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手のひらの中の奇跡 -リスティ視点 最終話-

 ―4月14日―

 リスティ視点 第十四話












 後ろ手で扉を閉める。扉にもたれかかるように背をつけ、携帯電話を取り出した。電話帳の中から、た行で検索する。スクロールすることなく、高町恭也の名前があった。パートナーになると確定した時に念のため登録しておいたものだ。彼自身、携帯電話は持っていないようで、登録してあるのは彼の家の電話番号である。必ず彼が出るとも限らない。それでもボクはその電話番号に電話をかけた。かけなければいけなかったからだ。
 電話をかける。コールが数回続いたところで繋がった。相手を確認することなく、ボクは言葉を発した。


「恭也はいるかい?」

「……リスティさんですか?」


 最近聞きなれた男の声がした。電話に出たのは恭也だった。


「取ったのが俺だったから良かったものの、他の家族だったらどうするつもりだったんですか?」

「そんな事はどうでもいい。恭也だね?」


 彼が恭也であることを確認できればそれで良かった。前置きはこの際不要だ。


「はい、そうですが」


 何かを察したのか、彼の声が一段低くなった。ボクは恭也であることを確認すると、本題を切り出した。


「いいかい? 今すぐ風芽丘に向かえ」


 佐藤の言うことが本当ならば、このままにしておくと大変なことになる。ボクが今いる警察署からはとても間に合わない距離だった。とすると方法はただ一つ。


「彼女が――月村さんが危ない」


 空気が凍った。彼は言葉を忘れたかのように、不規則に吐き出される息の音がこちらに届いた。
 早く何か言ってくれ、と思ったボクは続けて同じ言葉を投げかけようとした。すると、その直前に恭也の小さな声が聞こえてきた。


「そ……それは……どういう、こと……か?」


 明らかに動揺している声だった――こんな問答をしている暇はないのに。


「いいから! 説明なんて聞いてる暇ないぞ。早く行かないか!」


 彼のそんな姿を受話器越しに感じるのは辛かった。ボクは彼の苦しみの半分も理解していないだろう。
 ボクは感じた。彼が大切な人を失ったことのある人間だということを。
 しかし、ボクの役割は彼を慰めることではなかった。自主的に前に向かせるように教えることだ。しかし――


「――俺にはできません」


 今の言葉では彼に届かなかったのだろうか。ボクは自然と目を見開いていた。その後に続く言葉を待つ。


「俺は彼女を助けると誓った。しかし、この手で助けることは愚か、彼女の安全を確かめもせずに安心してしまった。そんな俺に資格などあると思いますか?」


 彼の嘆く気持ちが痛いほどに伝わってくる。これ以上彼を辛い目に合わせるな、とボクの中の何かがそう言う。
 口を開く。その言葉を言えば、彼はボクと共に生涯を歩んでくれるだろう。しかし、彼と共に歩む姿を思い描いた時、気づいてしまった。彼と共に歩む姿が想像できないのだ。
 ボクは逆のパターンを考える。彼が月村さんと共に歩んでいく姿は容易に想像ができた。ボクでは彼と結ばれることはできないのだ。
 ボクは思い直す。それが彼にとってベストではないか、と。彼が最終的に笑顔で居てくれたら、ボクは何も後悔することはないはずだ。だからボクは彼を奮い立たせようとした。とても、辛い選択だった。そうだ――できるだけ、怖く行け。今だけは耕介たちと出会う前のボクに戻るんだ。


「あまったれるな」


 彼の驚く感情が伝わってきた。それを確認すると、残りの言いたいことを全て言うことにした。


「幻滅したね、恭也。君は何様のつもりだ? 姫を守る騎士にでもなったつもりか? 生意気言ってんじゃない。君は自分がそんな優雅な役が似合うと思ってるのか? それに君は何か勘違いしてるようだから言っとくよ。まだ負けてないんだよ、君は。君の手にある物はなんだ? 君はそれを一度も振ってないじゃないか。勝負にすらなってないんだよ」


 そう――彼はまだ負けていないのだ。勝負にすらなっていない。
 越野が言っていた――御神とは化け物なのだ、と。
 戦えば必ず勝つ彼がそんな風に思い悩む姿を見たくは無かった。だからボクはこういう選択を取った。彼が笑顔で居てくれたら、自分が傷ついても構うことはなかった。
 恭也の感情に火が灯るのを感じた。それを感じた時、自然にボクの口は笑みを描いていた。しかし、これ以上時間を浪費する訳にはいかない。これ以上は手遅れになってしまう。


「わかったら、とっとと行け。こうしてる時間ももったいないんだ」


 恭也の心に大きな炎が現れた。


「リスティさん?」

「ん?」

「ありがとうございます」


 その礼に頬が熱くなった。これを彼に悟られたくは無かった。


「早く行け。何でボクが真雪みたいな真似をしないといけないんだ」


 それはボクの自然な気持ちだった。
 電話を切る。自分の取った行動に苦笑してしまった。


 ――なんでかな……涙も流れてないや。


 もし、妹たちがボクと同じ立場だったらどうであろうか。ボクと違い、純粋なまま育った彼女たちなら恐らく泣いていただろう。彼女たちに失恋が耐えられるとは思えない。
 良くも悪くもボクは大人にならざるを得なかった。彼女たちはボクの妹であり、娘だ。親は子を護らねばならない。結局のところ、ボクも恭也と同じ人種だったのだ。だから惹かれたのかもしれない。
 月村さんは恭也が必ず助けるだろう。それだけは間違いない。本気になった彼にそんな心配をするなど無用だ。後で片付けのための警官を送ればそれでいい。
 そんなことより、ボクには知りたいことがあった。この事件は佐藤が犯人という事で幕が下りるだろう。だが、それでは納得のできない部分があった。
 少し言い直そう。彼が主犯だと考えると、彼の行動に矛盾すべき行動があったのだ。おそらくその行動の意味も説明できる推理は整っている。推理だけだ。証拠などはない。


