私の書いたオリジナル小説およびSS等を乗せていくサイトです。
なお、このページはリンクフリーです。

とらハSNS

蒼香雪さん主宰でとらハSNSなるものが始まっております。
とらハのSS関係者によるソーシャルネットワーキングシステムですね。
ぜひ、読者の方も作家の方もご参加ください。
こちらのSNSで私の長編の連載を始めております。
タイトルは「とらハde鬼ごっこ」
気になりましたら、以下のページへどうぞ
http://thrss.p.cmssquare.com/

更新情報



内部リンク

小説を見る時は、こちらの内部リンクからどうぞ。

感想

SSや小説等の記事について感想がありましたら感想フォーム感想用掲示板に。

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。


この小説が気に入った方や感想があれば、下のボタンをお願いします。
  1. --/--/--(--) --:--:--|
  2. スポンサー広告|
  3. トラックバック(-)|
  4. コメント(-)

手のひらの中の奇跡 -リスティ視点 第五話-

 ―4月11日―

 リスティ視点 第五話











 何時ものように階段を降り、洗面所へと向かう。
 さざなみ寮に来てから何度も何度も繰り返してきたその作業。

 決してボクは、朝は強い方ではない。
 何時もならもう少し遅くまで寝てられるんだが、今日はそういう訳にもいかない。
 何故かと言えば、今日は風芽丘に臨時講師として出向かなければならないのだ。


 ――初日からみっともない姿を晒す訳にもいかないからね。


 自分の朝の弱さに苦笑しつつ、ボクは洗面所に到着した。
 目の前にある大きな鏡にはボクの寝ぼけた顔が張り付いている。

 蛇口を捻る。
 出てきた水は音を立て、ボクの気持ちを少しクリアにさせてくれる。
 その水に手をつける。
 四月とは言えまだまだ水は冷たく、それだけで目が覚めるような気がした。
 ボクは、冷たいだろうな、と当たり前のことを考え躊躇うが、思い切って顔にそれを両手でたたきつける。


 ――うぅ……やっぱり冷たい。


 さっさとタオルで拭きたいところだが、そうも言ってられない。
 ボクは続けて二度三度と水を顔にたたきつけた。
 蛇口をゆっくりと閉め、目の前の鏡を改めて見つめる。
 先ほどの寝ぼけた顔はそこには無く、水が滴る幾分かはっきりした顔がそこにあった。


 ――はぁ……髪の毛もボサボサだよ。シャワー浴びようかな。


 そう思い下を向き、未だ流れる水を見つめた時だった。


 ――え!? なんで今……


 少し前に感じた強烈な違和感の正体に気がついたのだ。
 それは以前、何故気がつかなかったんだ、と思える程に明確な違いであり、ボクにとって忘れてはいけない事項だったのだ。


 ――え……え? どういう事……?


 そこにあるべきモノが無かった。
 言葉にするとただそれだけの事なのであるが、その無くなったモノが重要なのだ。
 最後にそれを外した時を思い出す。
 一つ一つ走馬灯のようにさかのぼって行く。
 そしてある場面でそれを停止させる。


 ――あの時か!?


 キッと睨むようにして鏡の中の自分を見る。
 そう……鏡の中の自分には本来そこに無ければならないものが無かった。
 両耳にあるべきはずのピアスが無かったのだ。
 そして、昨日の越野の言葉に意図する所に同時に気がついた。


 ――あの野郎、仕事が終わったらとっちめてやる。


 その為にはまず今日の臨時講師の仕事をちゃんとこなさなければならない。
 第一印象も大切だ。
 その為、ボサボサの髪を整える為にボクはシャワーを浴びることにした。













 少し騒がしい廊下を歩いている。
 この日の為に、昨日色々と準備しておいた。例えば、一歩一歩高い音を立てる革靴なんかはそうだ。
 記憶の中の風芽丘時代の時と変わらず、ここは上履きが必要な学校だった。
 昔のことを思い出し、少し笑みがこぼれる。
 もし、これが仕事の為でなく、ただただ普通の教師として、この風芽丘に帰ってきたのならば、どんなに良かった事か。

