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手のひらの中の奇跡 -恭也視点 第二話-

 ―4月11日―

 恭也視点 第二話










 思わぬ事で担任不在となったこのクラスも今日で二日目。昨日はホームルームが無いという事以外は今までとなんら変わらぬ授業だった。ただ、授業開始前に各教科の先生から一言二言沢田先生についての情報を聞かされただけだ。
 その内容とは、昨日の朝に赤星に聞かされた情報となんら変わらぬモノだった。おそらくそれ以上の情報はまだ学校側も理解していないのだろう。
 顔も覚えていない教師のことであるが、少し心配になる。俺が言うのもお門違いかもしれないが、早く良くなって欲しい。

 そして今朝も同じように赤星から沢田先生の容態ついて聞かされる事となるのだが、これがまた思わぬ方向に話が進んでしまっていた。


「―――何? 沢田先生の他にも意識不明者が出ただと?」

「あぁ、俺もさっき聞かされたばかりなんだが、お前と同じように本当に驚いたよ」


 赤星が何時もよりも落ち着きのない声で言う。さっきという事は、これは最新の情報なのだろう。


「名前までは教えてくれなかったが、何でもサッカー部の二年のヤツが更衣室で倒れているところを今朝発見されたらしい。見つけたのは同じサッカー部のマネージャーらしいぞ」

「それはもしかして沢田先生と同じ容態なのか? 同じように何時目を覚ますかわからない状態なのか?」


 俺の疑問に赤星はゆっくりとうなずく。それを見た時、俺は何か不穏な空気が風芽丘に流れているのを感じた。


「これは当然の疑問だと思うんだが、二人も同じような原因不明の病気にかかるなんておかしいと思わないか?」

「やっぱり高町もそう思ったか。俺に教えてくれたヤツも同じような事を言ってたよ。俺だってそう思うしな」


 やはりこれは異常だ。こんな偶然は二度続くような事じゃない。と言うことは、これは偶然ではないのではないのか、そんなことを思ってしまう。と言うことは、誰かが故意にそういう事を起こしている、と言う事になる。これこそ考えすぎなのではないだろうか。


「こんな事を言っては怒られるのだろうが、新年度早々縁起が悪いな」

「―――まったくだ」


 時計を確かめるとそろそろ一時間目が始まるようなので、俺は一言赤星に挨拶してから自分の席に戻ることにした。俺の席は昨日の席決めで決まった窓際二列目の一番後ろの席だった。中々に教師に気づかれにくいベストポジションと言える場所だろう。ちなみに左隣の席は昨日知り合った月村だった。
 月村は俺が赤星と別れた時には既に自分の席に座っていて、同じように隣に座った俺に挨拶をしてきた。当然俺はそれに挨拶を返すことにした。


「おはよう、高町くん」

「おはよう。今朝は昨日より早いんだな」

「うん、昨日は休み明けでちょっと寝不足でね、寝坊しちゃった」


 全く悪びれた様子も見せず月村がそう言う。すると一時間目の鐘が学校中に鳴り響き、皆が席に向かい始めた。
 一時間目は国語だ。それはいいとしても、二時間目の英語はどうなるのだろうか。やはり臨時講師が来るのだろうか。
 そんな事を思いながら俺はかばんの中の荷物を机の中に入れていた。










 それは一時間目が終わった後の休み時間の事だった。
 俺は自分の席で次の英語の時間はどんな教師がやってくるのだろう、と考えていた時赤星が話しかけてきた。
 どうやら赤星も俺と同じく、次の英語の臨時講師が気になっていたようだった。隣の席の月村は、と言うと全く気にならないらしく、国語の時間からずっと机に伏せて寝ている。俺が言うのもなんだが、本当に大丈夫なのだろうか。


「高町、いよいよ次は英語だな」

「あぁ、不謹慎ではあるが、どんな先生が来るのか楽しみだ」


 俺の言葉にお互いが頷きあう――そう、そんな時だった。俺の前に彼が姿を現したのは。


「赤星。ちょっといいか?」


 突然そんな声がした。
 声がした方に視線を向けてみると、どこかで見たことのあるような感じの男がそこにいた。身長は見た感じ俺と同じくらいだろうか。短く切られたその髪型はさわやかな印象を与えている。


「あぁ、佐藤か。うちのクラスまで来るなんて珍しいな」


 佐藤と呼ばれたその男は薄い笑みを浮かべてうなずいた。
 無愛想な俺と違い、赤星には沢山の友人がいる。彼もその内の一人なのだろう。両者の雰囲気が心を許している友人とのそれに合致している。


