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手のひらの中の奇跡 -リスティ視点 第十ニ話-

 ―4月14日―

 リスティ視点 第十二話












 紅く染まった教室に彼は居た。ボクとの約束を当然のように守っていた彼は窓際に立っていた。この時間から考えるとグラウンドでは部活の練習の真っ最中のはず。彼はそれを見ながら時間をつぶしていたらしい。
 彼は帰宅部のようだが、何故クラブに入っていないのだろうかと、つまらない事を自然に考えてしまう。いつまでも彼を待たせておく訳にもいかず、彼に話しかけることにした。


「恭也。準備できたかい」


 彼には珍しく、少し惚けたような顔でこちらへ振り向いた。その顔はすぐ戻り、いつもの表情のない顔に戻る。少し惜しいと思う自分に思わず笑顔がこぼれた。


「準備なら朝からできていますよ」


 そんな頼もしい台詞をボクに送ってくれた。もう少し気の利いた台詞がここで出てくれば満点だったが、彼にそんな事を期待する方が間違えている。彼とは短い付き合いだが、それくらいはボクにも理解できた。


「そうか。今日は頼むよ」


 それは本心だ。越野は穏便に終わると言ったが、それでも恭也には期待をしている。越野がそういうのだから、恐らくは荒事にはならない。ボクが恭也に期待をしているのは、それとは別のところにあった。越野の言う通りになれば、ボクにとってそれは幸運なのだ。


「応援も居るけど、基本的には君がボクの護衛だからね」

「わかりました」


 彼はそういうと、懐に手を入れ何か考え込むような顔をした。彼女への負い目からか、彼は少し気負いすぎているようだった。それとも理由は別のところにあるのか、どちらにしてもボクにとってそれは面白くないことだったのだ。


「気負いすぎるな。ボクの考えではそう荒事にならないはずだよ」


 彼はびくりと体を震わせ、顔を上げた。少し驚くような顔を見せた後、あまり見ない穏やかな笑顔を浮かべ、ありがとうございます、と返してきた。夕日の逆行で彼の姿が少し神々しく見える。純粋にその姿は格好いいと思える。そんな事を思えたのは本当に久しぶりだった。


「世話が焼けるね。じゃ、捕らわれのお姫様を助けに馳せ参じるとしようか」


 そういえば、と思い返す。少し前に読んだ本でこういうシチュエーションがあった。その物語の結末がどのようなものであったかを思い出そうとしたが、やめておくことにした。シチュエーションが一致しただけで、その後の展開まで一致するとは限らない。仮にその物語通りに事が進んだところで、面白い結末になるはずがなかった。なぜなら――


 ――その物語は悲恋のおはなしだからね。











 空は朱の色で覆われていた。通りを走る車のほとんどはテールライトを点灯させていた。ボクたちを追い抜くたびに少し強い風がタバコの煙を揺らしていた。
 後ろを歩いている恭也から少し不安気な雰囲気を感じた。まだ彼は緊張しているのだろうか。人には少しの緊張が必要だ、と言うが、少し彼に力を貸してあげるのもパートナーの役割であろう。
 ボクはそう考え、足を止めた。恭也も一歩遅れて足を止めていた。


「恭也。不安かい?」


 それはボクらしくない声だった。真雪に聞かれたら変に勘ぐられてもおかしくないくらい、ボクに似合わない声だった。彼の息を呑む音がはっきりと聞こえた。


「はい……不安でないと言えば嘘になります」

「そうか」


 彼の返答にボクはそう答え、再び歩き出した。どうしたものか、と吸い終わったタバコを灰皿にもみ消す――ふと、いい考えが頭に浮かんだ。
 いつも吸っているタバコの箱はなく、銀色に鈍く光る箱に手をやった。中から何時と比べて少し短めのタバコを抜き取り、箱をしまった。ライターを取り出し、そのタバコに火をつける。すると甘い香りが漂ってきた。ボクはその香りを胸一杯に吸い込み、そして吐き出した。それを二回行い、タバコを口から離して振り向いた。