 立ち止まり、窓の外に視線を向ける。
 そこには晴れ渡る空があり、その空をゆっくりよじ登るように太陽がさんさんと輝いている。
 漂う雲はそんな太陽を邪魔するかのような方向でゆっくりと動いている。


 ――ボクも結局はあの太陽と同じなのかな。


 さわやかな天気とは裏腹に、ボクはそう思わずにはいられなかった。
 どうも、朝の事が頭から離れない。
 辺りに耳を傾けると、騒がしかった廊下がいつの間にか静けさで支配される。ボクの足音だけが辺りに響いているようだ。
 そんな小気味のいい音を聞きながら、教室に着くまでの間、少し考えにふけることにする。

 ボクが最後にピアスを外したのはこないだの捜査の時だ。
 あの時、ボクは男たちに何か変なモノを嗅がされた――それが原因か? 否、おそらく違う――そして、その後目覚めるまでがボクの中での空白の時間だ。
 おそらく、その時に何かをされたのだ。ボクが倒れ、あの佐藤と言う男が助けてくれるまで……
 端的に言えばこうだ。


 ――ボクは、HGSとしての能力を失っている。


 これに気づいた時、ボクは何とも言えない気分に襲われた。
 アレだけ忌み嫌っていた呪われた力。しかし、今では耕介たちのおかげで折り合いをつけて共に生きていく事を覚えた。
 使えなくなった事に嬉しさもあれば、反面心にぽっかりと穴が開いたような気分でもある。


 ――結局は……ボクはこの能力に感謝しているのだ。


 何故なら、この能力が無ければ……耕介や真雪たちに会う事がなかっただろうから。
 彼らはボクを助けてくれた。ボクに愛情と言うモノを教えてくれた。
 耕介からは恋と言う感情を、真雪からは家族愛と言う感情を。
 殺人マシーンとして教育されてきたボクにとって――彼らは掛け替えのない存在であり、尊敬すべき人たちだ。そして、いつかこの恩を彼らに返したいと思っている。
 しかし……彼らとの絆と取り持ってくれた、HGSとしての能力。これがボクの中から突然消え去ってしまった。


 ――しばらくは、耕介たちには黙っておこう。


 丁度そう決意した時、ボクが担任代理を受け持つ教室の前に到着した。
 ボクはここに来るまで考えていた事を一旦思考の外に追い出すことにする。
 そして、大学時代の教育課程の実習の事を思い出す。


 ――緊張するな、柄でもない。何時も通り……ボクらしく。


 一つ大きな深呼吸をし、ボクは運命の扉へと手をかけた。
 記憶に残るより少し低い音を立てながら扉は横にスライドする。それと同時に教室の中の様子がボクの視界に入る。
 生徒たちは皆席についているようだ。
 ボクは教壇を目指し、ゆっくりと歩く。教壇に着くまでに多くの視線を感じる。


 ――ま、珍しいだろうね。新しく来た先生がボクのような美人じゃ。


 彼らの視線にそう思い、ボクは少し苦笑する。
 教壇に着くと、ボクはまず手に持っていた教材を机の上に置く。そして、教室中の生徒たちをゆっくりと見回す。


 ――流石、風芽丘。何故か美形が多いんだよね。男も女も。


 そう思いながら生徒たちの顔を眺めていると、見覚えのある顔が一つあった。
 不運続きの中の少しの幸運を天に感謝し、ボクは口を開いた。


「私が今日から君たちの担任を務める、リスティ槙原です。とりあえず沢田先生が回復するまでの代理になると思いますが、よろしく」


 すると、教室中が急に騒がしくなる。
 見るに男を中心に生徒たちが騒いでいるようだ。
 その事実に、少し嬉しく思いながら再び口を開いた。


「騒いでくれるのは嬉しいけど、あんまり騒がれると困るな。クビになっちゃうよ」


 すると、騒がしかった教室は途端に静かになる。
 かと言って、完全に黙った訳ではなく、あちこちからひそひそとした声は聞こえてくる。
 そこまでは注意する必要もないだろう、と思ったボクは更に言葉を続けることにした。