「で、わざわざここに来るくらいのニュースがあるのか?」

「あぁ、そうだ。ちょいとばかし重要なニュースがな――っと、今は大丈夫か? 彼と話しているみたいだったが」


 佐藤と呼ばれた男は俺の方に視線を向けながら言う。


「あぁ、こいつは友人の高町だ。中学の時からの付き合いだ」

「お、彼がそうなのか。よろしく。俺は佐藤秀二。一応俺も赤星の友人をやらせてもらっている」


 目の前の男――佐藤は赤星とはまた違う種類のさわやかな笑顔でそう自己紹介する。
 人は自分と違うモノを持っている人間に出会った時、人によって様々な種類があるものの、それらは全て憧れという言葉で説明できるはずだ。間違いなく俺は赤星と出会った時と同じ種類の憧れをその男に感じていた。
 俺もその言葉に感化されたのか、何時もより明るく紹介しようとしたが、結果は実らず。何時も通り無愛想な紹介になってしまった。


「で、だ。高町くんもそのまま聞いてくれて構わんが――また、例の病気が出たぞ」


 小さくつぶやいた彼の言葉で、俺たち三人の間の空気が一瞬で凍りついた。


「二人ともそんなに硬くなるな。今回は風校の生徒じゃない。だからお前たちの関係者じゃないはずだ」

「佐藤、それは生徒会長としてどうかと思うぞ」


 赤星の言う通りだ。
 我々の関係者ではないと言うだけで安心するのは俺もどうかと思う。


「そうだったな――許してくれ、二人とも」


 己の失言を本当に悔いているように生徒会長――どうりで見たことのある顔のはずだ――は顔をゆがませ、詫びを一つ入れた。


「で、佐藤どうなんだ? 風校じゃないって事は海中か?」

「あぁ、そうだ。今回は海中の生徒だ。場所は体育用具室で、倒れているのを発見された。どうやらその生徒は一時間目が体育だったらしく、何時も通り普通の体育の授業を受けていたそうだ。そして倒れたのはつい先程で、授業終了後に一人で後片付けしている時に倒れたようだ。戻るのが遅いから、とその生徒の友人が呼びにいったところで発見されたらしい。まぁ、俺も先程知らされたばかりなのでこれ以上詳しいことはわからない」


 これ以上詳しいことはわからない、と言うがこれ以上詳しい情報などないのではないか、と思えるほどに丁寧に佐藤は話してくれた。


「そうか……何にしても、一体何なんだろうな。立て続けに三件起こるってのはもう決定だろう。早いこと警察に知らせた方がいいんじゃないか?」


 赤星の当然の疑問に佐藤はゆっくりと頷いた。


「昨日言い忘れていたが、既に沢田先生が倒れられた時にごく個人的な判断であったが警察には報告してある。まぁ、一人だと事件性も低いと言う理由で断られたがな」


 それはそうだろう。
 それだけでは警察に追い返されても仕方がない。でも今は違う。三人も犠牲者が出たと言う事は、もうこれは確実に事件だと判断できるだろう。


「だから俺はもう一度学園長に掛け合ってみるつもりだ。もうこれは無視できないところまで来ているしな――そろそろ休み時間が終わるな。赤星、また何かわかったら知らせにくるよ。高町くんもまたな」


 そういうと佐藤は足早に教室から出て行った。赤星と俺はこの急な展開に別れの挨拶すらできずに、騒がしい教室の中で二人して呆然としていた。
 やがて休み時間の終了を知らせる鐘で意識を取り戻し、赤星は、また後でな、と言って自分の席に戻っていった。

 さて、突然の訪問ですっかり忘れていたが、次は例の英語の時間だ。
 先程の事件については、無関係だと無視できる程の物ではない。後で赤星と話し合う必要もあるだろう。だが、今考えても仕方の無い事であるのも確かだった。
 今、大切なことは次の時間の臨時講師のことだろう。
 周りを見渡すと、眠りこけているごく一名を除いて皆全て興味津々と言った顔で隣同士会話をするヤツもいれば、まだかまだかと教室の扉を見つめているヤツもいる。
 やはり皆考えることなど同じことなのだろうか。

 やがて廊下側のクラスメイトの、先生来たぞ、という言葉に反応して、約一名を除いて皆が教室の扉に注目することになった。当然、俺もその場所に視線を送っている。
 突然静まり返った教室に誰かが廊下をゆっくりと歩いている音が聞こえてくる。この音から察するに臨時講師とは女性なのだろうか。ヒールで床を鳴らすような音が聞こえてくる。
 そして扉の曇り硝子にうっすらとシルエットが浮かんだ瞬間、その扉は開かれた。
 その姿にクラスメイトたちは声を失った。そこには見るからに日本人ではない人が立っていた。それもとても美しい女性だった。
 俺や赤星はフィアッセという美人の外人女性を何時も見ている為、彼らのように呆然とすることはないにしろ、それでも驚いた。
 この位置からでも見てわかる絹のような銀色の髪、外人特有の瞳に人懐っこい顔は彼女の美しさの象徴ともいえるのではないだろうか。

