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橙と青、そして黒

 月のない夜。
 女はその夜空をもう十分以上見つめ続けている。
 口に咥えている煙草は細長く、その形がこの当たりで売られていないものと言う事を教えてくれていた。
 煙草の煙が激しくうねる。女はその風に気づいていないのか、表情の無い顔で夜空をじっと見つめ続けていた。


「我ながら、らしくない――私も随分と頭が悪くなったものだ」


 女は少し低い声でそう言うと、口にしていた煙草を足元に捨て、それを踏み消した。
 そして、胸ポケットに挟んでいた眼鏡をかけた。


「さてと、誰もいない我が家へ帰るとしましょう」


 すると突然人が変わったかのように口調も仕草も変化させた。
 女はそういうと、ゆっくりと歩き出した。手には少し重そうなバッグを持っていて、城を基調とした服は彼女にとても似合っていた。
 二十代半ばといったその容姿はとても美しく、耳につけている橙色のピアスがそれを際立たせていた。

 彼女の名前は蒼崎橙子。
 近代を生き、長い歴史の中で、二人とない、とまで言われた最高位の魔術師だった。










 彼女が我が家へ着いた頃には既に東の空はうっすらと明かりが見えていた。
 そして、その我が家と呼ばれたモノは、およそ人の住むべき場所ではなかった。
 それは建設途中のビルで、所々では骨組みがむき出しになっていた。

 彼女の帰った時間には人の気配どころか、何か別の生き物の気配すら感じられなかった。ただ、早朝という理由だけではない。ここはそういう場所なのだ。
 何か強い目的が無ければこの場所に来ることさえ叶わない。無論、半壊したビルに何らかの目的があって訪れてくるような酔狂な輩もいるはずもなかった。
 それは自然にそうなった訳ではなく、それが人為的な何かの影響を受けている事は明白であり、それが彼女の仕業だと言う事は言わずともわかる事であろう。

 これで理解できたと思うが、この話は蒼崎橙子が主役だ。
 半永久的に生きる存在となれた彼女にはもはや人と言う形容は相応しくないのだろうが、そんな彼女にも人と言う心は存在する。
 これはそういうお話だ。










橙と青、そして黒











「―――ん」


 目を開けると、その世界は何時もどおりの形をしていた。ただ一つ違う点を挙げるならば、何時もよりもそれが紅く染まっている事であろう。


 ――なるほど


 どうやら私は少し寝坊をしてしまったらしい。
 その事実に少し腹立たしいモノを感じたが、起きたばかりで苛立つ気力もない私はその些末な思考を停止することにした。

 寝る前に枕元に置いてあった――正確には無精しただけなのだが――煙草と愛用のジッポを手探りで探した。無事それを掴み取ると、起きて最初の煙草を吸うことにした。
 体の中に紫煙を送らない事には、今日一日何も始まらない。
 私には、まるでそれが血液のようなものだ、と思わずにはいられなかった。

 私にとってとても心地良い音色――それはまるで原初の産声のような――を奏でると、細長い煙草に日をつけた。
 ゆっくりとそれを吸い、じっくりと体中に充満していくのを確かめてから、ゆっくりとそれを吐き出した。
 そうして私の脳はゆっくりと回り始める。
 この瞬間が今まで生きた中で、最高の刻なのだ。











 脳が使い物になるようになるまで、たっぷり煙草一本分の時間を消費した。
 私はそうなった所でようやく体を起こした。
 身体はもう少し眠らせろ、といっているが、私としてはこれ以上時間を無駄に浪費するつもりはなかった。
 魔術師といっても時間は有限である。無論それが私であろうとも例外ではなく、この世界に生きている以上、それは変えようのない真理――いや、枷なのだ。

 さて、今日の予定は――そうか、最近続いた殺人事件の依頼があったか。
 あまり美味しい話とは言えなかったが、状況が状況なだけに、断ることはできなかったのだ。


 ――私とあろう者が、情けない。


 だからと言って、今のやり方を変えるつもりは無かった。
 金は貯めるべきモノではなく、使うべきモノ。貯めすぎればそれだけ自我を崩壊させてしまう。だから、ある時には一気に使うべきなのだ。

 短くなった煙草を灰皿でもみ消す。そして、机の上に置いてあった眼鏡をかける。


 ――あまり気の乗らない依頼だけれど、頑張りましょう。


 わたしはそう思うと、出かける為に身支度を整えることする。
 今から出かけると帰りは朝方になりそうだけれど、それは仕方ないことね。









 予想通り、帰りは朝方だった。


 ――これも予想通りだったけれど。ホントにつまらない依頼よね。


 朝焼けが目にしみる。眠気のせいか、うまく頭が回っていないようだった。


 ――あぁ、愛しの我が家へご到着。


 背を伸ばしながら自分の工房に足を踏み入れた所だった。
 体内に何か異物が入り込んだ感覚があった。


 ――侵入者!? いや、既に逃げられた後か?


