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Blue Moon 第8話

 ここで一つ思い出してみよう。
 あの時、確かに俺は周りに注意を払っていなかった。俺が未熟だったのは認めよう。そして月村の勘違いであってくれ、と願う自分がそこにいる。たかがパン一つであろう。それ自体が特に何か危険である訳でもない。

 それとは逆に、最悪なパターンを想定しておけ、と思う自分もいる。この場合の最悪なパターンというのは何だ。家族に危険が及ぶ事か? 否、自分が殺される事だ。それすなはち、美由希ではまるで歯が立たないという事。そして、家族が皆殺しにされるという事につながる可能性もなくはない。

 しかし、その可能性を考えるに不可解な点がある。何故パンを盗まねばならなかったのか、という事だ。唯一、俺の頭で考えられる可能性は、俺に脅威、又は恐怖を与えたかった、という事だ。そう考えると、なるほど辻褄は合っているような気がする。
 だが、その可能性には、やり口が回りくどすぎると言う欠点がある。俺に恐怖を与えたいのであれば、常に俺に対して殺気、何らかの視線を与え続けていればいい。それならば小一時間で済む話だ。俺が察知できなかった程の腕だ。出所を教えずに殺気をぶつけることも可能であろう。
 そこまで考えたところで、俺は一つ大事な事に気がついた。それはつまり……










Blue Moon 第8話










 午後の麗らかな日差しが優しく降り注ぐ。秋には少し暖かさの過ぎる日差しがむしろ心地よい。ゆるやかにそよぐ風もまた、俺にやすらぎを与えてくれる。

 少し顔を上げると、教壇で社会科の教師が独特の口調で教科書を読んでいる。周りを見渡すと、ざっと8割は真面目に授業を聞いているようだ。それもそのはずであろう。我々は受験生なのだから。それでは残り2割は何なのか。それは、聞かぬが仏と言うモノだ。

 少し体を起こし、ポケットから時計を取り出した。授業終了まで、まだ30分近くも残っている。その事実に少し顔をしかめると、俺は目だけを左隣に向けた。予想通り並んで机に伏せている姿を確認できた。二人とも少し笑みを浮かべながら意識は夢の中のようだ。

 さて、残り30分弱どのようにして過ごそうか。そんな事を考えながら、俺はシャーペンを手に取ると、机に落書きをすることにした。無論、何時もはこんなことはしない。ここで俺が目覚めたのは、おそらく世界にとってイレギュラー。ならばそのイレギュラーに少し付き合ってやるのも面白いのではないか。
 横目で月村の顔を眺めながら右手を動かす。その線は事実とは違い、歪んだ曲線に歪んだ顔を描き出した。2割にも満たない内に、俺はそれを消すことにした。やはり慣れぬ事はするものでない。

 そんなつまらない事をやっている内に、授業の方はいよいよ佳境に突入したようだ。段々と、教師の口調が速くなっている。この教師がこんな形で話しているのをはじめて見た。というよりも、この時間に起きている事自体がはじめての出来事だ。たまにはこのような経験をするのも悪くない。そんな事を思わせてくれる瞬間だった。










 少し遠くから聴こえて来る鐘の音。それに遅れて、この教室内でもその音が鳴り響いた。まったく別々の鐘を使っているのか、何時もとは違う事に俺は少し関心を覚えた。

 そして辺りからは、少しざわめく声と鐘の音で体を起こす者で教師の声がほとんどかき消された。それに漏れず、隣の二人もどうやら体を起こしたようだ。気持ちよさそうな声で体を伸ばす姿と、うめくような音を鳴らしながらゆっくりと体を起こす姿が横目に確認できた。二人の対称的な姿が少しおかしく感じられた。
 そしてその視線を今度は赤星に向けてみた。すると、周りでは帰る用意をするもの達が居る中で、ただ一人クソ真面目にノートを取っていた。次の定期試験の前は再びあいつの世話になりそうだ。そんな事を思うと、俺も皆と同じように帰る用意をすることにした。

 机の横にかけてきた鞄をひざの上に乗せ、机の上のものと机の中のものを鞄の中に一つ一つ入れていく。数学の教科書、日本史の教科書、英語の教科書――そういえば、明日も英語があったな。どうせだから置いて帰ろうか。いや、幾らなんでもそこまでみっともない事をする訳にも行かないな。やはり持って帰ろう。今現在、ノートが一冊も入っていない鞄を抱えて、何を今更、とも思うが、それは俺に残された一抹のプライドだ。これを失ってしまっては、俺が俺でなくなってしまう。まぁ、こういう所が人とは違い、つまらぬ部分なのであろうな。



 帰る用意を済ませた所で、先ほどから聞こえていた月村と安田の会話に耳を傾けることにした。


「晶もやるわね」

「せやろ? でも俺はあいつも月村と一緒やと思っててんけどなぁ」

「うん、私もそんな気はしてたんだけど……っと、やっと取れた」


 何を取ろうとしていたのか、少し力んだような声で月村はそう言った。それが少し気になった俺――というよりも、会話の内容に、だが――は二人に視線を向けた。すると、それに安田が気がついた。


「おう、高町。お疲れやな」


 その言葉に俺は会釈で返した。すると月村が、昨日の約束を覚えているか、と聞いてきた。はて、何の事だったか。忘れたことを伝えようと思い、月村に視線を向けると、月村が少しあきれたような顔をしている。


「高町くん。昨日の話だよ。放課後、遊びに行こうって言ったでしょう?」


 顔の通りのあきれた声で月村がそう言った。それを聴いて昨日の約束を思い出すことができた。確かにそのような約束をした覚えがある。なるほど、これは明らかに俺の方が悪いな。俺は素直に謝ることにした。


