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手のひらの中の奇跡 -恭也視点 最終話-

 ―4月14日―

 恭也視点 最終話










 カノジョガ、ツキムラサンガアブナイ――俺には何か別の言葉としか受け止めることができなかった。
 リスティさんの声が聞こえる。声は段々と俺の耳に届くようになってきた。最初は名詞が、次に形容詞……助詞まで判別できた時、俺の鼓動は耳に届くまで早まっていた。


「そ……それは……どういう、こと……か?」


 やっと口にできた言葉は、そんな呂律の回らない情けない言葉だった。受話器越しに話す彼女はやっと状況の把握のできた俺に早口でまくし立てる。


「いいから! 説明なんて聞いてる暇ないぞ。早く行かないか!」


 ほんの数時間前のことを思い出す。あの時、月村の名前を出してもインターフォン越しの男は理解ができなかった。あの男は名前で判別したのではなく、外見上の特徴で判別した。つまり、互いに想像した女性が別人である可能性も考えられないか。
 俺は自らの想像に青ざめ、事態の深刻さを悟った。よく考えてみろ。俺は彼女を守り通せなかった。俺は彼女を助けると誓って、この手で助けることはしなかった。そんな俺が誰かの助けになろうと思うことなど図々しいにも程があるだろう。


「しかし……俺にはできません」


 リスティさんの息を呑む音が聞こえた。俺はたまらず言葉を続けた。


「俺は彼女を助けると誓った。しかし、この手で助けることは愚か、彼女の安全を確かめもせずに安心してしまった。そんな俺に資格などあると思いますか?」

「あまったれるな」


 何時もの彼女からは想像できないくらい、低くてまるで感情の存在しない声だった。


「幻滅したね、恭也。君は何様のつもりだ? 姫を守る騎士にでもなったつもりか? 生意気言ってんじゃない。君は自分がそんな優雅な役が似合うと思ってるのか? それに君は何か勘違いしてるようだから言っとくよ。まだ負けてないんだよ、君は。君の手にある物はなんだ? 君はそれを一度も振ってないじゃないか。勝負にすらなってないんだよ」


 そうだ。俺はまだ戦っていない。戦ってもないのに負けなどあるはずがない。そんなのは俺の心の中で作り出した妄想にすぎない。リスティさんはそのことを俺に教えてくれていた。


「わかったら、とっとと行け。こうしてる時間ももったいないんだ」


 声に焦りは感じられるものの、その声は先程と比べて清々しいものを感じ取れた。


「リスティさん?」

「ん?」

「ありがとうございます」

「早く行け。何でボクが真雪みたいな真似をしないといけないんだ」


 ガチャリという音は二人の間の最後の線を断ち切る音だった。俺は電話の向こうに届くように礼をし、そのまま外へ駆け出した。着替える暇も、靴を履く時間もない。ただただ足を前に進め、学校へと急ぐことしか俺にはできなかった。


 ――ご、ごめん。ごめんね。高町くんってそう言う可愛いリアクション取る人とは思わなかったからさ、つい。


 それは初めて彼女と会話した時のこと。今でも記憶に新しい数日前の出来事。思えばアレは一目惚れだったのだろう。自身の懐かしくもあるその感情に俺は不器用に感じていた。何も迷う必要などなかったのだ。
 素足でアスファルトを走るひんやりと冷たい感触に顔をしかめる。このまま進めば学校はもう目の前だ。先程まで高鳴っていた胸はいつの間にか治まっていた。もしかするとそれは自分の気持ちに素直になったからかもしれない。


「月村……俺はお前を一生守ってやる」


 学校の門が近づいてきた。辺りを囲う異様な雰囲気に気づく。俺は門の壁に張り付くと、気づかれぬよう中の様子を伺った。
 暗闇の中、うっすらと見えるそれはヘリコプターだった。周りに気づかれぬようにするためか、エンジンを切ってあるようだ。しかし、扉は開いていた。俺は気づく。ヘリの中に月村の姿があった。
 俺は逸る気持ちを抑え、状況を確認する。


 ――五……六か!