 その彼女はこちらを見ながら、ゆっくりと教壇へと歩いている。そして教壇へとたどり着くと、持っていた荷物を置き、俺らの方へ完全に向き直った。


「私が今日から君たちの担任を務める、リスティ槙原です。とりあえず沢田先生が回復するまでの代理になると思いますが、よろしく」


 彼女の声は少しハスキーな声だった。その声に反応したように、クラスメイトたちは急に騒がしくなる。騒ぎたくなる気持ちもわかると言うものだ。
 だが、俺は騒ぐ気にはなれなかった。
 気持ちはわかるのにそんな気になれない、というのは後から考えてみるととてもおかしい心情だ。しかし、本当にそうだったのだから仕方が無い。
 これも後から考えたことなのだが、俺はあの時間違いなく彼女に見とれていたのだ。前の日に忍に見とれていたのにも関わらず、俺は彼女――リスティ槙原と名乗った女性に惹かれていた。
 これまでの短い人生の中でこんな気持ちになったことは一度も無かった。だからこそ、その時はわからなかったのだろう。
 今だから言える事がある。俺は彼女たちに同時に恋をしていたのだろう、と。












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  1. 2005/08/25(木) 14:43:31|
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手のひらの中の奇跡 -リスティ視点 第一話-

 ―4月7日―

 リスティ視点 第一話










 ドタバタと誰かが廊下を駆ける音が聞こえる。
 ボクことリスティ槙原は、その余りの騒がしさにゆっくりと目を開いた。ぼんやりとした風景の中をゆっくりと見渡し、愛用の目覚まし時計を探す。
 探し終えた頃には、ぼんやりとした風景もすっかり元通りになっており、その愛用の時計は私に衝撃的な事実を教えてくれていた。


 ――これは、遅刻じゃないか……


 その時計は、朝の九時を示していた。普通の会社ならすでに営業が始まっていてもおかしくない時間だった。

 ちなみにボクの仕事は、一言で表すのは難しい職種なんだが、言い表すとすれば警察への民間協力者だ。警察というよりも、刑事と言う方がしっくりくるかもしれない。だから、ボクの立場的に時間にはルーズな仕事なのだが、今日に限ってそれは違ってくる。
 何故かというと、今日はお偉いさんとの約束があったのだ。
 何やらそのお偉いさんはボクに何か頼みたい仕事があるらしく、電話越しではとても言えないような事なので明日九時に直接口頭でボクに伝えたい、と昨日の電話で約束してしまったのだった。

 とりあえず顔でも洗ってこようとノブに手をかけた時、下げた視線にはだけた胸元が映っていた。同い年の子たちと比べておそらく豊満な部類に入るだろうそれは少しボクの自慢だった。
 確かにこの寮には約一名を除いて女ばかりの所帯であるが、ボクも年頃の女の子だ。はじらいというモノも当然存在する。なので、真雪と同じような格好で人前に出るのは少しはばかれた。

 無事最低限の身だしなみを整え、部屋を出て取りあえずキッチンに向かう事にする。目覚まし代わりの熱いコーヒーが飲みたかったのだ。
 そうして部屋を出た時、玄関に見慣れた後姿を見つける事ができた。それは少し慌てながら靴を履いている最中だった。


「あれ? 那美は今日から学校だっけ?」

「あ、はい、そうです。今日は始業式ですよ」


 ボクの言葉に慌てて振り返る那美。よくよく考えると今は午前九時、十分は前に出ておかないとやばいのではないだろうか。この事でからかってやろうとも思ったが、それが原因で遅刻させても可哀相だ。そのまま行かせてやろう。


「まぁ、なるべく気をつけて急いで行けよ」

「はい、それじゃ行ってきま―――きゃあ!」


 そう言いながら那美は派手に転んだ。本当にこの子は大丈夫なのか、と思いつつも何時もの事なので助けもせず、そのままキッチンに入っていった。

 キッチンでは、もう皆出発したらしく、耕介だけが洗い物をしている所だった。


「お、リスティおはよう。もう朝ごはん終わったけど、何か作ろうか?」

「あー、パンと熱いコーヒーをお願い。どうにも眠くって」


 椅子に腰かけると、先ほど身だしなみを整える時に一緒に持ってきたタバコと愛用のジッポを取り出した。タバコを口にくわえ、ジッポは何時も通りボクの心を癒してくれるかのような音を立て、タバコに火をつけてくれた。
 紫煙はボクの体中を巡る。その紫煙が通り過ぎる度にボクの体の一つ一つが覚醒していくような感じがする。どうにもボクはこれがないと生きていけないようだ。これも真雪の影響なのだろうか。


