを流し込む安田。用事が少し気になった俺は、安田に尋ねてみることにした。


「何か忘れ物か?」

「いや、ちゃうねんけど。知り合いに頼まれたことがあってのぉ。ちょっとすまんが先に失礼させてもらうわ。ほな、皆またな」


 最後のパンを流し込んだ後、安田は立ち上がり一度手を振った後、駆け出していった。


「どんな用事があるんでしょうかねぇ?」

「さぁ?なんだろうね」


 安田の突然の不思議な行動に一同はそろぞれ疑問を口にした。その後は必然的に安田の話になった。出会った時の話、翠屋の時の話。それらを月村が次々に話していく。話してばかりで食事の方は大丈夫なんだろうか。そんなことが気になった俺は付き村の手元を見た。見ると、最初よりパンが減ってるので食事の方は順調なのだろう。


「でもアレですなぁ。お師匠の目を盗んでシュークリーム食べたんはどういう事なんでしょう」

「そうだよね。恭ちゃんの死角を取るなんて大抵の腕じゃないよ。でも、そんな武術の達人には見えなかったし……」

「もしかして師匠が珍しく油断してたりとか」


 失礼なことを言う。少し憮然とし、晶を横目でにらむ。それに気づいた晶は少し慌てた顔をすると、手元の時計を見てわざとらしい声をあげた。


「あ! 俺も予定があるの忘れてた! みずのにノート返さないといけないんだった。という訳で、皆さん。お先失礼します」

「あぁ、せやなぁ。ウチもノート借りたまんまやったんやった。お猿と理由が一緒言うんは、心外ですがウチもお先失礼します」


 晶とレンが並んで屋上から出て行く。もう少し落ち着いて飯を食えないのか。俺は最後の一切れを口にし、コーンポタージュの残りを一気飲みした。


「高町、何でコーンポタージュなんて飲んでるんだ?」


 赤星の少しあきれた声に、色々あってな、と少し意味深な返し方をした。その言葉に月村以外は同情のこもった目で俺を見た。そんな目をされると、少し傷つくわけなのだが。

 そんな時横目で月村を見ると、手元を見ながら疑問のこもった顔をしていた。その姿が気になった俺は尋ねてみることにした。


「月村、どうしたんだ?」

「ん……別に大した事じゃないんだけどね。パンが1個足りないな、と思ってね」

「足りない?」

「うん、3個買ったはずなのに。1個足りないんだよ。私2個しか食べてないし」


 月村はそう言って、辺りを見回す。その姿に赤星が、1個落としたんじゃないのか、と言った。それに、ここに来た時はちゃんと3個あったんだけどな、と月村が疑問に満ちた顔で答えた。

 月村はしばらく探した後、まぁいいか、と言った。どうやら諦めたようだ。


「あぁ、みんな気にしないで。大した事じゃないし」

「ん? そう。良かったら俺の残りの1個あげようか?」

「別にいいよ赤星くん。それに私より赤星くんの方が沢山食べないといけないでしょ」


 それもそうか、と赤星は照れながら言った。その姿に美由希も神咲さんも笑っている。だが、俺は笑う気にはなれなかった。パンが1個足りない? それはあの時と同じ状況ではないのか。もしかしたら――そこまで考えたところで、俺は頭を振った。何を考えているのだ。それにパンが1個無くなった所で大した話ではない。月村が間違えているかもしれないのだ。おそらくそうに違いない。パンを盗った所で、何がどうなると言うのだ。馬鹿馬鹿しい。

 そんな考えに顔を伏せて没頭していると、周りの人たちが瞬く間に屋上から出て行く気配を感じた。何故か、と思っていると突然あることに気がついた。授業が始まってる時間ではないか。急いで戻らねば、と思い顔を上げると、自分の他に誰も屋上にいなかった。他はともかく、赤星まで俺を見捨てて戻ったのか。その事実に少し寂しさを感じたものの、そんな事を考えている場合でない事に気づき、足元のゴミをかき集め近くのゴミ箱に放り込んだ後、急いで教室に戻ることにした。

 屋上から出る前に、一度屋上を振り返った。そこにはすでに誰もおらず、ただ風だけが吹いていた。もうすぐ、ここに来る事も厳しくなる季節が来るのだろう。そんな事を考え、改めて屋上から立ち去った。

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  1. 2005/05/18(水) 03:36:09|
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Blue Moon 第6話

 奴は本当に警戒すべき人間なのか。
 そんな事を最近――いや、昨日辺りからよく考える。奴への警戒を緩めた所で、家族への危害が及べば、それは目も当てられない事となろう。しかし、これが俺の勘違いならば、あいつに対していくら謝罪しても足りない程だ。

 俺自身の思考は奴を警戒すべきだと言っている。
 俺自身の本能は奴は信頼に値する人間だと言っている。

 そんな事を考えながらふと目を開けると、もう夜が明けている事がわかる。訓練の時間までもう一刻となかろう。体を起こすとまるで悪い夢でも見たかのように、体中が汗ばんでいることがわかる。溜息を一つつくと、俺は顔を洗う為に洗面所へと向う事にした。

 障子を開けると、緩やかなかぜが部屋に吹き込んできた。汗ばんだ体がとても涼しく感じられた。俺はその事実に薄く笑うと、最初の目的を思い出し、洗面所へと向かった。

 まぁ、奴への対応はひとまず保留だ。誤解だとしたら目も当てられないし、何より家族がそれを許さないだろう。そんな事を考えながら、俺は蛇口をひねった。
 そこで思考を切り、水をすくい、顔を洗った。その冷たい水が嫌でも気をひきしめさせた。
 大丈夫だ。そう考え、俺は蛇口をゆっくりと締めた。










Blue Moon 第6話










「恭ちゃん、準備できた?」


 美由希が俺の部屋をのぞきこみながら言った。着替え中だとしたらどうするつもりだったのだ。そんな些末な事を考えながら、俺は頷いた。
 じゃあ、学校行こっか、美由希はそういいながら、玄関へと向かった。何ともうれしそうな顔をしながらである。そんなに一緒に登校できることが楽しいのであろうか。俺はそんな考えに一度首を振り、鞄を持つと美由希の待つ玄関へ向かうことにした。

 美由希と再び登校できるようになって、もう半年も経つ。その間色々な事があったのだが、概ね前と変わっていない。今も昔も、美由希は愛すべき妹であり、大切な愛弟子なのだ。この事をこれから先も美由希に伝えるつもりはない。


「恭ちゃん、忘れ物はない?」

「お前こそどうなんだ?」


 俺の言葉に顔を伏せて思案する美由希。すると、突然何かを思い出したかのように顔を上げ、物凄い勢いで家の中へ駆け込んでいく。
 その行動に軽い頭痛を覚えたのは決して気のせいでなかろう。

 そしてしばらくすると、美由希が戻ってきた。何を忘れたのかと問うてみると。


「あ、いや。大した物じゃないよ。ただ、体操服を忘れちゃって……」


 やれやれ、そう言いながら溜息をつき、そのまま美由希をおいて走り出した。そろそろ走らないとまずい時間だからだ。


「あ、ちょっと。恭ちゃん、待ってよ~」


 情けない声を上げながら慌ててついてくる。速度を緩めてやろうとも思ったが、甘やかすのもどうかと思い、そのままの速度を保ち続けた。

 何時もの登校コース――いくつか信号無視をしつつ――を走り続けていると、やがて風校の校舎が見えてきた。ここまで来れば、もう走らなくても間に合うだろうと思い、速度を緩め歩き出した。
 少しして、美由希も追いついてきた。