 派手なスーツを着たチンピラ風の男ばかりだった。俺は一番近い金髪の男に目星をつける。その男までの距離は五メートル。その男の足元に目をやり、男に目線を戻す。男たちは周りを警戒するよう見渡してるが、その目線は統率が取れておらず、隙を見て突入するのは十分可能だった。
 俺は意を決し、校庭に踏み込んだ。
 音が鳴る。
 砂を踏みしめる音に気づき、振り向いた。その顔は驚きに満ちていた。俺は走りながら体を捻り、右手を突き出した。バネの力で突き出されたそれは一撃でその男を昏倒させるに十分だった。
 金髪の男が崩れ落ちた。その音に男たちは俺の存在に気づいた。男たちは思い思いの武器を取り出し、ヘリに乗っている男はヘリのエンジンをかけた。
 ヘリのプロペラはゆっくりと回り始め、それは段々と速くなる。しかし、俺の目にはそれは段々と遅くなるように感じた。同時に世界はモノクロへと変わる。ねっとりとした空気の中、小石を男二人の拳銃に投げつける。当たるのを確認せず、俺は拳銃を持つ男よりも近い標的に狙いをつけて走り出す。標的は近づく俺に焦点を合わすことができない。そのままの勢いで徹を打ち込む。あばらが砕けるのにも構わず、すぐ近くにいる男にも同じ物を打ち込んだ。
 視界が変わる。いや、これが本来の姿なのだ。戻った世界は男たちに混乱を与えた。ヘリが飛び立つにはまだ時間がある。痛む右膝は俺に止まれ、と教える。しかし俺はその教えを聞くつもりはなかった。手にある物はなんだ、と教えてくれたリスティさんにも会わせる顔がない。それにここで止まれば一生後悔すると思うから――


 ――立ち止まる訳にはいかない!


 この膝に神速の連続使用はおそらく耐えられない。もう一度使えば助ける前に砕けるのが落ち、ならばそのまま走り出せ。
 右膝の痛みを無視して走り出す。最初に出した速度程は伸びなかった。
 手を押さえて苦しむ二人の男に近づく。この二人の向こうにヘリがある。俺はすれ違い様に左手を外に振りぬいた。その手は右側の男の側頭部を捕らえ、その頭は隣の頭にぶち当たった。そのままヘリに足を踏み入れ、男の背後の座席をめがけ撃つ。これで俺の邪魔をする男は全ていなくなった。
 月村は座っていた。その首は力なく、ぐったりと死んでいるかのように。俺はゆっくりと彼女の腕を取った。


「良かった……」


 俺は彼女を持ち上げ、この場から離れることにした。ここに居れば不審に思った彼らの仲間がここに応援に来る可能性がある。危険から彼女を遠ざけるために、俺はヘリを降り、学校から出ることにした。
 校庭には気絶した男たち五人の姿があった。手元にはこの手で守った大切な者が居た。
 朝になる前にはリスティさんが何とかしてくれるはずだ。校門を出る前に俺は明日の授業の事を考えていた。休校になるならなるで、それは好ましいことかもしれない。そんな有り触れた日常を考えてしまった。それは先程まで日常に触れていなかったせいかもしれない。
 夜道を歩く。辺りの家々にはまだ所々明かりがついていた。信号もまだ機能している。もう三十分もすればこの信号も使えなくなるだろう。
 まさか犯人が佐藤だとは思わなかった。思いもしなかった。彼は学校では純粋に犯人を捕まえようとしていた。その差が俺には理解できなかった。頭が悪く、不器用な俺には一生理解できないのかもしれない。そういう意味では頭のいいリスティさんには理解できるのかもしれない。
 耳に届く音は通りを走る車の音が遠くから聞こえるだけで、辺りは本当に静かだ。ひんやりとした感触がある。今頃になって、自分が素足で出てきたことに気がついた。帰ったら足を洗わないと家には入れない。かーさんに怒られてしまう。
 再び考えに没頭する。これでおそらくこの事件は終わったはず。後は意識不明になった人たちの回復を待つだけだろう。無事に後遺症もなく回復してくれるといいんだが。そう思うと、俺は少し目を閉じた。
 目を閉じると何も見えないはずだった。しかし、その時だけは手元に何か暖かい光が灯っているような、そんな光景を見ることができた。実際手元は暖かく、俺を穏やかな気分にさせてくれた。