「リスティ、そろそろタバコ止めた方がいいんじゃないか? お肌にも響くだろう」

「耕介。それはセクハラと言うモノだよ。まぁ、忠告については感謝しておくけどね」


 ボクの言葉に渋い顔をする耕介。それと同時にパンが焼きあがった音が部屋中に響き渡った。


「はい、リスティ。そういえば、今日の仕事はどうなんだ?」

「Thanks。そうだね、朝の九時からお偉いさんとの約束があってね。それでちょっと頭をかかえている訳だよ」

「朝の九時って、もう過ぎてるじゃないか! そんなにゆっくりしてる場合じゃないだろう」

「ん……寝過ごしたものは仕方ないじゃないか。なるようになるよ、多分」


 ボクの言葉に耕介は少しあきれたような顔をする。気持ちはわからないでもないけど、仕方ないと思う。


 ――そういえば、大事な話らしいけど、何だろう。


 何の話で呼び出されたのか、を考えながらボクは焼きたてのパンを一口かじった。










 海鳴警察署の前まで来た。そこで少し立ち止まることにする。何故なら遅刻した理由を考えなければならないからだ。


 ――さて、どうしようか。


 数分ほどそれについて考えてみたが、中々いい案が思いつかない。そうしている内にだんだん面倒臭くなって、素直に寝坊でいいじゃないか、と結論づけてしまった。

 そうして、お偉いさんのいる部屋の前まで来てしまった。なるようになるだろう、そう思いボクはその運命の扉を開けてしまった。


「リスティ槙原、入ります」

「ん? ようやく来たか、この不良娘め」

「いやいや、ちょっと寝坊しちゃって、ハハ」


 ボクが二時間も遅刻して来た事に、彼は全く表情を変えていなかった。
 彼の名前は越野鉄平、公安三課のテロリスト対策本部の本部長を務める人物だ。そんなお偉いさんでありながら年齢は確か三十二歳。いわゆるエリートと言うヤツだろう。
 エリートという事で頭でっかちな人物を思い浮かべる人もいるだろう。だが、彼は違った。ボクの記憶が確かならば柔剣道合わせて十二段の猛者のはずだ。それは彼の体格を見てもわかると思う。百九十を超える身長とがっしりとした肩幅はどうにも強そうな感じがする。


「で、ボクに頼みたい事ってなんだい? 何か事件でも?」

「うむ、一見何の変哲もない事件に見えるんだが、どうも君に頼まねばならないような事件に思えるんだ」


 ボクのため口にも一向に気にした様子もなく、片手でメガネの位置を調整しながら彼は言う。


「その根拠は?」

「俺のカン、というのでは駄目かな?」


 いかつい顔に似合わないような人懐こい笑みを浮かべながら、そんなとんでもない事を言い放つ。まぁ、何時もの事なので気にしないことにしておこう。


「まぁ、いいさ。で? 肝心の内容の方を教えてくれるかい?」

「昨日の午後八時頃、三丁目付近で誘拐未遂事件があった。事件にあったのは風芽丘学園に通う二年生の女生徒だ。何でも何時ものように部活から帰る途中に突然襲われたらしい。未遂だったのは、その時かけつけた風芽丘学園の生徒会長を務める男が助けてくれた、との事だ。何か質問は?」


 頭の中で事件を整理する。ようはただの誘拐未遂事件だ。理由はおそらく金目当てか本人か。むしろ気になるのはその生徒会長だな。どんな好青年か見てみたい気もする。だが、そんな事よりまず頭に思い浮かんだ疑問の答えが知りたくなった。


「大体の内容はわかったが、なんでこの事件が公安に送られてきてるんだ? しかも、お前みたいなテロ屋対策本部長の所に」

「それはだな、こいつが理由だ」


 彼は自分の机の引き出しを開けると、何か取り出してそれを机の上に置いた。それはビニールに包まれた白い粉だった。それが何かわかったボクは少し吐き気をもよおしたが、ぐっとそれをこらえる事にした。


「――麻薬か」


 肯定とも否定とも取れる曖昧な反応を示してから、彼は言葉を続けた。


「これが昨晩の現場に落ちていたらしい。見つけたのは襲われた女生徒だ」


 ビニールに包まれたそれを手に取る。麻薬の専門家でないボクは近くでよく見てみてもその種類はわからなかった。


「なるほど、確かにこれは公安――いや、ボクの仕事のようだね」

「だろう?」


 嬉々とした顔で言う。
 彼という人物は嫌いではなかったが、こういう話の時にそういう笑顔をされると自分の認識が間違いではないか、と思ってしまう。


「その薬物の効能については今検査中だ。帰りにでも鑑識に顔を出すといい。何か新しい情報があるかもしれん」

「わかったよ。それでボクは何時も通り勝手にやらせてもらっていいんだな?」

「その為にお前を呼んだと言う事だ」

「Thanks」


 その後、鑑識科に行ってみたが特に新しい情報は無かった為、署内でこれ以上やる事も無い為、長居せず表に出ることにした。











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  1. 2005/08/17(水) 13:30:17|
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手のひらの中の奇跡 -恭也視点 第一話-