「はぁはぁ……もう、恭ちゃん。いきなり走るなんて酷いよ」


 美由希は少し息が切れているようだ。その姿に少しうれしく思う。この距離を、あの速度で走り続けて、この程度の息の切れ方だとすると、ちゃんとこれまで訓練をしてきている証拠だ。


「走らないと少しまずい時間だったのでな」

「まぁ、いいけど。ふぅ……」


 美由希は胸に手を当て、息を整えているようだ。


「それよりさ、恭ちゃん?」


 少し顔を覗き込むように話しかけてきた。少し嫌な予感がしたので、顔をしかめると。


「安田さん……だっけ。どんな人なの? 何か昨日の恭ちゃん、あまりその人の事を効かれたくなさそうだったから、今聞いてみるけど」

「それがわかっているのなら、何故聞く」


 当たり前の質問に当たり前の答えで問い返す。すると予想とは違う心配そうな顔をしながら、悩んでるみたいだったから、と美由希は答えた。
 続けて、恭ちゃんはもっと私たちに相談とかするべきだよ、と少し怒ったような口調で俺に説教をしてくる。その言葉に少しうれしくもあったが、美由希に優位に立たれたままというのは面白くないので、いつものセリフを言うことにしよう。


「十年早い」

「あう……」


 そんな問答をしていると、後ろから誰かが走ってくる気配を感じる。後ろを振り返ると、特徴のある髪型をした男が走ってくる。この学校では珍しく、つんつんと逆立った黒髪で、昨日はしていなかった派手なピアスをつけた男――安田だ。

 安田はこちらに気づいたらしく、鞄を持っていない方の手を振りながら近づいてくる。お互いの顔がちゃんと確認できる距離までくると、少し驚いたような顔をしたものの、そのまま普通に話せる距離まで来た所で立ち止まった。


「よう、高町。まいどまいど」


 安田のまるでTVドラマに出てくるような八百屋の主人のような挨拶に、少し苦笑しながら頷き返した。すると、安田はにやにやした顔になると、俺と美由希を見比べて。



「おいおい、高町さん。女連れで登校ですか? こら、かなんなぁ……」


 安田は頭を押さえながら、大げさな反応を示す。どうやら、かなりの誤解をしているようだ。少し溜息をつきながら横を見ると、美由希が少し顔を伏せていた。一人で勝手に盛り上がっている安田を無視し、美由希の顔を覗き込むようにして見た。すると、美由希の顔が少し紅くなっていた。それも、覗き込んでいる俺の姿に気がつかない程に。

 やれやれ、考え物だな。どうして俺の周りには、こういう事に無頓着な奴らばかりなのだろうか。そんな事を考えていると、そんな場合でない事を思い出し、未だ一人で盛り上がっている安田の誤解を解く事にした。


「何を誤解している。そこで固まっているのは、俺の妹だ」

「へ? ん……?」


 安田が固まったままの美由希を見回した。すると、少し首をかしげた後、俺に向き直り。


「そかそか、すまんな」


 そういって素直に頭を下げた。その行為に俺は強い好感を持った。警戒すべき相手なのかも知れぬが、その時は本当にどうでもいい事だと思えた。そんな事を経験したのは本当に久しぶりのことだった。だからこそ、俺は――いや、話を戻そう。そのように朝っぱらから賑やかな問答をしているうちに、俺はとても重要な事に気がついた。


「朝から騒がしいのは結構だが、そろそろ時間だ」


 俺はそういいながら美由希の頭を小突いた後、学校に向かって駆け出した。それと同時に辺りに響く予鈴の音。その音が俺の体を後押しするかのように俺を加速させる。


「おい高町!! 妹さん放っておいてええんかいや!! あぁ、もう。ほら、予鈴なってるで!!」


 そんな安田の声が後ろから聞こえる。察するに美由希はまだ正気に戻っていないようだ。安田が話しかけるのなら、あまり効果がないと思ったが、そんな事は関係ない。俺は遅刻をして、これ以上悪印象を与えるわけにはいかないのだ。今度こそ本当に留年しかねないからだ。

 そのまま走り続けていくと、やがて校門が見えてきた。周りには俺と同じように滑り込みセーフを狙う遅刻常習者たちが幾人かいた。それを横目に留めながら、校門をくぐりぬけた。教室へのアプローチは色々あるが、最短距離で教室を目指す為にグラウンドを大きく横切ることにした。すでに体操服を来た人たち――見たところ下級生の生徒――がたくさん視界に入った。彼らの邪魔になるかもしれぬが、彼らの横を走り抜けていき、校舎にたどり着く事ができた。急いで靴を履き替え、階段を二段飛ばしで駆け上がる。途中人とぶつかりそうにもなったが、何とか授業前に教室にたどり着いた。授業開始一分前だ。その事実に安堵していると、赤星がそんな俺に近づいてきた。


「高町、ギリギリじゃないか。どうしたんだ?」


 男の俺が見てもそう思う、爽やかな笑顔でそう言った。そんな赤星に授業前ギリギリのこの時間に心配をさせても困るので、当たり障りのない返事をすることにした。


「出るのは早かったのだが、途中色々なアクシデントがあってな、気にするな……」

「そ、そうか……」


 俺の言葉に何か感じるものがあったのか、赤星はそう言うとそれ以上何も言ってこなかった。世間で言う友達付き合いというものが俺たちの間にはあまり存在していないが、こういった関係というのも悪くないと思うし、何より気に入っているのだ。


「おっと、それじゃ授業始まるからまた後でな」


 赤星の言葉に俺は一言頷いた。赤星はそれを確認してから自分の席へと向かった。俺も自分の席に向かうことにした。そして着くと同時に、本鈴の音が校舎一体に鳴り響いた。

 さて、今日も一日が始まるぞ、そう思いながら窓の外に顔を向けると、そこには青く広がる空と白く漂う雲があった。そしてそれは今も昔も変わらぬ世界の摂理。どうか、今日も変わらぬ一日となれ――俺は目を閉じ、変わらぬ平和を思い描いた。

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  1. 2005/05/18(水) 03:35:30|
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Blue Moon 第5話

 その時、確実に俺は安田のことを警戒していたであろう。
 そしてこうも考えた。このまま付き合っていけば、いずれ家族に危害が及ぶのでないか、と。

 子供の頃から剣を振り続け、今の自分の腕にはそれなりの自信もある。自分の両手に収まる程の人たちを守る事のできる力があると信じている。
 父が死んだあの時から、できる限りの速さで強くなり、家族を守れるだけの力を手に入れようとした。だからこそ、俺は安田を警戒する義務があった。

 その時、俺は安田の動きを捉えることができなかった。しかし今思えば、家族を守る、という理由だけで彼を警戒した訳ではなかった。
 正直に言おう。――自分が許せなかったのだ。











Blue Moon 第5話










「じゃあね、高町くん、安田くん。また明日♪」


 ほなな、と安田は月村に向かって笑顔で挨拶を返した。同じように俺も挨拶を返した。
 辺りはすでに夕暮れ。暑さの残る夕暮れは去り、今は肌寒ささえ感じるほどだ。そして月村に向けた手をポケットの中に入れ、俺は安田の姿を観察した。

 おそらく175前後であろうか、高すぎもなく決して低くもない背丈に加え、それが一般人ならば中々と評される体つきは見事なものだ。しかし、それだけだ。これだけでは俺の目を盗むほどの動きを実現できる訳がない。
 月村の姿が見える内はやめるつもりがないのか、安田は手を振り続けている。その姿を見とめ、俺は今しばらく思考の淵に沈むことにした。