 わたしは眼鏡を取った。
 現在の状況を整理する。だが、うまく頭が回らない為、思考が乗ってこない。


 ――あぁ、これを忘れるなんて私らしくない。


 煙草を取り出し、火をつけた。
 紫煙が私の脳を活性化させる。気だるさも消え、それに合わせるように眠気もどこかに吹き飛んだ。
 そして状況整理をする。その速度は一息で七千回転を突破し、一気に限界値をはじき出した。

 どうやら侵入者は数時間前に逃げたようだ。
 何の目的でここに来たのか。
 入り口付近にあった罠は全て破壊されている。解除ではなく破壊と言う点から、自ずとその侵入者の名前が頭に浮かんだ。
 そんな事をする人物には一人しか心当たりが無かったからだ。
 だが、それが合っているとすると、目的は金だろうか。
 ここにはそんな物は全くないと言うのに。

 中に入ると、先ほどの通り部屋の中は特に荒らされていなかった。
 ではあいつは何の為にここに来たのだろうか。
 そんな事を考えていると、視界の端――机の上にメモ書きのようなものがあることに気がついた。
 私はそれをひったくるようにして手に取り、それを凝視した。
 そこには私の予想通りの名前が記されており、その内容は何とも頭の痛くなるようなモノだった。そしてそれを見ている内に、段々と腹立たしいモノすら感じていた。


「やっほー。ちょいと姉貴の魔眼殺し借りてくわよ。 青子より」


 私はそれを破り捨てた。











 そう。侵入者は私の最悪で最低の愚妹だった。
 あんな奴と血が繋がっていると考えただけで吐き気がする程だ。
 何故そこまで嫌う、と言う質問自体うんざりなのだが、まぁ知らない者の為に一つ小話をしておこう。

 私こと蒼崎橙子は妹である蒼崎青子を嫌っている。
 それを前提とした話だ。










 私たちは魔術師として歴史ある家系、蒼崎家に生まれた。
 今思えば不幸な話なのだが、魔術師として優秀な家系だったのだ。だからこそ、私達の先祖は掘り当ててしまった。
 そして、それは俗に言う一子相伝だった。
 ここで話が見えてきたと思うが、私は選ばれなかったのだ。
 魔術師として優秀な私でなく、あのじじいは魔術師として才能のなかった青子を選んだ。
 それは私には耐え難い屈辱だったのだ。










 あれから数年後、未だに青子は借りた物を返しに来ない。
 まぁ、わざわざ殺されに来るような奴はいないだろうがな。

 私は窓の外に視線を送った。
 そこから見える空は青く、麗らかな日差しがこの世界を照らし続けていた。
 私は愛用の煙草を取り出し、それに火をつけた。


 ――これだけが私の生きているただ一つの理由だな。


 そんな時だった。
 数年前と同じように、異物が体内に入ってくる感覚が走った。

 最初は青子が来たのだと思った。だがそれはすぐさま、否と判断する。
 侵入者からは魔力は感じられず、更には何か私に害を為す生き物の気配も感じられなかった。侵入者はただの人間だったのだ。

 そこで一つ疑問が沸く。


 ――何故、人間がこの場所に来ることができる?


 私の結界は未だ健在だ。解除された形跡もないし、破壊された形跡もない。となると自然にこの場所にやってこれたのか?
 それこそ否。
 この場所に来るには何か明確な目的が必要、ここに来れたという事はそういう事である。では、何の為にここに来たのか。それはこのビル自体に用がある訳でなく、つまりは私に――

 そこまで考えたところだった。
 侵入者の気配が、私の部屋のすぐ外から感じられる。
 鈍い音がし、扉が開かれた。


「あのー、ここは蒼崎橙子先生の工房でしょうか?」


 その侵入者は、全身真っ黒な服を着ていて黒ぶちのメガネをかけた少年、いや青年だった。身の丈はおそらく170弱といったところだろうか。
 私にはその青年のかもし出す雰囲気が何か特別な者に感じられた。


「青年、確かに私は蒼崎橙子だが。一体何のようだ?」

「えっとですね。以前先生の作品を見て、こんな人の所で働きたいな、と思ったんですよ。それで、ここで働かせてもらえたらな、と思って来ちゃいました」


 あっけらかんと笑いながら言う青年の姿に、私は少し戸惑いを感じた。
 最初は彼を追い返そうと思った。しかし、彼と話している内に私は忘れていた人の心と言うモノを思い出す事ができた。
 それは私にとって魔術師にとって堕落と言える事なのであろうが、私は別に悪い気はしなかった。それは頭の悪くなった証拠なのだろうな。