 ―4月10日―

 恭也視点 第一話










 もう何度目になるかわからない程通り抜けた門を小走りで通り抜ける。
 もう大丈夫だろうか、と愛用の時計を取り出してみるとまだ十分程余裕があった。思ったより速く走りすぎたらしい。
 これならば大丈夫だろう、と俺は走るのを止めて歩き始めた。

 先週の始業式では授業がなかった為、今日が三年になって初めての授業がある日だ。
 その事を考えると、昨年のように授業を寝て過ごすのはどうだろうかとか、今年もうまくやっていけるのだろうか、と少し憂鬱な気分になってしまう。

 後者は今年も赤星と同じクラスな為、あまり心配はしてなかったが問題は前者だ。
 昨年は本当に危なかった。
 もう少しで留年する所だったのだ。
 そんな経験からか、そう思ってしまうのは学生として当然の事だろう、と思う。
 しかし、俺自身大学には興味が無く、卒業したら実家を手伝いたいと言う気持ちがある為、勉強を積極的に頑張ろう、とはどうしても思えない。
 だから結局昨年通りでいいだろう、と思ってしまう自分が少し情けなく感じてしまう。











 そうだ、自己紹介を忘れていたな。
 俺の名前は高町恭也。
 先ほど述べた通り、私立風芽丘学園の三年だ。
 その他の事は色々この場で語りつくせない程特徴はあるんだが、特に必要のない事と思うのでそれは良いだろう。
 今重要なのは、ちゃんと遅刻せずに教室に到着できるか、だ。

 そうこうしている内に、俺は下駄箱付近に到着した。
 どうやら今の時間がピークらしく、俺と同じように投稿してくる人たちで溢れかえっていた。
 そんな中、俺は自分の下駄箱の位置を探している。
 しばらく辺りを見渡していると、見覚えのある顔が飛び込んできた。


 ――あれは確か……去年同じクラスだった、月村さんだったかな。


 そして、始業式の日に教室から出た時に、月村さんと肩を軽くぶつけ合った事を思い出した。
 どうやらあそこが俺のクラスの下駄箱らしい、と思った俺は月村さんのいる下駄箱に向かう事にした。

 丁度俺が到着した時、月村さんは靴を下駄箱に入れていたところだった。
 その姿を見て、俺も靴を履き替えよう、と思っていたら、不意に彼女がこちらを振り返った。
 彼女の顔を眺めていた俺は当然彼女と目を合わせる格好になった。


 ――ん、まずい。


 そう思って視線を外そうとすると、突然彼女が笑い出した。
 何の事かわからない俺は訳を聞こうと思い、外そうとした視線を彼女に戻した。
 少しその状態で待っていると、彼女の笑いが治まり始めた。

「ご、ごめん。ごめんね。高町くんってそう言う可愛いリアクション取る人とは思わなかったからさ、つい」

「―――ん、どんな反応だったか、聞いてもいいか?」


 そう返すと、彼女は少し思案するような顔をした。
 初めて彼女の姿を見た時にも思ったが、彼女は本当に美しい顔立ちをしている。
 そんな彼女の思案する顔を見たのはこれが初めてなので、余計に彼女が美少女である事を感じ取れた。


 ――少し頬が熱いような気がするのは、気のせいと思いたい。


 辺りは先ほどまでの騒然とした雰囲気ではなくなっており、人の波が落ち着いたのか雰囲気まで落ち着いてきた。


 ――この様子だと少し急がないといけないかもしれないな。


「そういえば、高町くんとこんな感じにお話するのは初めてだね」

「そうだな、去年も同じクラスだったが、何分接点がなかったからな」

「じゃ、初めまして。私の名前は月村。月村忍」


 ――どうやら俺の予想は当たっていたようだ。


「あ、もしかして私の名前間違えて覚えていたとか?」


 ――結構、するどい子なんだな。


「いや、気のせいだ。俺の名前は高町恭也。まぁ、今年一年よろしく」

「ん、よろしくね。高町くん」


 実の所、俺は彼女と話し始めてから何か他の人とは違う違和感――余り人と話す機会はないのだが――を感じていた。
 何故初めて話すはずなのに、こうも打ち解けたような会話ができるのだろうか。彼女の人徳故か、それとも他に何かあるのだろうか。
 前者だとすると、俺が何時も彼女の姿を見た時は一人の時だった。彼女がクラスで他の人ときさくに話しているのを見た事がない。
 とすると後者だろうか。そうだったら、少し――