「タバコを替えてみた。どうだい?」

「少し……珍しい香りがしますね」


 彼が違いをわかってくれたことに少し嬉しくなった。


「だろう?」


 意味のないことだが、彼がわかってくれたことはボクにとってはそれだけの価値があった。空にのぼる煙を見つめる。煙が下から上に流れるように、今日の捜査も特に荒れることなく終了することだろう。越野が間違ったことを言う訳がない。とすると、今日のこの捜査も特別意味のないことなのかもしれない。


「そう……意味なんてない。こうしてボクらが強制捜査に乗り出すのも、意味なんてないんだ」


 気がつくと、ボクはそれを口にしていた。明らかな失態だった。だが、今更訂正する気にはなれなかった。もしかすると、タバコの香りがそうさせているのかもしれなかった。


「え? それは……どういう意味ですか?」


 怒気をはらんだ声で彼はそう言った。それが少し寂しかったが、実のところ彼にこれを伝えたところで、何がどうなる訳でもない。少しむなしい気分だった。


「余り怖い声を出さないでくれ。こうして君に話すのもまた――意味なんてないんだ」

「それでは、何故そんなことを俺に?」


 当然と言えば当然の質問だ。だが、ふいに口にしてしまった言葉だ。特別彼に聞かせる理由なんてなかった。


「そうだな……」


 本当にわからない。何故越野がああ断言できたのかがわからない。わざわざ正体を隠している犯人が抵抗すらしないとは意味がわからない。そう――ボクにも、彼と同じく何も理解できていないのだ。


「あえて言えば……ボクもちっとも理解できてないんだよ」










 日が完全に沈みかけた頃、ボクたちは目的の場所にたどり着いた。周りの建物と一風変わったその建物は一際異様な雰囲気を漂わせていた。この場所だけ一昔前に戻ったような、そんな雰囲気だった。


「さて、恭也。着いたよ」


 彼の顔をうかがうと、少し緊張の色を見て取れた。それでいい。人には少しの緊張は大事なのだから。
 どうしますか、と彼は答えた。本当の所、彼の役割などはない。ボク一人でもこの捜査は行えたはずだ。越野の言う通りであれば、だが。


「とりあえずインターフォンだな。そして用件を話す。なに、全てボクがやるよ。君は万一の時のために待機してくれたらいい」


 彼に実は必要はなかった、とはとてもじゃないが言えなかった。彼はボクの言葉に頷き、少し顔を強張らせた。


「その時は俺の後ろに」


 彼の言葉に返答をせず、いくよ、とだけ答え、ボクは門に近づいた。この屋敷に不釣合いなインターフォンに指を伸ばし、それを押した。するとやはり、不釣合いな音が辺りに響きわたった。屋敷の人間は中々答えてはくれなかった。しばらくして、ようやくインターフォンから男の声が聞こえた。タバコを一本吸う時間はゆうにあったと思われる。


「どちら様でしょうか?」

「リスティ槙原という者だ。二、三話を聞きに伺ったんだが」

「少々お待ちください」


 予想以上に相手の対応が丁寧なものだった。仕事内容に反して、彼らは普段紳士的な対応をしているのだろうか。後ろの恭也も同じように戸惑っていた。


「お待たせしました。海鳴警察署のリスティ槙原さんですね?」


 どうやら相手はボクの素性を知っているようだ。可能性はいろいろ考えられるが――今は状況の把握を優先すべきだ。


「あぁ、そうだ」

「用件は伺っております」


 その返答もボクにとっては予想外なものだった。可能性はなくはなかったが、このパターンだとは考えもしなかった。


「へぇ……そうか。じゃあ話す必要はないね?」

「はい。若様……佐藤秀二は先程自首されました。関係者並びに証拠などは全て差し出す手はずになっております」

「……そうか」


 これで越野の言葉に合点がいった。あの時、すでに佐藤秀二は自首をしていたのだ。だとすれば、越野がボクに連絡を入れたことも納得が行く。詳しく話して欲しかった、というのは彼に言っても仕方のないことだろうか。


