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Blue Moon 第5話

 その時、確実に俺は安田のことを警戒していたであろう。
 そしてこうも考えた。このまま付き合っていけば、いずれ家族に危害が及ぶのでないか、と。

 子供の頃から剣を振り続け、今の自分の腕にはそれなりの自信もある。自分の両手に収まる程の人たちを守る事のできる力があると信じている。
 父が死んだあの時から、できる限りの速さで強くなり、家族を守れるだけの力を手に入れようとした。だからこそ、俺は安田を警戒する義務があった。

 その時、俺は安田の動きを捉えることができなかった。しかし今思えば、家族を守る、という理由だけで彼を警戒した訳ではなかった。
 正直に言おう。――自分が許せなかったのだ。











Blue Moon 第5話










「じゃあね、高町くん、安田くん。また明日♪」


 ほなな、と安田は月村に向かって笑顔で挨拶を返した。同じように俺も挨拶を返した。
 辺りはすでに夕暮れ。暑さの残る夕暮れは去り、今は肌寒ささえ感じるほどだ。そして月村に向けた手をポケットの中に入れ、俺は安田の姿を観察した。

 おそらく175前後であろうか、高すぎもなく決して低くもない背丈に加え、それが一般人ならば中々と評される体つきは見事なものだ。しかし、それだけだ。これだけでは俺の目を盗むほどの動きを実現できる訳がない。
 月村の姿が見える内はやめるつもりがないのか、安田は手を振り続けている。その姿を見とめ、俺は今しばらく思考の淵に沈むことにした。



 先ほどの出来事を思い出す。翠屋での出来事がビデオの早送りのように流れていく。しかし、シュークリームは俺の記憶の中では常に皿の上に在った。そして月村の言葉と共に消え行くシュークリーム。
 そもそも月村に言われるまでシュークリームがなくなった事に気がついていなかったのだ。こうやって思い出したところで、安田がどのようにシュークリームを消し去ったのかわかる訳がない。



 そこまで考えた時だった。


「高町はこれからどないする? 俺はこのまま帰ろう思てるけど」


 安田は振り続けていた手を思い出したかのように横にし、そこにある腕時計を見ながら言った。
 その言葉に対して――特に用事もないしな、と当たり障りのない言葉を選んで口にする。今日はとてもこれ以上、安田と行動する気が起きなかったのだ。


「そか。ほんじゃ、また明日やな」


 安田はそう言うと、足元に置いていた鞄を肩にかけると、そのまま俺の家とは逆方向に歩いていった。俺はその後姿を見て、呼び止めようとしたが、先ほどの考えが頭に浮かんだせいで一瞬そのタイミングを逃した。

 結局、俺は安田を呼び止めることもなく、そのまま踵を返した。空を見上げると、そこには幾つもの雲が在り、うっすらと――満ちるには少しばかり足りない――月が浮かんでいる。まるで自分の姿を鏡で見ているかのような、そんな気分にさせてくれる月だった。
 そんな考えに頭を振ると、気を取り直し、少し早歩きで家路についた。何時もより速く歩いて見たい――そんな気分だったのだ。










 家に着くと辺りはもう薄暗く、家々からは明かりが漏れている。それはうちも例外ではなく、それを確認できたところで少し安堵する。そんな自分の行動に少し苦笑し、少し大きめの音を立てて家の中に入った。

 中に入ると、その音を聞きつけたのか、我が妹――高町なのはが少し走りながらこちらに向かってきた。


「おにーちゃん、おかえり」


 俺の前まで来たところで立ち止まり、手を横に広げながらなのはは言った。その仕草にかわいいと感じなくも無いが、それを言うのも態度に出すのも恥ずかしいので、今の行動を注意しておくことにした。


「なのは、廊下を走ってはいけない」

「えへへ、ごめんなさい」


 照れながらそう答えるなのはに頷くと、俺は靴を脱ぎキッチンへと向かった。同じくなのはも俺の後をついてくるかのように歩いている。

 そういえば、今日の夕飯の当番は誰だったかな、と思いなのはに問いかけると。
 きょうの当番はレンちゃんだよ、となのはは答えた。その言葉に頷いた時にはもう、キッチンの前まで来ていた。