「でたとこ勝負……という言葉はおかしいね」


 ボクはこの推理を証明してくれる人物の元へ向かった。その人物ならば、納得のいく理由を答えてくれるはず。何故なら彼には黙秘する理由がないと思うからだ。
 彼の居る場所へ足を進める。その前にタバコを一本吸いたい、と思ったが、やめておくことにした。今吸えば、まずいタバコになりそうだったからだ。










 勢い良く扉を開く。鈍い金属音が聞こえた。
 目的の人物は中に居た。その人物はボクを見て、かすかに笑った。ボクがここに来ることを見透かしていたのだろう。どこまでも嫌な奴だ。


「ボクがここに来た理由はわかってるね?」


 その人物は首を縦に振る。ボクの話を嬉しそうに待っている。何もかもわかっているさ、という雰囲気にとても腹が立った。しかし、それを言っても仕方が無かった。上手くかわされるのが落ちだ。


「Yes。さて、わかってるなら前置きは不要だね。まずボクの考えを聞いてくれ」


 言いたいことを頭の中で整理する。質問したいことが二つある。順に聞いていこう。


「まず、佐藤のことだ。彼は朝、ボクに犯人がわかった、と言った。しかし、彼は夕方には自首をしていた。そこで疑問に思った。この二つの行動は矛盾しているじゃないか、と。彼が犯人と確定している以上、彼のその言葉はボクを惑わせるためのモノだろう。しかし、せっかく混乱させたのに、自首をしては意味がない」


 ボクの話を目の前の人物は嬉しそうに聞いている。相変わらずゆがんだ男だ。


「しかし、この矛盾はある仮定をすると解決される。これは確証じゃない。証拠などないから、あくまでも仮定だ。夕方までの間に佐藤が自首しなければいけないように都合が変わった、としたらどうだろうか。彼に都合が悪いことが起きたとすれば一つしかない。強制捜査だ。つまり――」


 これ以上は言う必要もない。彼には全て伝わっているはずだから。
 それよりも、純粋に質問したいことが一つあった。


「もう一つ。彼女――月村忍が襲われた理由だ。ボクには彼女が特別扱いをされていたように思える。それは何故だろうか。ボクにはわからなかった。教えてくれないか?」


 その男は体をゆっくりと起こし、机の上で指を組んだ。何時もここに来たときに彼が取るポーズだ。男――越野鉄平は口を開いた。


「そうだな。一つ目の話はお前の推理の通りだ。俺が佐藤に自首を勧めた。二つ目の話は俺にもはっきりしたことはわかっていない。ただ、わかってるのは彼女が特別な人物だからだ。その特別な人物を対象に実験をするとどうなるか知りたかった、ということしか俺にもわからん。これでいいか?」


 越野は簡潔に答えた。憎たらしいくらいに何時もの越野のままだった。


「あぁ、わかってるよ。何もかもね」

「そうか。じゃあ帰ってくれ。少し仕事が残ってる」


 用件が終わると途端に余所余所しくなる。これ以上に越野に話を聞く必要もなかった。ボクはこの部屋から出ることにした。ノブに手をやり、扉を押し開く。外へ足を一本出したところで、彼に一つ聞きたいことを思いついた。
 振り返らずにボクは言った。


「何故こんなことを?」


 越野は答えた。


「結果的にどうなった?」

「――なるほど」


 ボクは前に足を進め、扉を閉めた。
 結局のところ、佐藤は最初から最後までピエロだったのだろう。おそらく過去、例にない容疑者を演じていたかったのだ。いや、最初だけは自分の意志で目的のために動いていたのだろう。だが――


「――相手が悪かったね。同情するよ。して欲しくないだろうけどね」


 この一週間のことを思い描く。それはとてもステキなひと時だった。きっかけが事件だったとしても、彼と知り合えたことはボクにとってプラスだった。
 ふと思いつき、ボクは電話をかけ――繋がった。


「お疲れさん。さざなみ寮って女子寮を知ってるかい?」


 さざなみ寮のにぎやかな家族たちを思い描く。
 暖かな彼らと一緒ならば、彼女の嫌な思い出も多少忘れさせることができるかもしれない。
 ボクは返事を聞くと電話を切った。


「さて……帰ろうか」


 さざなみ寮への道をとる。
 ふいに何かに引かれたように窓の外を見た。
 窓の外を見ると、そこに月があった。それは誰かに似ているようで、ボクの心に何か暖かなモノを与えてくれた。
 ボクの唇は無意識の内にその形を取っていた。


 ――ありがとう、と。


 FIN












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 ――あとがき――
 手のひらの中の奇跡、リスティ編最終話いかがでしたでしょうか。
 謎の解答は全て書いたつもりです。
 もしかしたら多少わかりづらいかもしれません。
 それでも考えて答えを出してくだされば、とても嬉しいことです。
 さて、一年半も続いたこの手のひらの中の奇跡はこれでおしまいです。
 何か気まぐれでもおきてサブストーリーでも書きたくなったらわかりませんけどね。(笑)


 この後にはまた長編を連載する予定です。
 できましたら、こちらにて発表させていただきます。
 では、また逢う日まで。
 失礼いたします。
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