「すまなかった。侘びと言っては何だが、今日は何でもおごろう。どうだ?」


 俺の言葉を聴いた月村は少し驚いたような顔をしてみせ、こちらが逆に驚いてしまうような笑顔をしてみせ、うん、それで許したげるよ、と返してきた。
 その様子を見た俺は、少し高鳴った胸を無視し、財布の心配をすることにした。取り出して確かめようとも思ったが、それはそれで色々な失態を見せることになる、という男としてのプライドが邪魔をして、それを躊躇わせた。月村の様子を見る限り財布の心配はなさそうだ。空になる、と思って良いだろうから。
 一つある事に気づき、念のため小銭を幾つか取り出しておこう、とポケットに手をやった。そして小銭を取り出そうとしたところで、安田に存在を思い出した。


「お前はどうする? 俺のおごりだが、来るか?」


 どうせだから、と俺は安田を見ながらそう言った。その言葉に少し考えるような仕草をすると、今度はポケットから財布を取り出した。そして、中身を確かめた。札を確かめず小銭だけ確かめているあたり、今日はかなりの金欠なのであろうか。


「せやなぁ。今日はちょっと行かなあかんとこあってのぉ……すまんな」


 両手を顔の前で合わせながらそう言った。まぁ、用事があるのならば仕方がない。それを伝えようとする前に、月村が先に反応した。


「あ、そっか。さっき言ってたよね」

「おう、そういう事や。ほな、ワシはちょっと急がなあかん時間やから、また明日な」


 そう言って鞄を持って立ち上がると、少し走りながら教室を出て行ってしまった。立ち上がった勢いで倒れてしまった椅子を直すことも無く。俺は一つ溜息をつくと、立ち上がり、倒れた安田の椅子を直すことにした。
 椅子を起こして直そうとしていたら、安田の机の中が少し見えた。見た限りかなりの量の本が入っていた。転校してきて1週間も経っていないだろうに。少し安田の教科書の悲哀を感じた気がした。

 そういえば赤星のヤツはどうしたのだろう、と思い赤星の席を見ると、一人の女生徒が赤星と会話をしていた。相変わらずだな、と思い目を離したところで、その女生徒が藤代であったことに気がついた。
 月村に視線を戻し、そろそろ行くか、と話しかけた。すると月村は笑顔で鞄を持って立ち上がった。そのまま俺の手を取り外へ出て行こうとする。正直、これは途轍もなく恥ずかしいので止めてもらいたいのだが。しかし、言っても無駄か。
 その事実に諦め、腕を取って先を急ぐ月村に歩調を合わせることにした。










「で、今日はどうするんだ?」


 何時ものゲームセンターまで来たところでそう月村に問いかけた。すると月村は、俺の腕を取りながら少し考える振りをすると、今日は音ゲーの気分だから、あっち行こ、と返してきた。
 音ゲーと言うと何時ものステップで点数を競うゲームだったか。そんなことを考える間も月村に引っ張られて歩いていく。まぁ、見ればわかるか。

 狭い店内の中を月村はなれた感じで俺を引っ張っていく。途中何度か人とぶつかりそうになったが、慣れてるだけあって直前で回避している。俺の方はと言うと、月村に引っ張られているせいもあって、何回か椅子にぶつかってしまっている。こんな姿は家族には見せられんな。
 何度目かの椅子を回避したところで、月村が大きな機械の前で立ち止まった。見ると、それは予想通りの物であった。すると月村はやっと俺の手を離し、その手で鞄をまさぐっている。おそらくは財布を捜しているのだろう。その姿に俺は少し笑みを浮かべ、教室を出る前に用意していた小銭を取り出し、月村の目の前に差し出した。


「今日は俺のおごりだと言ったろう。これを使え」


 俺の手と俺の顔を少し驚いたような顔で交互に見ている。最終的に俺の顔を見たところで、本当に言いのか、と言った顔をした。そんな顔をされたら断ると言う選択肢は当然出てこぬだろう。そう思うと、何も言わず月村の手を取り、その上に小銭を乗せた。
 すると月村は見るからに喜んだ顔で、ありがとう、と言いゲーム本体の上に足を乗せた。その言葉に、目を伏せることで返すと、近くにあった柱に寄りかかった。

 そして、月村は俺の渡した小銭を入れ、ゲームを開始させた。
 軽快な音楽と共に幾つもの矢印が画面の上から降ってきた。月村はそれに戸惑うこともなく次々にステップを決めていく。何時もながらに上手いものだ。これを見るためなら小銭の一つや二つは苦でもなんでもない。
 流れる曲に華麗なステップを決めていく月村。その姿を俺はじっと眺めている。その姿は美しく、ただただ俺にとって完璧であった。
 そして曲が中盤に差し掛かったところで、俺は目を閉じる事にした。
 月村と出会えたことに感謝をしよう、と。










――あとがき――
第8話までお付き合いいただき、ありがとうございました。

この1週間忙しくて何時もより少し遅れてしまいましたがいかがでしたでしょうか?
少し皆様のキャラの印象と違う点もあるかもしれませんが、こういう面もあるんじゃない
か、と思って書かせて頂きました。

本当は10話程度で終わらせよう、と事件だけで話を進めるつもりだったのですが、やって
いく内にドンドン話が長くなってしまって、10話程度ではケリが付きそうにありません。
もうしばらく、私の駄文にお付き合い願えたらな、と思う所存です。

では、次は第9話でお会いしましょう。
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  1. 2005/05/18(水) 03:36:39|
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霧城昂

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