「わかったわかった。採用してやる」

「本当ですか!?」

「あぁ。特に仕事もないところだが、それでも良ければ採用してやる」

「はい、ありがとうございます!」


 深々と頭を下げながらそう言う青年が、私に懐かしさを思わせると同時に、私もまた戻れるのではないか、と言う錯覚さえ与えてくれるようだった。
 だが、すぐに私は思いなおした。
 新人ならともかく、私くらいこの世界に踏み込んだ者がどうして戻ることができるのだ、と。


「そうだ青年。まだ名前を聞いてなかったな」

「あ、そうでしたね。僕の名前は黒桐幹也。色の黒と桐の花の桐と書いて、黒桐です」


 そこが私の人生の何度目かわからぬ分岐点だとわかったのは、もう少し後の話だった。











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  1. 2005/07/17(日) 21:51:36|
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Blue Moon 最終話

 ――なんだ、これは。


 眼前で起こっている状況が上手く把握できない。
 安田が体育をサボって何をやっていたのか、何故か制服のままで壇上の真ん中に立っている。その顔を見ると目線は俺の方を向いていて、その口には薄い笑みを浮かべている。
 その視線をひとまず無視し、周りを見回してみる。すると、そこには体育を終えて帰ろうとしたクラスメートたちが皆一様に壇上の安田へ視線を送っていた。
 そこで再び安田に視線を戻す。すると安田は俺への視線は変えずに何か喋っていた。だが、上手く奴の声が耳に入ってこない。
 今気づいたが、酷く周りが静かだ。誰かの声はおろか、雑音すら耳に入ってこない。


 ―― 一体俺はどうしたと言うんだ。


 今置かれている状況よりも、何故自分の耳が役に立たなくなったのか、が気になった俺はその要因について考えてみる。
 そうなった原因が必ずあるはずだ。一体それは何だろうか。


 ――待てよ、そういえば先程疑問に思った事がなかったか?


 そう思った俺は目を見開き、今見える視界をどこかに注目するではなく、ぼんやりと見つめてみた。すると、何かおかしいところに気づいた。視界にあってはならない物が見えた気がした。


 ――今の違和感は何だ。この視界のどこがおかしい。


 今映っている視界を一つ一つ注意して見てみる事にした。


 首をかしげる男たち。

 安田の方を指さして何かを話している女。

 体育用具室への扉を開いていた赤星の後姿。

 窓から見える木々の群れ。

 こちらを見ながら何かを話している安田。

 安田の足元で縛られ横倒しにされた月村。

 少し古びた生地が目立つ緞帳。


 ――待て、今あってはならぬ物がありはしなかったか?


 それに気づいた時、体内の血液が同時に疾走した。
 同時に世界の色が戻っていき、クラスメートたちのざわめきの声も耳に飛び込んできた。
 猛る心を必死で抑える。すぐさま走りそうになった足を必死に留めた。
 周囲にばれぬように静かに深呼吸を一つし、少し心を落ち着けた。


 ――まずは考えろ、高町恭也。


 そうだ、今は状況を整理すべき時だ。些末なことをしている余裕などないのだから。

 奴は今壇上の中央に立っている。俺との距離はおよそ25――いや30m程はあろうか、どちらにしても長すぎる距離であり、一足でとても踏み込める距離ではなかった。
 そして奴の武装に関しては全くの不明、対して俺は体育の後の為武装は一切無かった。

 つまり、対術のみで力量の不明な敵を戦うことになると言う訳だ。これはかなり絶望的な状況だろう。迂闊に動ける状態じゃない。
 動くとすれば奴に気づかれないようにするしかないが、俺の周りには遮蔽物は一切無し、となれば奴の目に映らない動き――神速――で近寄るしかない。
 しかし、この距離では届かない。完璧な神速であれば話は別なのであろうが、俺程度の神速では到底届く距離ではなかった。

 その絶望的な結末に頬に汗が伝った。背中にもうっすらと汗がにじんでいるのがわかった。何とかこの状況の突破口をないか、再び思考することした。


 ――月村、無事なのだろうか。お前に何かあれば俺は……










Blue Moon 最終話










 月村から視線を安田に戻した。すると、俺の困惑している姿がそんなに嬉しいのか、先程の笑みに比べ一層嘲りの色が濃くなっていた。


 ――そうだ、奴の目的は。


 奴の力量がわからない以上、現段階でこの状況に対応できる策など思いつくはずもなかった。せいぜい奴の決定的な隙を見つけて踏み込むくらいだ。それにこれは俺が絶えず注意を払っておけば問題ない。いずれ見つかるだろう。
 もし見つからなければ、作り出せばいいだけの事。