 先ほどの出来事を思い出す。翠屋での出来事がビデオの早送りのように流れていく。しかし、シュークリームは俺の記憶の中では常に皿の上に在った。そして月村の言葉と共に消え行くシュークリーム。
 そもそも月村に言われるまでシュークリームがなくなった事に気がついていなかったのだ。こうやって思い出したところで、安田がどのようにシュークリームを消し去ったのかわかる訳がない。



 そこまで考えた時だった。


「高町はこれからどないする? 俺はこのまま帰ろう思てるけど」


 安田は振り続けていた手を思い出したかのように横にし、そこにある腕時計を見ながら言った。
 その言葉に対して――特に用事もないしな、と当たり障りのない言葉を選んで口にする。今日はとてもこれ以上、安田と行動する気が起きなかったのだ。


「そか。ほんじゃ、また明日やな」


 安田はそう言うと、足元に置いていた鞄を肩にかけると、そのまま俺の家とは逆方向に歩いていった。俺はその後姿を見て、呼び止めようとしたが、先ほどの考えが頭に浮かんだせいで一瞬そのタイミングを逃した。

 結局、俺は安田を呼び止めることもなく、そのまま踵を返した。空を見上げると、そこには幾つもの雲が在り、うっすらと――満ちるには少しばかり足りない――月が浮かんでいる。まるで自分の姿を鏡で見ているかのような、そんな気分にさせてくれる月だった。
 そんな考えに頭を振ると、気を取り直し、少し早歩きで家路についた。何時もより速く歩いて見たい――そんな気分だったのだ。










 家に着くと辺りはもう薄暗く、家々からは明かりが漏れている。それはうちも例外ではなく、それを確認できたところで少し安堵する。そんな自分の行動に少し苦笑し、少し大きめの音を立てて家の中に入った。

 中に入ると、その音を聞きつけたのか、我が妹――高町なのはが少し走りながらこちらに向かってきた。


「おにーちゃん、おかえり」


 俺の前まで来たところで立ち止まり、手を横に広げながらなのはは言った。その仕草にかわいいと感じなくも無いが、それを言うのも態度に出すのも恥ずかしいので、今の行動を注意しておくことにした。


「なのは、廊下を走ってはいけない」

「えへへ、ごめんなさい」


 照れながらそう答えるなのはに頷くと、俺は靴を脱ぎキッチンへと向かった。同じくなのはも俺の後をついてくるかのように歩いている。

 そういえば、今日の夕飯の当番は誰だったかな、と思いなのはに問いかけると。
 きょうの当番はレンちゃんだよ、となのはは答えた。その言葉に頷いた時にはもう、キッチンの前まで来ていた。

 俺となのはがキッチンに入ると、俺たちに気がついたレンがこっちを振り返り。


「あ、お師匠お帰りなさいませー」

「あぁ、ただいま。今日はレンが当番なんだな」

「はい、そうです。もう少しでできますんで、ちょっと待っとってください」


 レンはそういうと料理を再開し始めた。その様子を見るに、レンの言う通り後少しでできるようだ。部屋で待つことも考えたが、時間的に中途半端なのでここで待つことにした。


「なのは、もうすぐ晩御飯だから手を洗ってきなさい」

「はーい」


 そう言って手を洗いにいくなのはを見とめたところで俺は何時もの席に座り、夕飯の完成を待った。










「みなさーん、ばんごはんできましたー!!」


 レンのそんな声に、すでに席についている俺となのは以外の皆が次々に集まってくる。そして、最後の美由希が席についた所で夕飯になった。

 最初の内は皆、思い思いの話題で色々話していたがフィアッセの一言で話題が一気に集約することとなった。


「そういえば、恭也。今日来てた恭也のお友達。稔、いい子だね」


 予想はしていたが、フィアッセが安田の話題を持ちかけてきた。フィアッセのその言葉に返答をしようとすると、その前に美由希がフィアッセに話しかけた。


「え、何々? フィアッセ、どういうこと?」

「うん、今日ね。翠屋に忍が見たことのない男の子を連れて来たんだ」

「へぇ、忍さんが師匠や勇兄以外の人と一緒にいるのって珍しいですね」


 物凄い勢いで食べていた手を止めると晶はそう言った。俺はそれを見とめると、もう少し淑やかになって欲しいものだ、などと場違いな感想が頭に浮かんでいた。そして、我が家の家族は安田のことについて盛り上がっていった。


「でしょ? 私もよくは知らないんだけど、何でも今日転校してきたらしいよ」

「へぇ、見た感じどんな感じのお人なんでしょうか?」

「う~ん……恭也と比べると同じくらいの背丈で、恭也よりもハンサムじゃないかな。でも、恭也と比べてかなり身だしなみに気を使ってる子だから、それを差し引いたら恭也よりもモテそうな感じの子だったよ。勇吾までとはいわないけどね」


 ――これは何かの悪夢だろうか、そんなことを考えていると、フィアッセの言葉になのはを除いて、色めき立つ我が家の女性陣。


「それは一度会ってみたいわね。今日はかなり忙しくて恭也を気にかけてる暇なかったから」

「今日見た感じでは恭也も忍もかなり仲よさそうな感じだったから、また会えると思うよ」

「それは楽しみだなぁ……って、恭ちゃん! 一人で部外者面してないで話に入ってきてよ」


 美由希の言葉に口まで運んでいた箸を下ろすと、どうしようか、と少し思案する。安田が油断ならない相手だと教えるべきか。しかし、言ったところで皆が信用してくれるのだろうか。特にフィアッセは安田のことを実際に見て、すっかり信用してしまっている。これでは俺の言葉を信用してもらうのは、まず不可能であろう。

 仮に信じてもらえたとしても、その結果どうなる。皆が不安がるだけだ。そう思った俺は、変に警戒を与えるような言葉を言わず、無難な当たり障りのない安田の情報を教えることにした。


「ん……そうだな、安田は今日うちのクラスに転校してきた男でな。聞くところによると、大阪生まれの大阪育ちらしい」

「という事は、うちと同じ関西弁なんでしょうか?」

「そうだな。フィアッセも聞いたかもしれんが、完全な関西弁だ。案外、レンと気が合うかもしれん」

「それは楽しみですー」


 レンの頭の中では、既に俺が安田をつれてくるものとばかり思っている。それは何とも勘弁して欲しいところなのだが、この家族の様子を見る限り、それは回避できないモノだろう。そんな嫌な考えを拭うように、俺は茶を口に運んだ。


「それで恭也の目から見て、どんな感じの子なのよ」


 かーさんが今一番聞いて欲しくないことを口にした。先ほど考えたように変に警戒させても意味がないので、手元の酢豚を口にすると、素直にその質問に答えることにした。


「そうだな。中々に面白いヤツだ。大阪人と言うのは皆ああなのか、と勘違いしそうになる程にオーラをかもし出している。言ってしまえば、にぎやかなヤツだ。だが、それが悪いこと思えないのは安田の人徳であろう」

「へぇ、恭也がそこまで言うなんてね。よっぽどその子のことを気に入ったのね」


 ――そうなのだろうか、かーさんの言葉にご飯を食べるのも忘れ、少し考えに耽る。実際あの出来事の前では、俺は完全に安田のことを信用し、そしてその人柄も気に入っていた。それは曲げることのできない事実。

 だが、あの出来事。あの出来事の後では俺は安田を完全に警戒していたはずだ。だが、何故かーさんに対して、ああ素直に答えることができたのだろうか……

 少し自分の言葉に苦笑を覚えると、俺は残りのご飯を片そうと思い、一気にかきこんだ。そんな俺の姿を見て、少し微笑んだレンは俺の茶碗におかわりを盛ってくれた。そして、俺がご飯に集中しているのを見た皆は、再び思い思いの話題に華を咲かせることとなった。