「ま、私はここに初めて来た。厳密に言うと昔ここの生徒だった事もあるから、初めてという訳ではないんだけど、それは置いておいて――当然、君たちの事は何一つ知らない。だからね、教えて欲しいんだよ。つまり、自己紹介だ」


 教室中が少しざわめく。
 それを無視し、ボクは廊下側の一番前の席の女の子に視線を向ける。すると、当然相手もこちらを見ている訳だから、彼女と目が合う格好になる。
 彼女はびくっと体を震わせる。
 そんな彼女にボクは笑みを浮かべて、こう言うのだった。


「そう、君だ。君から順番に簡単に自己紹介していってくれないかな。ほら、君からね」


 最初に当てられた彼女は少し諦めた顔をしながら立ち上がった。











 そうして、一人一人の自己紹介を聴いていった。
 教室一クラス分となると、結構な人数がいる訳で、当然色々な性格の人物がいる。
 少し恥ずかしげな顔をしながら話す人、自信満々に話す人……特に、風芽丘という場所では色んな人間が集まるらしい。自分もその一人だ。
 そんな中、一人異彩を放つ生徒が居た。名前は赤星勇吾。剣道部の部長をやっているらしい。
 彼からは他の生徒から感じられない爽やかな雰囲気を感じられた。


 ――彼の顔を考えると……モテるだろうね。


 そして、全国レベルの選手という他の生徒の冷やかしを聞いた時、薫の事を思い出した。
 その内、彼女に会いたいな――そう思っていた時だった。自己紹介が彼の番になったのは。
 窓際近くに座る彼はゆっくりと席を立った。
 そして、視線をボクに向けながら口を開く。


「――高町恭也です。そうですね……趣味は寝ること。特技はどこでも寝る事ができる、でしょうか」


 そう他の人より極端に短い紹介を終えると、彼は席についてしまった。そして、後ろの席の生徒が続けて自己紹介を始めた。


 ――ボクの事を覚えていないのかな、だったら少し残念……












 そうして、ボクと彼との物語は動き出す。
 この時は、まだ少し気になる少年に過ぎなかった。
 だが、物語は絡み合い、次第に彼を意識し始める。
 思わぬ彼との接点に、ボクは一喜一憂し、落胆することもある。


 ――今考えると……それは、とても楽しかった日々だったのかもしれないな。












この小説が気に入った方や感想があれば、下のボタンをお願いします。

――あとがき――
 リスティ視点 第五話いかがでしたでしょうか。
 やっと二人が本格的に対面するところまで書くことができました。
 ゲームで言うと、OPがやっと終了した、と言うところでしょうか。(苦笑)
 まぁ、これからおそらく本格的に話が動いていくので、お付き合い下さっている皆様、どうぞお楽しみに。
 では、次のSSでお会いしましょう。
スポンサーサイト
  1. 2005/10/24(月) 01:11:30|
  2. とらいあんぐるハートSS|
  3. トラックバック:0|
  4. コメント:0
<<内部リンク(小説) | ホーム | 手のひらの中の奇跡 -恭也視点 第三話->>

コメント

この記事(小説)が気に入った方は、是非ご感想を

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバックURLはこちら
http://kirishiro.blog10.fc2.com/tb.php/38-3794b4b5

TOPへ戻る


霧城昂

09 | 2017/10 | 11
Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

Search

Category

Recent Entries

Archives

Recent Comments

Recent Trackbacks

Links

Other

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。