 まぁ、それに関してはひとまず置いておくことにして、問題は奴の目的だ。
 おそらくは俺の考えた通りなのだろう。この状況が全て指し示している。

 奴は御神を疎ましく思う者、もしくは組織の一味、あるいはその組織に金で雇われた凄腕の諜報部員なのだろう。
 奴の考えた筋書きはこうだ。
 転校生として何食わぬ顔をしてこの学校に潜入。そしてできるだけ俺の近くに寄れるように同じクラス近くの席を取れるように画策。諜報活動についてのマニュアルを知らない俺だが想像はできる。
 おそらくは潜入前からすでに色々調べていたのだろう。特に俺の交友関係は狭い。調べるのは容易だったろう。

 まず直接俺へと近づかずに月村に照準を合わせた。これは俺に不自然な所を見せない為か、それとも他の要因があるのだろう。そうして得意の喋りで月村と仲が良くなったところで、俺に近づく。
 もしかするとそれも考えて俺よりも更に月村に近い席を選んだのだろうか。そうだとすると、何とも感心させられる奴だ。

 そして俺の近くで何食わぬ顔で諜報活動。だがしかしここで一つ問題が生じる。


 ――シュークリームの件だ。


 あれは一体どういう意図があったのか。一見意味はありそうなのだがはっきりとはわからない。
 俺が予想ではおそらくあれは俺の力量を試――と、そこまで考えたところで奴の行動に隙が生まれた。
 月村を無視し、俺に背を向けそのまま歩き出したのだ。


 ――好機ッ!


 世界から色が無くなる。先程から聞こえていたざわめきも完全に消失した。その世界の中で俺はゆっくりと走り出す。
 おそらくは届かないだろうが、それでも問題ない。奴はそれ程のミスを犯したのだ。
 ぬるりとした感触――気にするな、これは気のせいだ――に顔をしかめる。
 視界には未だ俺に背を向けている安田の姿があった。その後姿に段々と色がつき始めていた。


 ――これは行ける!!


 世界に色が戻り、皆のざわめきも耳に届いた。それでも構わず走り続けていると、視界の端にあってはならない姿が映った。
 はじめは特に気も留めていなかったそれは壇の下で月村の下に向かおうとする俺に立ちはだかり、ゆっくりとこちらを向いた。
 そこで俺は走るのをやめるしかなかった。
 何とか踏みとどまると、目の前に立ちはだかる男の姿を確認した。

 そいつは両手に木刀を持ち、それを正眼に構えていた。その姿はまさに威風堂々という事場に相応しく。俺へと向けられた剣気はまさに正道。とても俺には真似のできぬ芸当だった。

 そう、そんな真似ができるのはここに唯一人。
 正道を行きながら邪道を進む俺を認めてくれた唯一無二の親友――赤星の姿だった。


「高町! ここを通りたいか!」


 何時もウチの道場で剣を重ねている時に発せられる以上の迫力で俺に話しかけてくる。
 何故、赤星が俺の邪魔をする。


「――通りたいに決まっている。しかし何故お前が」

「高町! ここを通りたい理由を何だ。答えろ!」


 間髪入れずに赤星はそう切り替えしてきた。


「――――ッ」


 赤星の様子がいつもと違う。それに何故だ。何故俺の邪魔を――安田の味方であるかのような真似をする。


「赤星……そこをどけ。今はお前と話している暇はない」

「いいや、どく訳にはいかないな。しばらく俺との話に付き合え、高町」


 木刀を逆袈裟に振りながら赤星がそう言った。


 ――本当に俺の邪魔をするんだな……赤星。


 俺は八割の決意と二割の後悔をその手に握り締め、それを赤星に突きつけた。


「赤星、俺には時間がないんだ。いくらお前とはいえ、ここは力づくでも通して貰うぞ」

「―――な!?」


 突き出した左手を曲げ、体を半身にして踏み込んだ。
 赤星は突っ込んでこないと油断をしていたのか、素手相手に剣を振るうのをためらったのか防御の姿勢をとった。
 それを見とめた俺は首元目掛けて手刀を放つ。
 円弧を描くかのように放たれたそれは首に当たる訳でもなく、赤星の木刀によって防がれた。


 ――本命は次だ。


 それは手刀の軌跡とはまるで正反対の軌跡を描いた。そしてそれはそのまま赤星の側頭部を薙いだ。
 流れる景色の中、突き出した右手の下に赤星の体が崩れるのを見る事ができた。
 右手の甲に少しの痛みと、心に激しい痛みを伴ったそれは赤星を完全に昏倒させた。
 崩れ落ちた彼の姿を見た時、俺は心から赤星にすまないと思った――だが、後悔ばかりしてられない。