 安田を完全に信用する訳ではないが、皆の様子を見てもう少しだけ信用してもいいのだろう、と俺は考えた。今日の夕飯は安田に対するこれからの態度について、少し考えさせられた時間だった。皆にとってはさして重要なことでもなかろう。

 俺にとっても、先ほどの出来事があったからこそこうなった、という結果になることもおそらくはないであろう。それはつまり、普段3杯のご飯を食べていたところを2杯にした。ただそれだけの、些末な出来事だったのだ。

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  1. 2005/05/18(水) 03:34:48|
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Blue Moon 第4話

「それにしても、安田くんって、ほんっとにおもしろいね」


 にこやかにいい、月村はシュークリームを頬張った。
 先ほど、安田の昔のバイトの話を聞かされ本当に息ができなくなるくらい笑い続けていた月村であったが、フィアッセに注意された事もあってか、ようやく落ち着いて話せるようになったらしい。
 俺は笑うというよりも、その時は「よく次々とあのような面白い話ができるものだ」、と終始関心させられた。
 安田の3分の1程度の社交性がこの俺にあれば、このようなつまらない剣一筋な人間にならなかったのだろう、と。

 後に、この安田の社交性が災いして、ちょっとした騒動になってしまう。だが俺は安田の人柄が嫌いではなかったし、むしろ好きであった。だからこそ、少しでもあの時安田を疑ってしまった自分がとても腹立たしかった。
 あの時、自分だけでも信じてあげるべきであったのだ。そうすればあんな事も起こらなかったのだから。










Blue Moon 第4話










「まぁ、大阪人やしな。でも、これくらいは当たり前やで。ワシよりおもろい人間はなんぼでもおるし」

「ほんとにぃ?」


 月村が悪戯っぽい目をしながら問い返す。


「ほんまやでほんま。それにワシはどっちかっつうたら突っ込みやしな」

「へぇ、そうなんだ。じゃあじゃあ、漫才みたいな感じの?『なんでやねんっ!』みたいな?」


 月村が手の甲で俺の肩を叩きながらそう言った。
 しかし何で俺なんだ?


「せやなぁ~、そんなあからさまな突っ込みはあんま使わへんなぁ……手ぇ使わずに言う時はあるけどな」

「でも、手を使った方が突っ込みやすいって時もあるよね」


 再び月村が手の甲で俺の肩を叩いた。
 ――何か悪いことでもしたのだろうか。


「あぁ、当然手ぇ使う時もあるで。でもワシは大体手で頭叩く突っ込みやな。例えば……」


 安田が突然俺の頭を目掛けて右手を振り下ろした。突然ではあったが、何時もの美由希や晶の不意打ちに比べれば、軽く避けれる速度だ。
安田の手が当たる直前に少し頭をずらし、それを回避した。


「ありゃ?おっかしいのぉ。向こうじゃ、この突っ込み避けられたこと無かってんけどなぁ」


 不思議そうな顔をしながら、そう言った。月村を見ると、少し苦笑がちな顔でこちらを見ている。
 避けたのはもしかして早計だったか?


「高町くん、ダメだよ。突っ込みは避けないのが礼儀だよ」


 そういうものなのだろうか?
 少し理不尽なものを感じたが、ここでそれを主張しても益はないと思い、素直に謝ることにした。


「すまないな、つい体が反応してしまった」

「いやいや、全然かまへんで。むしろ避けられたのはワシの修行不足やしのぉ」


 うんうん、と安田が頷いた。
 何かを納得したのか、満足気な顔をしながらシュークリームを手にとった。


「ま、こっちに来てええ目標が一つでけた」

「へぇ?聞かなくても大体わかるけど、それは?」


 月村が手にマイクを持っているかのように、安田の口に近づけた。安田はその仕草に乗せられて、


「この安田稔は宣言します!当選した暁には、必ずこの高町に一度は突っ込みを入れてみせます!!」


 拳を握り締めながらそう安田が言った。その姿に月村が口笛を吹きながらエールを送っている。
 幾度も突っ込まれるのは全然構わないのだが、もう少し回りの目を気にしてくれないだろうか。
 そんなことを考えていると少し気分が悪くなってきたのは気のせいであるまい。


「ほな、高町さんちのシュークリームを頂くとしますか」


 そういいながら安田はシュークリームを頬張った。その瞬間、安田の目がカッと見開かれ、物凄い勢いで全部口の中に押し込んだ。
 そんな安田を見ていた月村は、自分のことのようにうれしそうな顔で安田に問いかけた。


「ね、言ってた通りでしょ?」

「あぁ……何や、言葉にできんくらいやのぉ……」


 半ば溜息をもらしながら、安田はそう呟くと、胸に手を置きうれしそうな顔で目を閉じた。まるで、その姿がどこかのドラマのワンシーンのようで、俺はしばらく安田を眺めていた。
 月村もまた、その姿に見とれているようだ。
 無理もない、男の俺から見てもその姿はとても……


「いやいやいや、フィアッセさんこれ凄いっすね!こんなん食べたの初めてです」

「Oh♪Thank you♪ミノル♪」


 机に掛けてたひじがずり落ちそうになった。なんというか感動した俺が馬鹿みたいだ。
 月村もそう感じているのか、少し赤い顔で苦笑している。


「ん?どないしたんやお前ら」

「はは……いや、気にするな」

「そうか?」


 不思議そうな顔でそう安田が答える。



 それからしばらく俺たちは安田の昔の話でしばらく盛り上がった。どこまでネタがあるのか、安田の話はとても面白く、話が止まる気配がなかった。特に、昔の恋の話になると、月村が凄い勢いで話に食いついていった。
 やはり、月村も女の子なのだな、と再認識される場面だった。

 また、話の途中何度か俺の頭を叩こうと安田が手を振り下ろしてきたが、すべて回避してきた。
 そんな感じで、話が盛り上がってた時に、突然月村が何かに気づいたような顔をし、俺に話しかけてきた。


「あれ、そういえば高町くん。甘いもの苦手とか言ってなかったっけ?」

「ん?そうだな。それがどうかしたか?」

「へぇ、やっぱそうなんか。雰囲気的に甘いもん好きやないなぁ、って思てたけど」


 安田が納得したかのように言った。それに対し、俺は頷いてみせた。
 その時、月村から衝撃的な言葉を身構える暇もなく、聞かされることになった。


「ちょっと狙ってたのになぁ、高町くんの分のシュークリーム。食べちゃうとは思わなかったよ」


 ――何?
 月村の言葉にはっとして、手元の皿を見てみた。
 するとそこにはシュークリームの影も形もなく、ただ残された生地の屑が散らばっているだけだった。


「――!?」


 呆然とする俺の姿を見て、月村が不思議そうな顔で声をかけてきた。


「何?どしたの、高町くん」

「い、いや……」



 何故だ?何故ここにあるべきはずのモノがない。俺はフィアッセが運んできてから一切手をつけていない。ならばここにシュークリームがなければいけないのだ。

 しかし、事実この場所にその姿はない。という事は、俺以外の誰かが手をつけたのか?
 それこそ否。
 それはつまり、この俺の目を盗んでシュークリームを手に取ったという事だ。
 そんなことは有り得ない。有り得ていいはずがない。
 だが、そう考えないとシュークリームがなくなった事に対して説明がつかないではないか。

 とすると誰がこれを実行したのか。この俺の目をかいくぐり、どんなつわものがこのシュークリームを手に取ったのか。
 この場にいる人間は、俺を除くと二人。月村と安田だ。