 俺となのはがキッチンに入ると、俺たちに気がついたレンがこっちを振り返り。


「あ、お師匠お帰りなさいませー」

「あぁ、ただいま。今日はレンが当番なんだな」

「はい、そうです。もう少しでできますんで、ちょっと待っとってください」


 レンはそういうと料理を再開し始めた。その様子を見るに、レンの言う通り後少しでできるようだ。部屋で待つことも考えたが、時間的に中途半端なのでここで待つことにした。


「なのは、もうすぐ晩御飯だから手を洗ってきなさい」

「はーい」


 そう言って手を洗いにいくなのはを見とめたところで俺は何時もの席に座り、夕飯の完成を待った。










「みなさーん、ばんごはんできましたー!!」


 レンのそんな声に、すでに席についている俺となのは以外の皆が次々に集まってくる。そして、最後の美由希が席についた所で夕飯になった。

 最初の内は皆、思い思いの話題で色々話していたがフィアッセの一言で話題が一気に集約することとなった。


「そういえば、恭也。今日来てた恭也のお友達。稔、いい子だね」


 予想はしていたが、フィアッセが安田の話題を持ちかけてきた。フィアッセのその言葉に返答をしようとすると、その前に美由希がフィアッセに話しかけた。


「え、何々? フィアッセ、どういうこと?」

「うん、今日ね。翠屋に忍が見たことのない男の子を連れて来たんだ」

「へぇ、忍さんが師匠や勇兄以外の人と一緒にいるのって珍しいですね」


 物凄い勢いで食べていた手を止めると晶はそう言った。俺はそれを見とめると、もう少し淑やかになって欲しいものだ、などと場違いな感想が頭に浮かんでいた。そして、我が家の家族は安田のことについて盛り上がっていった。


「でしょ? 私もよくは知らないんだけど、何でも今日転校してきたらしいよ」

「へぇ、見た感じどんな感じのお人なんでしょうか?」

「う~ん……恭也と比べると同じくらいの背丈で、恭也よりもハンサムじゃないかな。でも、恭也と比べてかなり身だしなみに気を使ってる子だから、それを差し引いたら恭也よりもモテそうな感じの子だったよ。勇吾までとはいわないけどね」


 ――これは何かの悪夢だろうか、そんなことを考えていると、フィアッセの言葉になのはを除いて、色めき立つ我が家の女性陣。


「それは一度会ってみたいわね。今日はかなり忙しくて恭也を気にかけてる暇なかったから」

「今日見た感じでは恭也も忍もかなり仲よさそうな感じだったから、また会えると思うよ」

「それは楽しみだなぁ……って、恭ちゃん! 一人で部外者面してないで話に入ってきてよ」


 美由希の言葉に口まで運んでいた箸を下ろすと、どうしようか、と少し思案する。安田が油断ならない相手だと教えるべきか。しかし、言ったところで皆が信用してくれるのだろうか。特にフィアッセは安田のことを実際に見て、すっかり信用してしまっている。これでは俺の言葉を信用してもらうのは、まず不可能であろう。

 仮に信じてもらえたとしても、その結果どうなる。皆が不安がるだけだ。そう思った俺は、変に警戒を与えるような言葉を言わず、無難な当たり障りのない安田の情報を教えることにした。


「ん……そうだな、安田は今日うちのクラスに転校してきた男でな。聞くところによると、大阪生まれの大阪育ちらしい」

「という事は、うちと同じ関西弁なんでしょうか?」

「そうだな。フィアッセも聞いたかもしれんが、完全な関西弁だ。案外、レンと気が合うかもしれん」

「それは楽しみですー」


 レンの頭の中では、既に俺が安田をつれてくるものとばかり思っている。それは何とも勘弁して欲しいところなのだが、この家族の様子を見る限り、それは回避できないモノだろう。そんな嫌な考えを拭うように、俺は茶を口に運んだ。


「それで恭也の目から見て、どんな感じの子なのよ」


 かーさんが今一番聞いて欲しくないことを口にした。先ほど考えたように変に警戒させても意味がないので、手元の酢豚を口にすると、素直にその質問に答えることにした。


「そうだな。中々に面白いヤツだ。大阪人と言うのは皆ああなのか、と勘違いしそうになる程にオーラをかもし出している。言ってしまえば、にぎやかなヤツだ。だが、それが悪いこと思えないのは安田の人徳であろう」

「へぇ、恭也がそこまで言うなんてね。よっぽどその子のことを気に入ったのね」


 ――そうなのだろうか、かーさんの言葉にご飯を食べるのも忘れ、少し考えに耽る。実際あの出来事の前では、俺は完全に安田のことを信用し、そしてその人柄も気に入っていた。それは曲げることのできない事実。

 だが、あの出来事。あの出来事の後では俺は安田を完全に警戒していたはずだ。だが、何故かーさんに対して、ああ素直に答えることができたのだろうか……

 少し自分の言葉に苦笑を覚えると、俺は残りのご飯を片そうと思い、一気にかきこんだ。そんな俺の姿を見て、少し微笑んだレンは俺の茶碗におかわりを盛ってくれた。そして、俺がご飯に集中しているのを見た皆は、再び思い思いの話題に華を咲かせることとなった。

 安田を完全に信用する訳ではないが、皆の様子を見てもう少しだけ信用してもいいのだろう、と俺は考えた。今日の夕飯は安田に対するこれからの態度について、少し考えさせられた時間だった。皆にとってはさして重要なことでもなかろう。

 俺にとっても、先ほどの出来事があったからこそこうなった、という結果になることもおそらくはないであろう。それはつまり、普段3杯のご飯を食べていたところを2杯にした。ただそれだけの、些末な出来事だったのだ。
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  1. 2005/05/18(水) 03:34:48|
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