 赤星の脇を通り、俺は壇の前まで辿りついた。月村はもう目の前だ。
 月村は依然目を閉じたまま横たわっていた。


 ――彼女は無事なのだろうか、早く様子が知りたい。


 そんな思いで壇に手をかけたその時、思いがけない声が背後から聞こえてきた。


「た、高町……まだ話は終わってないぞ」


 まさか、という思いで俺は後ろを振り返る。
 そこには俺に打たれた頭を押さえながら、木刀を杖代わりに立つ赤星の姿があった。


「そんなに俺の邪魔がしたいのか……? 何故だ、赤星。月村が心配だと思わないのか?」


 赤星は押さえていた手をどけて杖代わりの木刀を両手で持ち、それを勢い良く振り上げた。そして、再び正眼の構えを取った。
 だがすでに足に来ているらしく、体全体が小刻みに震えていた。


「高町、なんで月村を助けようとする」

「――赤星、一体何を」

「いいから答えてくれ。これは大事な事だから」


 よろけながらも必死で立ち、そう答える赤星の言葉には本当にこの質問は大切なものなのだ、と感じさせる何かがあった。
 ここで初めて俺は赤星の質問を冷静に考える事ができた。


「友達を助けようとするのは当たり前じゃないのか?」

「ちがうだろ、高町。友達だからお前は本気で俺を打ち倒したのか? 友達だからお前はそんなに必死だったのか?」


 友達を助けるのに必死で何が悪い。俺は本当に月村の事を心配したんだ。そしてそれは今も続いている。それは月村が友達だからではないのか?


「ここまで言ってもわからないか! いいか! お前は友達だからあんなに必死だったのか? ちがうだろ! 月村だから必死だったんだろう!!」

「―――ッ!?」


 親友の言葉が胸に響く。その言葉は俺の嫉妬で凍った心を解凍し、俺に大切な事を理解させた。


「そうだ……何で俺は今まで……」


 赤星は苦痛に歪んでいた顔に必死で笑顔を作っていた。


「そ、そうだろう高町。さぁ、お前の言葉で聞かせてくれ」

「――あぁ、俺はどうやら月村の事が」


 様々な思い出が再生を繰り返す。
 短い付き合いながらも、たくさんの出来事があった。それはどれも楽しい出来事であり、こんなに学校生活を楽しめた事は彼女に出会うまでありえない事だった。
 この思いに気づいた時、俺は彼女のことを考え、身を引いた。彼女が幸せになれるのなら、それは俺にとっても幸せであろう、と。
 だが、それは間違いだった。自分自身がこんなに利己的な人間だとは思わなかった。


「月村の事が好きみたいだ」

「よく言った、高町。それでこそ俺の認めた男だ」


 赤星の言葉が少し気恥ずかしい。
 その場の雰囲気とは言え、俺はなんて事を口走ったのだろう。そう思った時だった。


「ほらな? 月村なら絶対いけるって言ったろ?」


 ――何?


「うん、かなり恥ずかしいけど、赤星くんの言う通りだったね。ありがと」

「はは、よせよ。あぁ、立ってるのもしんどいな、座ろう」

「あ、大丈夫? 恭也ったら本気で殴るんだもん。びっくりしちゃったよ」


 ――な、何?


「お二人さん、おめでとう。これで新たなカップル成立やな」

「高町くん、月村さんおめでとー!」

「二人とも幸せにな!」

「ヒューヒュー!」


 ――誰か俺が入れる穴があったら紹介してくれ。










 ――そんな気分だ。




















 放課後の夕日が差し込む教室に集まった。
 俺の目の前では安田と赤星が正座していた。月村はと言うと、俺の左手に纏わりついていた。


「で、お前らの主張を聞いてやろうか?」

「せやなぁ、何と言うかやな。月村が恋のことについて困ってるみたいやったからな? ここは俺らと言うかクラス全員で力を貸してやらんとあかんやろう! みたいなノリになってな」


 酷く頭が痛む気がするのは気のせいではないだろう。


「赤星は何か言う事はあるか?」

「いや……始めは俺も止めたんだぞ? でもあまりに月村が可哀想だったからな、つい」


 俺はどうやら良い友人を持ったらしい。
 これから先どうやってクラスメートたちと顔を合わせたら良いのやら。
 そう思いながらも本気でこいつらを叱れないのは、今の自分が幸せに満ちているからだろうか。
 目に見える危険も解消された今、俺は今まで疑問に思っていた事を聴いてみることにした。