「そろそろ時間がまずいだろうから、教室に行かないか?」

「うん、そうだね。行こうか」


 そして、二人並んで教室に向かって歩き出した。

 やはりおかしい。
 自分の不器用さは自分が一番わかっているつもりだ。
 そんな俺が女の子をこんな風に何でもない事とは言え、誘えるはずがない。一体俺はどうしてしまったのだろう。
 共に歩く彼女の横顔をちらりと見る。
 俺が今まで見た彼女の顔といずれも一致しない、少し楽しげな顔をしていた。
 彼女の方は何でも無い事なのだろうか。
 そう思うと、少し気分が重く感じられた。


 ―― 一体、俺はどうしてしまったのだろうか。


 二人並んで階段を上る。途中上から駆け下りてくる男子生徒が居た為、少し脇に避けて道を空けてやる。急いでいるらしく、俺達の方を気にもせず駆け下りていった。
 教室でも間違えたのだろうか、そう思った俺は再び階段を昇り始めた。
 その時、少し疑問に思った事を聞いてみた。


「そういえば、うちのクラスの担任は結局誰だったんだ?」

「あれ? 高町くん見てなかったの? 英語の沢田先生だよ、あの化粧の濃い人」


 記憶を遡ってみる。
 しかし、何故か俺の記憶の中には沢田先生と名乗った人物や、化粧の濃い先生の顔等存在しなかった。
 何故だろうか、と思案しているとすぐにその答えに思い当たる。
 基本的に英語の授業は全て居眠りをしていたからだ。こんなのでよく三年に進級できたものである。


「――ん……記憶にないな」

「それは高町くん、授業中ずっと寝てたでしょう? ま、私も余り人の事をとやかく言える立場じゃないんだけどね」


 階段を共に昇り終わり、教室のある階に到着する。
 その廊下では、幾人か教室に入ろうとする人や、窓にもたれて会話をしている人たちが居た。
 その様子から、まだ時間は大丈夫なのだな、と俺を安心させた。流石に始業式の次の日からいきなり遅刻はかなりまずいことになるだろう、と。
 さっそく教室に行こうか、と思った時、月村が俺と反対方向に歩き出した。一体どこへ行くのだろうか。


「月村、どこへ行くんだ? 教室はこっちだろう」

「女の子にそんな野暮な事を聞いちゃだめだよ? じゃ、また後でね」


 意味不明な言葉を残し、月村は教室とは反対方向へ歩いて行く。すぐにその先に何があるか気づき、俺は視線を教室の方向へ戻す事にした。


 ――どうやら美由希の言う事も、あながち間違いではないのかもしれぬ。


 何時も俺の人となりを注意してくれる妹に心の中で礼を言い、俺は一人教室へ向かうことにした。
 まだもう少し時間があるだろうが、早めに教室に入っておいて損はないだろうからな。










 俺はこの時、まさに人生の分岐点とも言える瞬間に出会った。それはこの時に感じたことではなく、もっと後の時間で気がついた事だ。
 この時、遅刻すまいと急いだ俺の判断は普通に考えれば正しい行為なのだろう。これからも今までのように普通に生き、暮らし、家族を守っていく。そんな人生を送っていくのだろうと思っていた。
 だがしかし、遅刻せず間に合ってしまったせいで俺の人生は変わってしまった。

 俺は運命と言う言葉は信じていないし、未来予知と言う言葉も信じていない。それを信じてしまえば、俺たちには未来への選択肢と言うものが存在しない事になってしまう。
 これが俺たちに与えられた運命だと言うのはまっぴらだ。俺は俺自身が常に未来を選択し、生きてきた。そこに神の手が入る余地など存在しない。
 だからこそ……俺はこの選択に後悔していないのだ。