 まずは月村。
 彼女がこの俺の目をかいくぐり、シュークリームを手に取る――それはないだろう。二学期まで、わずか数ヶ月の付き合いではあるが月村のことはよくわかっている。
 美由希ですらこの俺の目を盗むことができないのだ。月村にできるはずがない。

 という事は安田か。
 それも否。
 安田の何度か見せたあの手の振り下ろし方では、この俺の死角を取ることは不可能と言っていいだろう。
 では、一体誰が……



「おーい、高町くん?聞いてる?」

「ん?あぁ、すまん。考え事をしていた」


 月村の言葉で正気に戻ると俺はそう答えた。


「それは見てればわかるよ。で、久々に食べたお母さんのシュークリームの味は?」

「食べていない」

「……え?」


 俺の返答が予想外のモノであったのか、月村が目を丸くしている。


「食べてない、と言ったのだ」

「食べてないって……あ!この忍ちゃんを疑ってるでしょ。それはレディに対して失礼だよ」


 確かにつまみ食いしたいくらいおいしいけどさ、と赤い顔で月村は呟いた。


「大丈夫だ。月村は始めから疑っていない」

「さっすが高町くん。わかってるね。でも、ということは?」


 月村が疑わしそうな目を安田に向ける。
 その視線を感じてあたりを見回してから俺に向き直ると、いきなり頭を下げた。


「すまん!この通りや」

「話が見えないのだが」


 そう答えると、安田は頭を下げながら話を続けた。


「いやな、あんまりおいしかったもんでな。お前に何度も突っ込もうとしとったやろ?
そん時に隙見て、お前の分のシュークリームつまみ食いしてん。すまん!」

「ダメだよ、安田くん。つまみ食いなんてしちゃ」


 安田の言葉に月村が少し真面目な顔で答えた。そしてすぐに笑顔になって、こう続けた。


「でも、ちゃんと白状したことは評価したげるよ。その気持ちは私もわからないでもないからね♪」

「せやろ!ほんま、えらいうまかってん、あれ!」

「でしょでしょ。わかるわかる!」











 何故だ…?
 何故この俺の隙を突くことができた?
 確かに、少し気は緩んでいたとは思うが、そこまでの隙はなかったはずだ。この俺から隙をついてシュークリームをつまみ食いをする……










 安田という男……何者だ。

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Blue Moon 第3話

「いらっしゃいませ~って恭也。どうしたの?」


 店に入ると、我が翠屋のチーフウェイトレス―――フィアッセが俺に話しかけてきた。


「あぁ、今日はかーさんに頼まれてな。手伝いに来たんだ」

「ありがと~♪ん、それじゃ着替えてフロアお願いできるかな」

「ん、了解した」


 裏に入ると、俺の姿に気づいたかーさんが話しかけてきた。


「あ、恭也ー」

「あぁ、今から着替えて、すぐフロア入るから」

「ありがと~、これで少し楽になるわ。頼りにしてるわよ」

「ん、任された」


 着替えてすぐフロアに戻ると、先ほどよりも更に客が増えてきた。下校中の学生たちの集まるピーク時がくる頃だろう。
 俺は少し気合を入れると、今入ってきた客相手に接客を始めた。










Blue Moon 第3話










 しばらく、フロアの仕事に専念していると、ピークが過ぎたのか、客の数がまばらになってきた。
 そろそろ上がろうか、と思っているところに客がやってきた。


「いらっしゃいませ……っと、月村か。それに安田も」

「ダメだよ、高町くん。喫茶店のウェイターなら笑顔の一つも出さないと」

「まぁまぁ、高町も精一杯頑張ってんねんからええやろ」

「安田くんは甘いなぁ~。友人たるもの、もう少し厳しくいかないとダメだよ」


 ふと気がついた。
 教室での月村のあの曖昧な返事は再び会う事がわかっていた為の言葉だという事に。
予め言っておいてくれればいいものを――まぁ、その辺りが月村らしいといえばらしいのだが。


「すまないな。じゃあ、二人とも。窓際のあの席でいいか」

「うん、いいよ」

「すまんのぉ。忙しいのに何や邪魔したみたいな感じで」

「いや、構わん。オーダーは、どうする?」

「とりあえず私はアイスティーで」

「せやのぉ、レーコもええけど……気分的にホットって気分やから、ホットお願い」

「ん、了解した」


 聞きなれない言葉を耳にしたが、気にしない事にして二人のオーダーを入れに戻った。するとそこにフィアッセいて、彼女が言うにはそろそろ休憩しろとの店長からのお達しらしい。


「いいのか?確かに客は減ってきたが」

「いいのいいの。丁度忍も来たんだから、ゆっくりしたらどう?」

「そうだな、じゃあすまないが。二人のオーダーと俺の分のアイスティーをよろしく」

「りょーかい♪」


 エプロンを取って、月村のいる席に向かった。すると月村より先に安田が俺の姿に気がついた。


「お、高町休憩なんか?」

「あぁ、母から言われてな。仕方なく休憩を取ったところだ」

「お疲れ、高町君。しかし、桃子さん流石」


 何が流石なのかはわからんが、月村が納得してるのならそれはそれでいいだろう。
 俺は聞き流すことにした。


「しかし、家が自営業やと大変やな」

「いや、そうでもない。バイトさんも結構いるし、今日はたまたま数が少なかっただけだ」

「そなんだ。でも、ここのウェイトレスって憧れるなー。私もここでバイトしてみようかな」

「忍なら、何時でも歓迎だよ♪」

「あ、フィアッセさん」


 話し込んでいると、そこにフィアッセがオーダーを持ってやってきた。


「多分、桃子もそういうと思うよ」

「そっかー、まじめに考えて見ようかな」


 月村が遠い目をしたところで、フィアッセがオーダーをそろぞれに渡した。


「はい、恭也」

「ん、すまない」

「はい、忍」

「あ、あぁ、ありがとうございます」

「はい、どうぞ」

「あ、おおきにッス」


 オーダーを全員に手渡したところで、フィアッセが俺に話しかけてきた。


「で、この子は恭也たちの新しいお友達?」

「あぁ、今日転校してきた安田だ」

「へぇ…安田くん?」

「あ、はいッス」

「下の名前は?」

「み、稔です。安田……稔」


 珍しく安田が慌てながらフィアッセに自己紹介をしている。それに気づいた月村の目が怪しく光った。


「へぇ、そうなんだ♪」

「おい、月村。何勘違いしてんねん。今のは外人さんやったから、ちょっと慌てただけや!」

「はいはい」

「おっまえ、全く信じてへんやろ~!」

「ふふふ♪」


 二人の会話を聞いて何時ものやさしい笑顔になるフィアッセ。


「ふふ♪忍も稔も仲良しさんだ♪」

「フィ、フィアッセさん!違いますよ!」

「そですよ、俺はともかく月村に悪いッスよ」

「ふふ♪ごめんね、忍♪じゃ、これお詫びの印と言うことで」


 フィアッセはそういうと、シュークリームを三つ取り出し、俺らの前に一つずつ置いた


「フィアッセさん、いいんですか?」

「いいのいいの。桃子から頼まれたヤツだから。じゃ、ゆっくりしてってね♪」


 再び優しい顔をして、フィアッセが戻っていった。


「じゃあ、遠慮なく頂こうかな」

「それはいいんだが……俺は甘いモノは苦手だというのに」

「恭也の分はあたしが食べたげるよ」

「すまん」


 嬉しそうな顔をしながら月村がシュークリームを食べている。
 そんな時、安田がフィアッセの働く姿を見ながらこう言った。


「でもなぁ。やっぱり大変やで、接客業は」

「そうなの?」

「あぁ、俺も昔ファミレスでバイトしてたから知ってんねんけどな」

「へぇ、どんな感じだったの?」

「せやなぁ……」

「うんうん」

「丁度1年くらい前のことやねんけどな……」










 そん時は丁度夏の厳しい頃やったなぁ。ワシは主にキッチン担当やってんけどな。中華専門のファミレスだけあって、キッチン内の気温が常時40度くらいあってんやんか。そん時がほんま凄かった。