「そういえば、前々から聞こうと思っていた事があったのだが。構わんか?」

「ん? 何や、言うてみ。答えられる事なら答えるぞ」

「いや、お前あの時どうやってシュークリームやパンを取ったんだ? それが今まで気になってた」


 俺の言葉に赤星は何か納得したようか顔をし、安田は思案するかのような仕草をした。


「ん……すまん、答えられへん」

「何故だ? 俺はこんなに恥ずかしい目に合わされたんだぞ? 少しはその見返りがあってもいいんじゃないか?」

「い、いやな。パンの事は知らんがちょっとデリケートな問題やねん」


 目の前まで顔を寄せて睨みをきかせると、安田は少ししどろもどろになってそう答えた。


「――まぁいい。文句は色々あるが、一応礼を言っておこう」

「あぁ、頑張れよ。高町」

「おう、次があったらまた世話したるで」

「――二度はいらん、二度は」











 その後、色々な事を話したが結局安田の謎については一言も奴の口から語られる事はなかった。
 主な内容は今日のことよりも文化祭のことについてが大半だったのも俺たちらしい、と言えばらしいのかもしれない。

 やがて日が落ち、暗くなったところで、お姫様を送っていくように、と二人は言い残し、家に帰っていった。
 そして、俺の傍らには月村の姿があった。


「何かまだ恥ずかしいけど、そろそろ帰ろうか?」

「そ、そうだな。帰ろう」


 二人並んで歩き出す。そこまで送っていこうか、と考えたが、すぐに結論に至った俺は、直接家まで送っていくことにした。


「そうだ、恭也。今日はこれからウチに来てくれる? ちょっと大事な話があるんだ」

「あぁ、元から家まで送っていくつもりだった」


 何時の間にか恭也と呼び名が変わっていたが、そう呼ばれるのも悪くない。むしろ嬉しさすら感じられた。
 こちらを見上げながらそう答える彼女を本当に愛しい、心から彼女を守りたい。この身が燃え尽きようと、彼女を守る為に俺は一生を費やす。
 そんな決意を誰にも聞かれる事もなく、心の中で思った。


「どうしたの? 何かついてる?」

「いや、気にするな」


 そういうと、俺は月村の手を掴み、優しく握り締めた。
 それに気づいた月村は顔を紅くした。
 おそらく俺も同じような顔なのだろう。
 俺はそれを誤魔化すように夜空を見上げる事にした。
 そこには数多の星々と、光り輝く月の姿があった。
 それは何度見ても美しく、そして雄大だった。
 今なら安田の言葉がわかるような、そんな気がした。


 ――青い月は……すぐ傍にあったんだ。










 ここで俺の語る話は終わりだ。
 何とも恥ずかしい話である。本当に忘れたい出来事であり、本当に忘れたくない出来事だった。

 この後、俺は月村――いや、もういいだろう。忍の口から大事な話を聞かされる。
 それは他言無用な重大な話であり、これを見ている貴方たちにもお話する事はできない。
 だが、一つだけ言っておこう。
 俺は人生の伴侶に忍を選んだ。そして、それから長い年月が経った今、この話を告白する決心がついた訳だ。


 ――何故、こんなみっともない話をしたかって?


 答えは簡単、と言いたい所だが、本当の所理由など無かった。敢えて言うとすると、誰かに話してみたかったのかもしれん。何とも人間とは複雑な生き物であろう。
 これまで、そしてこれから先ずっと俺は月村の傍らで彼女を守り続ける。それは己に課した義務であり、約束なのだから。
 青い月は今も、そしてこれからも俺の傍らにあり続けるだろう。

 では、そろそろ皆さんともお別れだ。俺の長い長い話に付き合ってくれて感謝する。
 次は無いとは思うが、その時はまた付き合って欲しい。
 では、また会える日を。










 ――そういえば。




















 ――あの時安田はピアスをしていただろうか。










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  1. 2005/07/13(水) 01:32:22|
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She led to wide-scale bloodshed. -第一部 第6話-

 ザール帝国の都ライオットより西に数十km。
 ここにザール帝国軍の姿があった。その数四千。
 若干の防衛軍を首都に残しつつ、その数を送ることのできる軍事力はまさに圧巻の一言だ。
 その軍を引き連れ、先頭を白馬で進むのはザール帝国軍総大将ロバート=D=シュテッケン団長だ。
 その他、リング12に所属する騎士たちも皆それぞれの隊を率いて進んでいる。

 騎馬にまたがる騎兵隊や騎士たちはともかく、軍の半数以上を占める歩兵たちの顔には疲れが見えた。
 それもそのはずだろう。もう夕暮れなのだ。
 彼らは朝早く帝都を出発し、今この時まで休みはあったものの、ほとんど歩き詰めと来ている。
 疲れない方がおかしいと言うモノだ。

 彼ら一団の中には馬車もたくさん確認する事ができた。
 そのほとんどが物資運搬用の為の物であったが、最も後方を走る馬車には魔術師達が乗っていた。
 多分に漏れず、この物語の主人公レイの姿もそこにあった。
 その姿は戦場というのに何時もの通り奇妙な黒衣を身にまとい、魔術師だというのに杖一つも持っていなかった。
 ただ何時もと違う点が一つ。腰にレイピアの様な剣を下げている点だけだった。