 何時ものように俺は扉を開け、教室へと入っていった。
 そんな俺を迎えたのは、クラス中の喧騒と俺を見つけた赤星だった。


「よう、高町。今朝は遅刻しなかったな」

「それじゃまるで俺が何時も遅刻しているようじゃないか」

「始業式の日、日にち間違えて遅刻しそうになっただろう」

「―――ん」


 そう言われると何も言い返せなくなるのが少し悲しい。
 何か言い返せる言葉がないか、と思案していると、赤星が思いもよらぬ事を言ってきた。


「そういえば高町。俺達の担任って英語の沢田先生だったよな?」

「――そう、らしいな。それがどうかしたか?」

「いや……な、それが沢田先生、昨日意識不明で病院に運ばれたらしい」

「意識不明……?」


 赤星の言葉に少なからず俺は衝撃を受けていた。
 顔すらも覚えていない先生だが、担任が意識不明で病院に運ばれたのだ。衝撃を受けない方がおかしいと言うものだろう。


「それはどうなんだ? 回復の目処はついているのか?」

「ん……俺も人づてで聞いた話だから何とも言えないけど――過労で突然ふっと意識が飛ぶ事は稀にあるらしい」

「そうか、それは心配だな」

「あぁ、でも周りが心配しすぎてるだけで、こういう症状は割りと呆気なく目を覚ますらしいぜ」


 名前以外英語教師で化粧が濃い、と言う事しか覚えていない俺だが、赤星の言葉で少しは安心することができたようだ。


「それと別にもう一つ心配事があるのだが」

「ん? 何だ?」

「俺達の担任及び、英語の担当教師はどうなるんだ? このままじゃ勉強できないだろう」

「教師が居ても、お前は勉強しないだろうに」

「―――む、今年こそはちゃんと起きておこうと心に決めた」

「お、そうか。じゃあ頑張れ。英語は臨時講師を呼ぶらしいぞ」

「む……了解した」


 この時、俺はこの何気ない会話で後にこんな悲劇に見舞われるとは、全く思っていなかった。
 ある程度、危険については何時も想定している。だからこそ俺はこの業を修めている。だがしかし、あんな絡め手で来るとは全く想定していなかったのだ。
 先ほど言ったように、俺は自分で決めた選択には後悔はしない――だが……だが、彼女に対して幾ら詫びても、俺の短い命を全てかけても、決して許されはしないだろう。
 だが俺はコレを捨てずに、一生背負っていくつもりだ。
 それが彼女に対してのせめてもの償いであり、もっと言えば義務なのだろう。


 ――だから、だから忍……俺がそっちへ行った時は、その手で殴ってくれないか?










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  1. 2005/08/12(金) 01:37:53|
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She led to wide-scale bloodshed. -第一部 第7話ー

 古今東西、戦場には必ず敵と味方が存在する。それはごくごく当たり前の事だ。それが事実でなければ、男たちが命を削って戦う様が、酷く滑稽なモノとして映ってしまう。
 だからこそ、それは当たり前の事なのだ。

 さて、何故今更このような事を言っているのか。
 それは今回の話は味方の話ではなく、敵方の話であるからだ。


 ――本来ならば語らずとも良い話ではないのか?


 そう思われる方もいらっしゃるだろう。しかし、これは語らねばならない事なのだ。何故なら、彼らもまた彼ら自身の正義で戦っており、何より彼らの大将は後に重要な役割を担う人物であるからだ。

 彼は戦士だ。
 才能だけを問うならば、それは英雄になれるだけの力を持った人間だ。
 だが、彼は英雄である事を求めなかった。
 結果的に人々に英雄だと呼ばれる事はあったが、彼はそんなものを求めていなかった。
 彼の求めていたモノはただ一つ。
 彼はこの世界に覇を求めていた。
 なるほど、彼ならばそれを達成するかもしれない、と彼の周りにいる人たちは口を揃えて言う。

 それは私にとっても同感だ。
 別の時代に生まれていれば、彼の右に出る力を持った人間は存在し得なかったろう。
 だが、彼には運が無かった。それは何故か?
 簡単だ、彼女と同じ時を生きてしまったからだ。

 彼がどのように生きてきたかはここでは語るまい。
 彼女程に彼を注目しろ、という訳でもない。だが、少しだけ、少しだけ彼を気にかけてやって欲しい。
 この物語は彼女の物語でもあるし、彼の物語でもあるのだから。










She led to wide-scale bloodshed. -第一部 第7話ー










 その男は空を見上げていた。
 そこには雲ひとつなく、満天の星々がその男を照らしていた。そのお陰で男の顔がはっきり見てとれた。
 おそらく二十代後半から三十代半ばくらいだろうか、その容貌は決して整っている訳でもなかった。ただ、その瞳はぎらぎらと光っていた。それは獣の目と表現するのが一番わかりやすいだろうか。彼はそんな目をしていた。
 そしてそれは目だけではなかった。
 彼の全身を見ると、同じ年代の男と比べてみても、一回りも二回りも大きな体つきをしている。服の上からでも見てわかる大胸筋や、袖口から見える二の腕を見ても、彼が相当強い男であろう事は容易に想像できた。

 私が彼を見つけてから十数分経ったろうか、未だに彼は星空を見上げている。
 案外、見た目と裏腹にロマンチストな人間なのかもしれない。
 時折聞こえる虫の声を覗けば、それは確かに静かな夜だった。
 それもそのはず。十数時間後にはここは戦場となる場所なのだが、今はまだその時ではない。古来より戦場となる場所は概ね開けた場所だ。静かだと言うのは当然のことであろう。


「どうした? 俺に何か用か?」


 男はふいにそんな言葉を口にした。
 始めは私の視線に気づいたのかと思ったが、すぐに否と思い返した。
 彼は人並み外れた強さを持っているのだろうが、それは人間と言う枠内の話だ。そうである以上、私の気配に気づく訳もなかった。
 その予想は当たっており、彼が話しかけたのは私とはまた別の存在だった。