「良かった……もう失いたくないからな。大切な人は」


 遠い昔、俺が未熟だったせいで守れなかったものが沢山あった。それは人であり、自らの右膝だった。俺は勘違いしていた。自分では守ることはできないのだ、と。その間違いはリスティさんに正された。俺は大切な人を守ることができたのだ。


「……そっか。ふふ、嬉しいな。高町くんも一緒だったんだ」


 目を開くと、そこにははにかんだ顔で俺のことを見ている月村がいた。何故だかわからなかった。知られても穏やかな気分でいることができた。思えば出会った時からそうだった。彼女といると慣れていないはずの自分が自然に振舞えるのだ。


「月村……俺はお前に言いたいことがある」

「うん……でも、私といると今日みたいなことがまたあるかもしれないよ?」


 月村はそう言った。それは自分がさらわれたのは理由があるからだ、と言っているように聞こえる。事実、そうなのかもしれない。


「構わない。俺は……お前を一生護ってやりたい。見ての通り不器用で無愛想な男でお前とは釣り合いはとても取れていないように思う。それでもいいなら、俺をお前の側で一生護らせてくれるだろうか?」


 それは俺の心にあった嘘偽りのない言葉だ。例外もない。月村だけに向けてやりたい言葉だった。月村は突然涙目になる。


「知ってる?」

「ん?」

 泣き笑いのような、そんな顔をしながら言う彼女に、俺は言葉の続きを促した。


「私は高町くんのこと、一目惚れだったんだよ?」


 笑顔で彼女はそう言った。俺は彼女に笑い返した。


「嘘だろ?」

「へへ、ばれたか。でも――」


 月村は俺の胸に顔をうずめた。俺は言葉の続きを待った。待たなければいけない気がしたから。
 月村が顔を上げた。


「大好きだよ」


 それは今まで見たことのない、心からステキだと思える笑顔だった。俺は気づいた。自分の感じたこの気持ちが間違いではなかったことを。彼女を一生護りぬくと誓ったことは間違いではなかったと。
 自分の手の中にあるぬくもりは俺にそう教えてくれた。これは今まで誰も護ることのできなかった俺が初めて護り抜いたもの。この拙い手で護ることのできたただ一つの奇跡だと。
 俺は信じる。
 この手のひらの中で生まれた奇跡は自分が信じ続けていれば、護り続けている限り笑顔でいてくれるのだ。
 夜空を見上げる。
 そこには悠久の年月の中で変わらず輝き続けてきた月がある。例えばそういうことなのだ。信じ続けていれば、彼女は悠久の年月を越えて輝き続けてくれるのだ。
 頬を伝う熱いものを感じる。
 俺は呟く。


「初めてだ。嬉しくて涙を流したのは」


 月村は答えた。


「高町くんに……ううん、また明日ね」


 彼女が何を言いたかったのかは俺にはわからない。でも俺は信じている。彼女が……彼女たちが教えてくれたから。それが俺に唯一できることなのだと教えてくれたから。信じ続けていれば、諦めることに慣れた以前の俺にはできなかったこともできる。それは素晴らしいことで、とても喜ばしいこと。
 俺は誓う。視線を降ろし、月を見つめながら――


 ――君を護るために俺は強くなる。どこまで駆け上がれそうな気がするから。


FIN












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 ――あとがき――
 手のひらの中の奇跡恭也視点、最終話です。いかがでしたでしょうか?
 この恭也視点はリスティ視点と比べ、あまり謎が多く解決する話ではありません。
 恭也が自らの手のひらで奇跡を勝ち取るお話です。
 少々、不慣れな描写が多く、書くのに手間取りました。
 少しでも楽しんでいただけたら幸いです。
 これで恭也視点は完結です。
 残りはリスティ視点。こちらでまたお会いしましょう。
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  1. 2007/02/20(火) 20:51:34|
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