 さて、以前この国の軍事力が世界一と評した。そのことを覚えているだろうか。
 確かにその武力はリング12を筆頭に圧倒的なモノを備えている。それは間違いのない事実だ。
 だが、忘れてはいけない事実がもう一つある。
 それは先の戦い――ルクレツィアの丘の決戦――の時、たった十二人だけで数千人を相手に勝利を収めた。
 これは一見物凄いことに見える。確かにそうだ。事実十二人で数千人相手に勝利を収める等、普通はありえない事。これはとても凄いことだ。
 しかし、ここで一つ忘れてはいけない事がある。
 ザール帝国がウィナー帝国に勝利を収めたのはルクレツィアの丘においてであり、そしてそれまでザール帝国はウィナー帝国相手に劣勢だったのだ。

 ここで皆さんは疑問に思うだろう。
 何故世界最強の軍事力を持つはずのザール帝国が劣勢になるのか。
 答えは簡単だ。


 ――魔術の発展した国ではなかったからだ。


 確かにザールにはアンジェラと言う天才的な魔術師が居た。
 逆に言えばただそれだけだ。
 アンジェラ一人が如何に凄いからといって、ウィナー帝国の魔術部隊に対抗できるという訳ではなかったからだ。
 これ一つとってもリング12の凄さがわかるというものだろう。










 レイは東の空を見つめている。その空は薄暗く、西の空では丁度夕日が沈みかけているところだった。
 その薄暗い空の下に見えるのは数時間前彼らが乗り越えてきた岩山だ。
 岩山は険しく、その様子から現在ではザール帝国西部の最終防衛線として使われている程だ。

 彼女は視線を変えず、少し目を細めた。まるで何かを憂いているかのように。
 それらの景色は彼女にどのような影響を与えたのか。
 いくらこの私でもそれを理解することはできなかった。


 ――たとえ彼女が私に一番近い人間だったとしても。










She led to wide-scale bloodshed. -第一部 第6話-










 やがてザール帝国軍は団長の号令と共にその前進を停止させた。
 どうやら今日はここで野営をするらしい。
 兵達は馬車の中からテントを取り出した。まず会議をする為の大きなテントから作り上げ、そこから少しずつ小さなテントを作りあげていく。
 四半刻程で全てが完成したというのは、かなり早い部類に入るのではないだろうか。
 その頃にはすでに日は落ち、星明りだけが彼らを照らしていた。
 当然そんな状況では会議にならない為、ランプやたいまつで明かりと灯したという事は言うまでも無かった事だろう。

 会議用のテントにリング12及び、火の宮廷魔術師であるアンジェラ、そして水の宮廷魔術師であるレイの姿もそこにあった。
 戦が直前に迫っているせいか、彼らの顔は何時にもまして迫力があった。特に団長、ニックの顔は笑みまでこぼれる程だった。
 それとは逆に、アンジェラの顔には不安が表れており、レイに至っては何時もと変わらぬ表情の欠落した顔をしていた。

 そんな異様な雰囲気の中、皆が団長の一言を待っていた。
 ある者は鬼気とした笑みを張り付かせ、ある者は何時も以上に真剣な顔をしながら、皆その一言を待ち望んでいた。
 皆が一同に団長を見ている。
 しかし当の団長はというと、目を閉じ、ニックと同質の笑みを浮かべながら何かを考えているようだった。
 それは何も知らぬ者が見れば、すぐさま逃げ出したくなるような姿だった。
 その姿を一言で言い表すのなら――戦闘狂と言い表すのが一番しっくり来るだろう。
 一般男性より一回りも二回りも大きな体躯で、見るからに筋骨隆々でとても敵わないと思わせるような体つきをした男が、すぐ近くで鬼気迫る笑みを浮かべているのだ。
 白状してしまえば、私だって何度も見ているはずの彼の姿が怖かったのだ。
 実の所、これは団長が戦争前の最後の軍議で魅せる恒例の行事なのだ。だから、私は今まで何度となく見てきた。団長の初めての実戦からずっとずっと。

 すると突然団長はその笑みを消し、目を開いた。


「諸君、おそらく明日。反乱軍との戦いが再開するだろう。彼奴らも既に我々の動きに気づいているはずだからな」


 少し椅子に深く座り直しながら団長はそう言った。
 その仕草で身にまとう白銀の鎧が軋む音が聞こえてきた。


「ブルー、予想衝突点を割り出す事ができたか?」

「はい、私も団長の考えに賛成です。おそらく彼らは我々の進攻に気がついているはず。そして今頃迎撃準備をしている所でしょう」


 ブルーはそう言いながら、慣れた手つきで目の前にある机に大きな地図を広げた。
 それはザール帝国西部地方の地図だった。


「現在、我々が野営している場所はここ。ライオットより西に百kmの地点です。そして――」


 広大に広がる荒野の東側を指で指した。そして、その指をゆっくりと西に引っ張っていき、ルクレツィアの丘も越え、荒野の最西部――巨大な峡谷への入り口でぴたりと止まった。