「炒飯2、特製ラーメン3、餃子3!」

「はいはい、了解了解」


 すっごい暑くてな。いや、むしろ熱いやな。やっぱ倒れる人間もたくさんおった訳や。キッチンワシ一人と店長がやってて、フロアが二人やってん。


「店長!ラーメン3お願いッス。俺、炒飯餃子やりますんで」

「了解!」


 な?凄いやろ?
 炒飯2人前と餃子3人前を一人でやっててんで?ほんまきつかった。


「安田さ~ん!」

「ん?オーダーか?」

「違いますよ、もう一人倒れました!」

「ほんまかいな!もう店長入れて3人しかおらへんやんけ」


 3人しかおらんってのはな、現在のバイトの全部の人数や。今日だけやないで?凄いやろこの状況。
 そしてその翌日や、一番凄いのは。


「おはようございます、店長」

「あぁ、おはよう」

「アレ?あいつまだ来てないんすか?」

「あぁ、昨日の帰り倒れたらしい。それで今入院中」

「はぁ?じゃあ、今日一日二人でまわさないといけないんスか?」

「そういう事だね」

「なんで、別の店からヘルプ呼ばないんすか!」

「呼べるもんならすでに呼んでるよ。この時期どこもいっぱいいっぱいでねぇ……」


 ほんま、担当もクソもない。作って持っていって、作って持っていって。愛想なんて振りまいてる余裕もなかったわ。
 それでな、ランチタイムん時やったな。オーダーを持っていった帰りや。
 キッチン戻ってきたら……


「次々次々、ん?うを!店長!」

「オーダーお願いしまーす!店長お願いします店長!!」










「……てな感じや。ちゃんと、その後一人でディナータイムも乗り切ったからのぉ、我ながら凄い思たわ」

「そ、それは大変だったな……」

「後な、こんな話もあんで」










「この炒飯作ったん、どこの誰やねん!髪の毛入っとるやないか。作った奴呼んでこいや、こら!」


 まぁ、こんな感じにな。大阪やったら、おっさんがすぐキレよんねん、これが。そん時、炒飯担当ワシやったからワシが呼び出されてん。
 そしたら……


「なんや、お前か!この炒飯作っ……!」


 そしたらワシ見て絶句しくさってのぉ。なんでか教えたろか?ワシ、そん時坊主やってん、坊主。おっさん、あせってのぉ。


「如何しましたでしょうか?」

「あ……ん……え、お、お前なぁ!こん中髪の毛入っとったぞ!どうすんねんこれ!」

「はぁ……」










「どや」

「わはははは!や、安田くんおなか痛い……あは、あははは!」


 月村がお腹を抱えて笑い転げている。


「月村……それ以上は安田に失礼だぞ」

「だって、だって」

「いや、ええねん高町。むしろ、笑ってもらわんと困るわ。その為に言うてんから」

「そ、そうか」

「あはははは!!」










 当然、その後フィアッセから怒られた訳だが、それはまた別の話という事で……


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  1. 2005/05/18(水) 03:29:52|
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Blue Moon 第2話

「高町!いい加減起きろ、昼飯食えなくなるぞ」

「……ん」


 体がゆらゆら揺れているので目を覚ましてみると、赤星が俺の体を揺すっていた。辺りを見渡すと皆騒がしく、弁当を取り出す奴らや教室を飛び出して行く奴らの姿が見える。
どうやら、赤星の言う通り今は昼らしい。