「……月村は」


 その言葉に、ボクはハッとした。そうだ。まだその件が解決した訳ではなかった。恭也の言葉にボクは一瞬心を奪われた。その隙に彼にボクは押しのけられた。


「月村は大丈夫なのか!? もし、彼女に何かあれば俺は――」

「やめろ、恭也! 落ち着け!」


 彼の取り乱す姿を見たくはなかった。何故かボクの心の奥で、言葉で表す事のできない感情が芽生えていた。
 彼の肩に手をやる。すると彼は少しずつ落ち着いた何時もの恭也に戻っていった。そう――何時もの君の方が好きだよ。
 ボクは彼に代わり、事情を説明することにした。


「Sorry。えっとね、腰くらいまで長い髪を持った美人の学生が君たちのところにいるはずなんだ。彼女は安全なのかい――?」

「――あぁ、そのような方でしたら、すでに解放しました。いつまでも監禁しておく意味などございませんので。ご自宅の方に戻られているはずですよ」


 男が言うには月村さんは無事なのだそうだ。恭也にとって、これ以上に安心できる言葉はないだろう。


「Thanks。だそうだよ? 良かったね」


 彼はとても嬉しそうな顔をしていた。何時もの彼からは想像できないくらい、穏やかな嬉しそうな顔だった。ボクの顔も自然と柔らかくなっていくのを感じた。心は先ほどと同じ言葉にできない感情で支配されていたが、顔にはそんな様子は出ていないようだった。


「は……はい……俺は――」


 ボクはインターフォンに視線を戻し、挨拶をしておくことにした。


「ありがとう。詳しい話は警察署の方で――Bye」


 門から離れ、道の真ん中で彼と向き合った。何時もの彼の研ぎ澄まされた雰囲気はなく、角の取れた柔らかな雰囲気が彼を覆っていた。大人びてはいるが、彼は未成年なのだ。それが少し、嬉しかった。


「今日はこれで解散だね。いや、良かった」

「はい、ありがとうございました」


 彼らしくない言葉に、少しボクは驚いた。いや、おかしかった、と言ってもいいだろう。


「ハハ、礼を言うのはこっちだよ。今日はありがとう。帰り道はわかるね?」

「はい」

「ボクはこれから警察署に向かうよ。君は家に戻るといい。Bye」


 彼と別れ、警察署へと向かう道に足を踏み出した。彼は動き出す気配がなく、ボクの背中に視線を送っているようだった。ボクはそんな彼に背を向けたまま手を振った。


「――まったく、世話の焼ける」


 紛れもなく、彼はボクの生徒だった。その瞬間ほどこの言葉を実感できる時はなかった。彼と会う機会はこれから少なくなるはずだが、同じ海鳴に住んでいるんだ。何時でも会えるはずだった。ボクはそう自分の心に決着をつけると、懐から新しいタバコを取り出した。


「これがボクの生きがいってね」


 タバコの煙をゆっくりと吐き出す。全てが納得できた訳ではなかった。何より、佐藤が自首した理由がわからなかった。これからそれを知るために、ボクは警察署に向かっていた。
 もしかすると、まだこの事件は終わった訳ではないのかもしれなかった。












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――あとがき――
 リスティ編第12話いかがでしたでしょうか。
 前の更新からしばらく時間が空き、大変すまなく思っております。
 何とか4月までには結末までかければいいな、と考えております。
 新シリーズの構想も練っていることですし、早くそっちを書いてみたい、と気が焦ってばかりです。
 この話も後少しですが、最後までお付き合い願います。
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  1. 2007/02/11(日) 22:45:28|
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霧城昂

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