「そうですね。明日の最終確認というのはどうでしょうか?」


 何処からか、少し低い女の声が聞こえてきた。
 すると、先ほどまでは確かに誰も存在しなかった場所に長身の女性が立っているではないか。
 男はそれに慣れているのか、女の方を振り返りもせず星空を見上げながら言葉を返した。


「そうか。で、確認したい事とは何だ?」

「そうですね。本当に渓谷の前に部隊を配置してよろしいのですね」

「あぁ、構わない。それが何か不満か?」


 夜空を見上げながら、少し意地の悪い声で男は言った。


「そうですね。軍師である私の意見を言うならば、渓谷の後ろに陣取った方が有利に事を構えられます」

「それじゃあ駄目だ」


 いつの間にか男は彼女の方を見つめていた。彼女は顔こそ無表情のままだったが、その視線と声のどちらかに一瞬戸惑ったように無言になった。


「――何故駄目だというのです?」

「長年連れ添ってきたお前がわからないか? 答えは簡単だ。それじゃあ面白くないからだ」


 今度こそ彼女は絶句したような顔をした。そしてすぐにその顔を何時もの無表情な顔に戻した。


「まったく……貴方と言う人は、私のいる意味がないじゃないですか」

「そうでもないさ。お前にはこれまでに何度も助けられている」


 彼らはお互いに何かを懐かしむような目をしていた。
 何時までも続くかと思われたその時は、男の方から動かした。


「で、脅威なのは本当にリング12だけでいいのだな?」

「えぇ、他に天才魔術師アンジェラも居ますが、所詮一人だけ。少し注意を払うだけでいいでしょう」


 女のその言葉に男は頷きもせず、何か思案しているかのような顔をした。そんな男の姿を彼女が疑問に思うはずもなかった。


「どうしたのです? 他に誰か気をつけないといけない事でも?」

「――いや、それが槍鬼の事なのかもしれないが、予感だ。匂いがするんだよ」

「匂い……ですか?」

「同族……いや、同種だからわかる匂いってヤツがな」


 男の言葉の意味がわからなかったのか、彼女は一瞬不思議そうな顔をした。
 その顔に気づいた男は、気にするな、と言った。
 そして再び視線を女から夜空に戻した。


「ようやく……ここまで来ましたね」

「――あぁ、あの小さな村を飛び出してから、ここまでおよそ十年か。随分と時間がかかったもんだ」

「私はあの時、十年以上はかかると言いましたよ?」

「そうだったか? もしそうだったらすまなかったな。あの時の俺はまだガキだったんだ」

「いえ、気にしてませんよ。そんな貴方だから、ここまで付いてきたのですから」


 再び彼らの間に懐かしい雰囲気が立ち込めた。
 男の目には、先ほどまでと違い、穏やかな目をしていた。女の顔もただ無表情ではなく、どこか懐かしんでいる雰囲気があった。


「さて、いよいよ明日だ。俺はおそらく槍鬼とのほぼ一騎打ちのような状況になるだろう。全体指揮は任せたぞ?」

「えぇ、それが私の役目ですから。明日は存分に楽しんでらしてください」


 どういう原理なのか、その言葉と同時に女の姿が掻き消えた。やはり男は慣れていたのか、それを全く気にせず視線をぴくりとも動かすことはなかった。


「槍鬼……またの名をガラハッド。俺がこれまで相手してきた中で、おそらくは最強。もしかすればヤツも俺と同じアルカナの一人かもしれぬ」


 男は視線を真正面に向けると、右手の拳を握りこみ、視線と同じ真正面に放った。
 少し遅れて、拳の前にあった草々が風圧によって揺れていた。


「天下等そのついでだ。最強の座を俺に明け渡して貰おうか、槍鬼よ」


 男は真摯だった。それは自らの力を信じ、信じきった結果だった。
 彼もまた、レイと同じこの物語の一角を担う人物。私に選ばれた人物なのだ。










 もうこの辺りで十分だろう、と私は彼の元から立ち去った。
 さぁ、明日は歴史に名を残す決戦だ。
 一瞬にしてその決戦の場に飛ぶこともできるが、今はそんな気分ではなかった。少しだけ彼に毒されたのか、一晩中夜空を見上げてみたくなったのだ。
 見上げた空には彼と同じ視界が、満天の星々が私の眼に飛び込んできた。
 それは悠久を生き、旅してきた私ですら美しいと思えるような光景だった。

 私には明日の結末はわかっている。
 だが、その結末が彼らにとって良い出来事であってくれ、これからの彼女の運命を良いものとしてくれ、と星々に願わずにはいられなかった。











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  1. 2005/08/08(月) 01:26:09|
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霧城昂

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