「ん、すまないな」

「別にいいって、それより昼飯どうする?俺は学食行くけど」

「そうだな……俺も付き合おう」


 席から立つと、隣の席に月村がいないことに気づいた。


「そういえば、月村はどうしたんだ?」

「あぁ、安田くんと一緒に先に学食に行ってるぞ」


 安田くん……?はて……誰だったか。首をかしげる俺に、赤星はあきれた声で教えてくれた。


「お前なぁ、今日来た転校生の名前くらい覚えておけよ」

「あぁ……そういえば、そんな名だったな」

「おっと、こんなことしてたら時間が無くなっちゃうな。高町、早く行こうぜ」

「あぁ、そうだな」


 赤星の言葉に頷くと、俺は先に教室の外に行った赤星の後を追うように外に出た。そして、赤星に追いつくとお互い転校生の話をしながら、食堂へと急いだ。










Blue Moon 第2話










 食堂に入ると、そこは何時も通りの騒がしい場所であった。
 そんな中、食堂にやってきた俺たちを見つけた月村が大きな声で呼びかけてきた。


「おーい!高町くん、赤星くんこっちこっち!」


 月村のそんな言葉に俺たちはわかったと手を挙げ、食べ物を調達しに向かった。



 そして、俺はきつねうどん、赤星はカツカレーを手に取り、月村の下へと向かった。


「あ、来た来た」

「あぁ、待たせてしまって済まない」


 そういうと俺は月村の隣に、赤星は俺の向かい側に座った。


「安田くん、どうだい?少しはここに慣れたかな」

「せやな。まぁ、学校なんてどこもおんなじようなもんやし、食堂も相変わらず騒がしいしな」

「それは良かった」

「確か、赤星くん……で良かったよな?」

「ああ、覚えてくれててありがとう。でも、赤星でいいよ」

「そか、ほんなら俺も安田でええで。改めてよろしくな、赤星」

「ああ、こちらこそ」


 赤星が隣の見知らぬ男と親睦を深めている。
 見知らぬ男……?あぁ……例の転校生か。


「高町くん、何?その顔。安田くんの事、忘れてたような顔して」

「いや、今思い出したところだ」


 月村の言葉に少し憮然としながら答えると、赤星が突然俺に話を振って来た。


「で、だ。俺の向かい側にいる一見無愛想な男は、高町恭也。俺の親友だ」

「赤星、そんな恥ずかしい事を真顔で言うな」

「あ?高町くん照れてる♪」


 そんな俺たちのやり取りに先ほどまでの陽気な笑顔とは違う、温和な笑顔をしながら転校生が話しかけてきた。


「高町くんか。俺は安田稔、以後よろしくな」

「あぁ、よろしく。だが、俺もくん付けは性に合わん。呼び捨てで構わないぞ」

「そか、ほんなら俺の方も呼び捨てで頼むわ」

「了解した」


 そんな俺たちのやり取りを見て満足したのか、赤星がカレーを食べ始めた。いかん――俺も食べないと時間がなくなる。
 そう思うと、俺はきつねうどんに手をつけ始めた。


「そういえばさ、安田くんて大阪出身なんだよね」

「ん?せやな、言葉遣い聞いてもわかると思うけど、大阪生まれの大阪育ちやで」

「うん。それだったら、やっぱり大阪のたこ焼きってこっちよりも美味しいのかな?」

「あぁ、こっち来て絶対聞かれると思った質問やな。うん、もちろん桁がちゃうで」

「へぇ、そうなのか。そんな話聞いてると一度行って見たい気もするな」

「だよね。私も一度行って見ようかな」


 そんな二人の言葉に満足したような顔をしながら安田が言う。


「そか、そん時は色々案内したるわ。それと、たこ焼きより上手い大阪人にしかわからない名物ってもんもあるで」

「え?そんなのもあるの?」

「あぁ、いか焼きっちゅうねんけどな。大阪駅前の阪○デパートの地下に売ってるいか焼きは絶品やで」

「いか焼きって言うと……あの、屋台でよく見るアレか?」

「あぁ、ちゃうちゃう。大阪の屋台やったらあるけど、こっちの屋台やったら多分それはいかの姿焼きやな」

「どこが違うの?」

「全然ちゃうで、大阪で言ういか焼きっちゅうのは小麦粉と卵を使った生地にいかを挟むっちゅうんやけど、よくわからんやろな」

「ふーん、でも一度は食べて見たいよな」

「だよねだよね」

「いつでもワシが案内したるで」


 そんな会話を端から聞いていたら、余計におなかがすいて箸が進むというものだ。あっという間にうどんを平らげた俺は食後の運動もかねて散歩に行くことにした。


「ご馳走様」

「うお、高町相変わらず早いな」

「食事には時間をかけない主義だ」

「前にも聞いたよ。で、どこ行くんだ?」

「食後の運動もかねて、ちょっと散歩してくる。お前たちはゆっくりしてくれ。安田もな」

「おお、サンクス」


 安田の返答を確認した後、俺は食器を戻し、食堂の外へ出て行った。気配から察するに俺が去った後も会話を続けているようだ。



 しばらく散歩を続けていると、廊下の向こう側に見慣れた人影を確認できた。
 晶だ。
 その晶は急いでいるのか走りながらこっちに近づいてくると、俺を確認できたらしく笑顔でこちらに向かってくる。


「師匠!」

「晶か、どうした?」

「えっとですね、伝言です。今朝桃子さんに聞いたんですけど、今日バイトの人が少ないらしいんですよ。
だから、学校が終わったら手伝いにきてくれって言ってました」

「そうか、了解した。俺がヘルプに入るから、お前はそんなに急いで帰らなくてもいいぞ」

「はい、わかりました。では、俺は飯がまだなので食堂に行ってきます」

「あぁ、それと。廊下は走らないこと」

「はぁい」


 晶がこの場を去ると、俺は予鈴が鳴るまで散歩を続けた。



 教室に戻ると、既に月村たちは戻ってきていたみたいだった。席についた所で、月村が俺に話しかけてきた。


「おかえり」

「あぁ、ただいま」

「ねぇ、高町くん。放課後ちょっと暇かな?」

「ん?どうしてだ?」

「うん。久しぶりに高町くんとゲーセンでも行きたいな、と思ってね」

「そうか。済まないが今日は勘弁してくれないか」

「あ……そうなんだ。ごめんね。」

「何を勘違いしている。今日は母からヘルプに入ってくれと頼まれている」

「え?」

「だから、遊びに行くなら明日以降だと大丈夫だ」

「あ、そうなんだ。うん♪明日行こうね」

「あぁ」


 落胆してみせたり、笑顔になってみたり忙しい奴だ。そんなことを考えていると、チャイムが鳴り社会の先生が入ってきた。


「うん、じゃあおやすみぃ」

「あぁ」


 相変わらず文系科目は苦手のようだ。そして俺もまぶたが重くなっている。
 ま、お互い様か……










「高町!いい加減起きろ。放課後だぞ!」

「……ん」


 体がゆらゆらと揺れているので目を覚ましてみると、赤星が俺の体を揺すっていた。辺りを見渡すと皆騒がしく、帰宅の用意をする奴らや教室を飛び出して行く奴らの姿が見える。どうやら、赤星の言う通り今は放課後らしい。


 そこまで考えるとふと既知感におそわれた。はて、同じようなことがあっただろうか。そんな事を考えていると、赤星が再び俺に話しかけてきた。


「それじゃ、俺は部活に行くけど。ちゃんと起きろよ?」

「あぁ、すまないな。何時も何時も」

「気にするな。じゃあ、また明日な」

「あぁ、練習頑張って来い」


 そう言うと、赤星はうれしそうに道場へと向かっていった。何かに打ち込めるというものはいい事だ。
 そんなことを考えていると、ふとヘルプの話を思い出し、俺は急いで帰宅の準備をし始めた。そして隣で寝ている月村に呼びかけた。


「月村、放課後だぞ」

「ん……あ、高町くん」

「あぁ、それじゃまた明日な。月村」

「ん」


 月村の曖昧な返事に少し疑問を持ったが、急がないといけない事を思い出し、その考えを脇に置いて帰宅した。

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  1. 2005/05/18(水) 03:23:33|
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Blue Moon 第1話

 それはまだ残暑の残る日に起こった出来事だった。


 最初に言っておくと、二学期のある日の事、3-G内で窃盗事件が起こった。
 そして、連日学園内のいたる所でその事件が起こった。
 その出来事に遺憾ながら、この俺高町恭也、そして二学期早々転校して来た男が巻き込まれる訳ではあるが、なんとも俺にとっては思い出したくない出来事ではある。


 何故思い出したくないのか?


 自分自身、窃盗にあったからか?

 否


 自分自身が犯人であったからか?

 断じて否


 そのような立派な理由がある訳ではない、ただ……































 とても俺にとってみっともない出来事だったからだ。














Blue Moon 第一話












 まだ授業前の賑やかな喧騒の中、自分の席に着いた所で月村忍が話しかけてきた。


「高町くん、おはよう」

「おはよう、月村。なんだか、今日は何時になく騒がしいな」

「うん、私も詳しくは知らないんだけど、何でも転校生が来るらしいよ」

「なるほど、それならばこんなに騒ぐのも無理はなかろう」

「お、流石の高町くんでも、転校生がどんな人が気になるんだ?」

「流石にな、こんな時期に転校してくる理由も気になるしな」

「そだねぇ……でもさ、その転校生、男か女かどっちなんだろうね」

「男でも女でも、俺の睡眠を妨げるようなヤツではない限り、どちらでもいい」

「またまたぁ、本当は可愛い女の子でも期待してるんじゃないの?」


 突然、月村は意地の悪い目つきになってそう言った。いくら俺が普段枯れているだ爺くさいだの言われているからと言って、健全な高校男児なのだ。確かに、嬉しいという気持ちを否定することはできないが、そのまま認めるのも悔しすぎる。
 少々、事実を婉曲してこう言った。


「ウチにいる者たちで手一杯だ」

「もうっ……相変わらず不健全なんだから」


 酷い言われようである。自業自得な訳ではあるが――そんな話をしているところに、赤星が話しかけてきた。


「おはよう、高町、月村さん」

「おはよう、赤星くん」

「おはよう」

「で、二人とも何の話で盛り上がってたんだ?」

「それがね、今日転校生が来るらしくて、高町くんが『可愛い女の子だったらいいな』って」


 半分想像はしていたがとんでもない事を言うヤツだ――半ば呆然としている俺に、嘘だと気づいた顔をして赤星が話しかけてくる。


「ほう、いい心がけじゃないか高町。お前はそれくらいの方が丁度いい」

「確かに、気になったことは認めるが、そういう事は一切思ってない」


 そう否定する俺になおも月村が突っかかってくる。


「またまたぁ、さっき気になるって言ったじゃない」

「確かに気になると言った事は認めるが、それはどのような人柄か、と気になっただけだ。男でも女でもどちらでもいい」

「まぁまぁ、高町落ち着け。月村さんも冗談で言ってるだけなんだから」

「まったく……」










「でも意外だな、高町がそういう事を気にするなんて」

「そんなに意外か?」

「そうだねぇ、高町くんはそういうのとは無縁な人に見えるからね」

「月村、それはどういう意味だ」


 そんなことを話している所に、チャイムの音が聞こえてきた。


「おっと、じゃあ高町、また後でな」

「うむ」



 各々が自分の席に着き始めた時、一時間目の現国の先生と見慣れぬ男子生徒が入ってきた。見た感じ、身長175前後だろうか、体つきは何かスポーツでもしているのか、中々がっしりとしている。つんつんと立たせている黒い髪が特徴であろうか。