「おそらく、兵の絶対数で負けている彼らは真っ向からぶつかる、と言う事はしないでしょう。となれば、ここ。狭く側面を完全に塞がれたこの峡谷では一度にぶつかれる人数も少なくて済みます。となれば小数でも戦うことが可能です」


 たいまつに灯った炎がゆらゆら揺らめく。
 ブルーの予想に数人の騎士は同感だ、と言わんばかりに何度も小さく頭を縦に動かしていた。
 しかし、団長とニックはブルーの意見を聴いて頷くのではなく、少し小さな笑みを浮かべていた。
 まるで、お前の意見は間違っている、と言わんばかりの雰囲気だった。
 ブルーはその顔に全く気づいておらず、自分の予想をまるで信じて裏切らない顔だった。


「ブルー、流石にお前は聡明だな。頭がキレる」

「ありがとうございます」

「だが、私はその意見には反対だ。ニックも同じ感想だと思うが、どうだ? ニック」


 団長に話を振られ、ニックは深々と椅子にもたれていた背を起こした。
 そしてブルーを少し嘲るような目で見た後、団長の方に向き直った。


「そうだな、俺の意見を言わせてもらえれば――ブルーの予想には決定的なミスがある」


 ニックは残った片手で腕があったはずの部分を撫でながらそう言った。


「それは俺達の存在だ」


 ニックの言葉にブルーは目を見開き、団長は感心するかのように頷いた。


「もう言わないでもわかるとは思うが、一応言っておこう。確かに少数の兵で守る為にはそれは常套手段だ。その点だけを言えば間違えてはいない。だがそれは一つ条件がある。それは、両勢力の兵の強さが均等かもしくは自身が勝っていると言う条件だ。つまり、この条件を満たさない以上、その作戦を取ることはできない。如何かな? ブルー殿」

「――確かに、貴方の言う通りです。その点を失念していました」


 ブルーのその言葉を聴くと、満足したのかニックは再び椅子に背を埋めた。


「流石だな、ニック。では貴公の意見も聞こうか。どこで彼奴らは待っていると思う?」

「俺なら入り口ではなく出口に張る。出てきた相手を囲んで挟撃することもできるからな」

「そうだな。付け加えるなら出口手前の峡谷内で襲撃をし、頃合を見てゆっくりと後退する」


 団長とニックはお互いを見つめながら少し薄く笑った。
 流石は次期団長と呼ばれた事のある男だった。
 そうなると美味しくないのがブルーではあるが、彼の性格上自分の過ちから起こった事である為、何も言えずただ悔しがることしかできなかった。
 しばらくブルーは意見することはせず、軍議の行く末をただ見守ることしかできなかった。

 それからしばらく議論が交わされ、明日の作戦も決まり軍議も終わろうか、といった時だった。


「そういえばレイ殿。貴方は明日如何されるつもりかな? できる事なら戦場に慣れぬ身である貴方は最後方に控えて貰いたいのだが」


 軍議の間何も言わず、ただじっと地図を見つめていたレイに団長が話しかけた。
 その言葉を受けて、レイはゆっくりと顔を上げた。
 絹のように細い金の髪がゆっくりと流れる様は美しいと言うよりも、何か妖しさを感じさせる姿だった。


「私の事は気になさらず。私は私で少しやらないといけない事がある故、これで失礼させて頂く」


 レイは立ち上がると、騎士たちの背後を音も無く通り過ぎていく。
 たいまつの前を通りかかった時、先程まで揺れていた炎が突然揺れを止めた。
 あまりにも自然だっただめ、その事実に誰も気づくことはなかった。
 そうして彼女はテントから出て行く。
 後に残された騎士たちは彼女の様子に少し疑問を覚えたものの、すぐに軍議を再開させた。

 明日、後の歴史に名を残す戦争が行われる。そして多くの人間に様々な悲劇が起こる日でもあった。
 運命の歯車はゆっくりと終焉の時を刻んでいく。
 何の終焉かは答えられないが、流れる時には様々な分岐点が存在する。
 つまりはそれが明日なのだ。
 それはゆっくりと……ゆっくりと彼女に迫ってくる。


 ――撃鉄はもう降りてしまったのだから。











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[She led to wide-scale bloodshed. -第一部 第6話-]の続きを読む
  1. 2005/07/07(木) 01:58:08|
  2. オリジナル小説|
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霧城昂

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