「起立!礼……着席!」


 そんな風にその男子生徒を眺めていると、突然その男と目があった。そして、そいつは一瞬笑顔を向けてきた。
 中々、明るいヤツなのだろうか。


「よし、今日は転校生を紹介するぞ。ほら、挨拶」


 その男子生徒は、先生の言葉に手を上げ、笑顔で答えると大きな声で話し始めた。


「俺は、大阪の学校から転校してきた、安田。安田稔と言います。えっと、字は……」


 そう言いながら、男―――安田は、黒板に自分の字を書き始めた。


「よく間違える人がおるんやけど、俺の名前は実やなしに稔やから、そこんとこよろしく。
それで、呼び名やねんけど、できれば名前で読んでくれるとうれしいな。まぁ、あんまり無理はいわへんけど、ちょっと頭にとめてくれるだけでええねん。
後、趣味やねんけど、趣味はたくさんあって迷うな。
敢えて言うたら、音楽やな、そして読書。ゲームもやるで。
次は、特技やな。特技は向こうのガッコで軽音部に入っててんやんか。そして俺のパートはドラムっちゅう訳で、特技はドラム演奏やな。
3年のこの時期やから今更このガッコの軽音部に入る訳にはいかんけど、文化祭には出よう思てるから、音楽できるヤツはほんま仲良くしたってや。よろしくな。
それで、自己紹介はこれくらいやけど、何か質問ある人はどんどん質問してええで」


 転入生の陽気さに皆呆気に取られていたが、クラスの数人は正気をすぐに取り戻し、転校生への質問を投げかけた。


「安田くんは、どんな曲演奏してたの?」

「せやなぁ、基本的に洋楽のメタル全般やねんけど、基本的に王道メタルやな。
後、スラッシュメタルとかもやってたで。後勘違いされるんやけど、メタルやってるっていうと、デスメタル想像されんねんけど、俺はデスメタル嫌いやねん。せやからデスメタルはやってないで。
でもまぁ、こんなん言うてもわかる人にしかわからへんな。あ、でもJ-Rockとかよくやってたで」

「安田くんの好きなタイプは?今、彼女いるの?」

「あぁ……痛いところ突かれたなぁ。今、彼女おらへんねん。だから募集中。
それでタイプは、カッコいい女性やな。仕事がバリバリできる才女って感じの」


 転校生の言葉にクラス全体が沸き始める。どうやら俺と正反対のタイプらしい。そんなことを思っていると隣の月村が話しかけてきた。


「中々面白い人だね。高町くんとは正反対の意味で友達にしたいタイプかな」

「それはどういう意味だ」


 自分でも思っていた事だが、認めてしまうのも悔しいのでこう反論した。どうやら、今日は月村には勝てない日らしい。
 すると、先生が教科書を手で叩いて話始めた。


「よし、そろそろ授業始めるぞ。安田は窓際の一番後ろの席が開いてるから、そこに座ってくれ」

「わかりました」


 転校生がこちらの方に向かってくる。
 窓際の一番後ろと言うことは……月村の後ろの席か。そして、転校生がすぐ近くまで来た時、月村が彼に話しかけた。


「安田くん、よろしくね。私、月村忍」

「月村さんか、よろしくな」


 転校生はそういうと自分の席につき、授業の用意をし始めた。




 今思えば、この時に安田に話しかけていれば、また別の結果があったのだろうか。だが、時すでに遅し。過去は人の手では変える事ができないのだから。



 だがしかし、転校生が安田みたいな人物だったから後々こう考えさせられたのだろうか――逆に言えば、安田のおかげで今の俺があるという事でもある。
 そう考えると、人生何があるかわからん。
 あわよくば、皆に平等に平和な未来が訪れんことを。

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  1. 2005/05/18(水) 03:15:53|
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Blog設立

 Xbox360から遅れて数日。PS3の仕様も発表されましたね。
 そして各メーカからの参入ソフトも幾つか決定です。魅力あるソフトがある中、一番注目すべきはやはりFFでしょうか。
 個人的にはこれが今日の発表での一番驚いたポイントですね。
 何故かというと、私はこの早い時期にFFの参入ハードの発表はないと思っていました

 FFが発売されると言う決定の元にPS3を売り出していく。
 今日、ゲーム業界がこれほど縮小していますが、未だFFのブランドネームは健在である、と私は考えます。
 そういう意味では、これはSONYにとっては嬉しいことであると思いますが、スクエニにとっては余り上手い戦術ではなかったように感じられます。

 それは何故か。
 一番の問題はSONYの企業としての縮退でしょうか。
 昔からそうでありましたが、SONYは何かと経営が下手でした。過去に例を見るならば、一番の失敗はベータですね。ベータときいて何も思い浮かばない人も珍しくはないかな、と思います。
 つまりは、それほどの失敗なのですから。(笑)
 その他、SONYは色々な分野で競争を繰り返しては負けて続けてきました。勝ったという印象が強いのはウォークマンくらいですね。

 こんなSONYですが、最近になってやっと勝ちましたね。皆さんもご存知の通り、PSですね。PSではライバルSSに勝ちを挙げました。
 この時の勝因はやはりFF7ですね。その他ソフトラインナップもありますが、FF7が一番であったと思います。
 ちなみに私はFF7は嫌いですけどね。(爆)

 その次の勝利はPS2でやってきましたね。これはまぁ、ライバルと言える対抗馬が無かったことも理由ですが、DVD再生機能が一番の売りになったと思います。
 その一番の売りが初期不良であったことも事実ですが。
 そして現在に至ります。

 しかし、ここで問題が一つ生じました。マイクロソフトのゲーム業界参入ですね。例のXboxというヤツです。
 皆さんこのハードはどうでしたか?大抵の人が”外した”、と思っていらっしゃると思います。ですが、事実は全くの逆。マイクロソフトはこれが失敗でなく成功でした。
 ソフトラインナップの面であっても、海外はともかく、日本での販売台数を考えても到底成功したとは言えません。
 それなのに何故成功なのか?
 マイクロソフトの目的は、このXboxでPS2とまでは行かなくても、日本でかなりのシェアを取る。そう言ったものではないからです。

 元々、マイクロソフトはXboxでシェアを取るつもりは全くありませんでした。そりゃ全く売れないよりは売れた方がいい、と言う面もありますが。
 では、何故か?
 それは日本のゲーム業界で知名度を上げる、と言う理由です。そして、知名度をある程度上げた後、協力な売りを用意し、次世代ハードで勝負を挑む。
 これがマイクロソフトの考えたシナリオです。

 そう考えると、なるほど、と思われる方もいらっしゃると思います。
 しかし、思わぬ形で知名度が上がりましたね。例の初期不良の「これは仕様です」発言です。
 これは知名度を上げた上に、評判を落とすと言うやってはならないことをやってしまいました。
 何故そのようなことを言ったのかはわかりませんが、このシナリオはマイクロソフトの予想とは違ったものであったと思います。

 まぁ、ここまでこうして書き綴ってきましたが、結局何が言いたいのかというと。色めがねをかけてニュースを見るな、ということです。
 それが一番難しいんですけどね。


後半へつづく

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  1. 2005/05/17(火) 07:49:10|
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霧城昂

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